DIY…

 ギーギーギギギー


 朝早くから引きずっているのは、棚だ。鍋で燻製するのには限界があるし、ちまちまやってても時間がかかるだけ。この棚は、服などが入っていた五段の木製のものだ。これを、DIYで燻製室に変えようと思う。DIY…ここでは、全部ドゥーイットユアセルフ化してるんだけど、オシャレでもなんでもない。自給自足…しかも…この棚、思っていたより、ずっしりとしてる。重い。

 猪の肉は、結局二日ほどピックル液に付けた。途中肉を焼いて味見したので、塩抜きをしなくても今が燻製の頃合いだろう。肉は日陰で乾燥させている。

 棚も外に出したので、網を張る。五段分の網はないので二段分の網と、棚の内側の上から肉が吊るせるように、釘を打ち付ける。こんなものかな?


「キャウウン」

「ん? ちょっと何してんの!?」


 うどんが、棚から出した部長の叔父さんの下着のブリーフをガジガジしている。

 やめて欲しい。

 切実にやめて欲しい。

 ブリーフを取り上げようとすると、綱引き遊びと勘違いしたのか、ブリーフを手放さない。


 ビリリ


 あー。破れちゃったよ。

 破れたブリーフをうどんに被せる。被っておけ! 変態狐め。

 さて、燻製の時間だ。ピックル液につけていた物は、まだ乾燥中だ。小まめに切ったのから燻製する。小まめに切ったからか? 腐ったのは、思ったより少なかった。

 燻製する肉を棚に並べ、燻製棚の炭を入れ、火をつける。始めの1時間半は炭だけで更に熱乾燥させ、残りの時間はメープルのチップを入れ燻製する予定。以前より燻製時間が掛かると思うので、燻製肉を待つ間に薪割りをする。時折りチップを追加しながら、肉を見守る。

 出来た。うーん。煙臭い。暫く置いて、味見してみよう。見かけは完全にジャーキーだけど…

 次の肉も設置する。今度のはチップだけではなく、ローズマリーも入れて燻製する。メープルチップに混ざって、ほのかにローズマリーの独特な香りがする。

 薪は、かなりの量が出来ている。薪置き場や裏では場所が足りず、ログハウスの中や上、それにテラスにも置いている。

 燻製は、一日かけてやったが、まだ終わってない。また、明日だな。

 出来たジャーキーを味見する。うん? まぁ塩すらつけてない分は…こんなもんよね。噛めば、肉の旨みがする。時折り、ローズマリーの香りがする、落ち着いた味わいだ。ピックル液につけた肉は、贅沢な味がしっかりついていて、良い塩梅だ。

 身体は、またスモーキーな香りだ。明日も燻製作業なので、今日は風呂には入らない。

 水の魔石を確認する。

 またイカの住処への訪問時期が迫っている。


「グギャグギャ」


 きたか…

 双眼鏡でゴブリンを確認する。あ、オークもいる。ん? またリボン付きのゴブリンだ。最近、ご近所さんの間で流行ってるのかな? オシャレか? あ! あいつら! 石を投げてんじゃん! 


 めんどくさーい。

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