キノコ

 今なお、ログハウスの窓に張り付いているゴキちゃんズ。

 ゴキブリの裏側はもういいよ。


 キノコどうしようかな…

 これって植物なの? キノコは元々植物では無いけど…

 生きてるだろうから、夕食にするのはやめる…どちらにしろ、食用可能かも分からない。変なキノコで腹痛は避けたい。

 負傷しているキノコに不思議水を掛ける。

 焦げていた部分や傷ついていたカサが回復して、艶の良いキノコになる。

 やっぱり、夕食にしようかな…

 不思議水は、人や動物以外にも効くんだ。摩訶不思議…こう言う時に使われる言葉だよ。サイエンスとかお呼びではない。

 黄土色のカサに白の縁の立派なキノコ。初めてここに来た日に見かけたものと同じ個体だろうか?

 キノコ…気が付いたのか? のそっと起き上がり、こちらを見て停止する。こちらを見上げたと思ったら、今度は震え出す。どこに目があるのだろうか?

 震える度に、フワッフワと胞子がから漏れ出る。

 柄の部分は二つに分かれていて、歩行可能。まぁ以前見かけた二回とも走って逃げたしね。

 震えていたキノコからニョキっと手が出て、終いには、テーブルの端で体育座りをしてしまう。

 足がある時点でそうだけど、これも異世界生物だろう。キノコから攻撃的な感じはせず、知能がありそうだ。膜内に入ってこれたから、敵意はないだろうし…大丈夫でしょう…大丈夫だよね? 胞子で殺されるとかないよね?


 カサカサカサ


 ゴキちゃんズ…心臓に悪いから、窓枠を凄い勢いでグルグル回るのをやめて欲しい。


 体操座りのキノコを掴む。今回は逃げずに素直に捕まってくれる。立派な大きいサイズではあるけど、それ以外はキノコとしか言いようがない。ほのかに光って、手足は生えてるけど。

 キノコをじっくり観察していたら、ゴキちゃんズのテンションが上がる。もしかして、彼らが付いてきた原因はこのキノコ?

 このキノコを食べたいのかな?


 キノコを窓辺に持っていき、左右に移動させる。キノコが移動する場所にゴキちゃんズが移動する。

 やはりこれの所為か。


「これが食べたいの?」


 キノコが凄い勢いでフルフルする。知能があるだけでなく、言葉が通じてるの? ユキちゃんやゴキちゃんズも知能がある以外に、言葉が通じているのではないかと疑いはあったのだが…


「今日はキノコのソテーにしよう!」


 フルフルフルフル


「あ、やっぱりキノコの気分じゃないな」


 安堵したかのように、胸を撫で下ろすキノコ。


「キノコのシチュー」


 フルフルフルフル


 言葉分かってんな、このキノコ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る