掃除屋の主張

 無事鎮火し、水も補充できたので、とっととログハウスに戻ろう。

 ん? ユキちゃんが、燃えた木の下から何かを拾ってくる。なんだろう?


「ああ! 二足歩行のキノコ!」


 そこには、少し焦げているが、こちらの世界に転移?した日に見た二足歩行のキノコがいた。

 これは、死んでいるのか? 食べれるのかな? とりあえず、持って帰るか。

 キノコをバックパックに入れ、ログハウスへと歩き始める。早く帰ってお風呂に入りたい。歩く度に靴がぐしょっと音を立てる。心なしかユキ達の距離が遠い。


「キキーキィー」


 遠くから猿の声が聞こえる。姿は見えないが、大きな猿は以前見かけた事がある。イカに戦いを挑んで瞬殺されていた。

 イカには、あっけなくやられていたが、遠くから見てもムキムキマッチョの猿の集団だった。今見つかると、面倒だ。


「ユキ、うどん。走るよ」


 ランニングで膜内迄戻る。呼吸は荒いが、以前よりも体力が付いたおかげか、不思議と疲れはない。


 カサカサ


 敵か? ああ。なんだ、ゴキちゃんズか。いや、なんで安堵してるんだ私は…

 いつも通りチラッチラ出ては隠れている。木の影に、以前は拳サイズだった子が、親とほぼ同じサイズに育っているのが見えた。沢山ご近所さんを食べたからか? 成長が早くない? ゴキの世界では普通なの?


 ん? んんん?


 …ゴキちゃんズ、膜の中に入って来られるんだね…いつもは、膜の外でしか見かけなかったから…

 今日の彼らは…なんというか…積極的だ。どうしたのだろうか?

 ゴキちゃんズが珍しく近付いてくる。


 待って、待ってって! そんな触れ合い望んでないから!


 カサカサカサ


 足元近くで何かをアピールしている。久しぶりに、黒い御姿の全身ショットを見たからか…失神しそう。


 何がしたいのか良くわからなかったが、ゴキちゃんズはログハウスまで付いてきた。家には絶対入れないからね。ここは私のテリトリー、ユー達はウエルカムじゃないから。

 ユキは特に反応していない。うどんは以前無くしたボールを発見したようで、ボールを追いかけ回している。

 ログハウスに入りドアを閉める。濡れて気持ち悪かった服を脱いで、ドラム缶風呂を沸かし一息つく。早く湧かないかな…風邪でも引いたら大変だ。


 湯が沸き、すっぽんぽんでザバーンと風呂に入る。あーあったか~い。

 気持ち良い風呂タイムにも、ゴキちゃんズの目線を感じる。こっち見るのやめろ。


 風呂を上がり。ミントティーを飲む。昼間でも最近は随分と寒くなってきた。今日の夕食は何にしようかな…そう言えば、キノコが手に入ったんだ。あのキノコは食べられるのか? キノコのソテーとか美味しそうだね。


 キノコをバックパックから取り出すと、微かにだが動いている。まだ、生きていたようだ。

 

 カリカリカリカリ


 ヒィィィィ。

 ゴキちゃんズが、ログハウスの窓に張り付いている。御姿だけでも卒倒しそうなのに、裏部分の腹を見せつけられる。


 一体何がしたいの!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る