釘バット

「ブゥモモモモ」

「グギャグギャ」


 あーあ。また来た。

 この世界に来て四ヶ月経った。最近犬は全く姿を見せないが、オークとゴブリンが一日おきにやってくる。繁殖力凄いのか? 大量にいるのか? そろそろ本拠地に殴り込みに行きたいくらいにやってくる。

 めんどくさいので膜の中から対処していたが、オークに使ってたクロスボウが折れたりする事が増えた。今は鍬で頭をグサグサしてる。オークに弱点は頭。気づいたのはちょっと前。身体の他の部分は分厚い肉で覆われているが、頭だけはブヨブヨなのだ。


 鍬を振りかざし頭を打ち抜く。



 ボキッ



 あああ…鍬が壊れてしまった…


「ブモォォ」


 もう一匹のオークがニタァとこっちを笑いながら見る。忌々しい。


「ヴゥーギャオン」


 ユキがオークの頭を得意の氷柱の魔法で吹っ飛ばす。


「ユキお疲れ様」


 ユキの体は大きくなった。オークの魔石を食べ続けて、今では豹くらいの大きさになっている。うどんも中型犬くらいの大きさになった。最近彼らは、狐では無いのでは? と疑っている。大きくなっても顔は狐だが…


「キューン」

「分かったから。ほら、うどんお座りは?」

「キャウーン」

「はいはい。投げるからキャチね」


 投げたオークの魔石を口でキャッチしたうどんは、魔石をそのままボリボリと食べる。

 ゴキちゃんズは、相変わらずその辺にいると思う。子ゴキを見せに来てからは姿を見てないが、掃除はいつもきちんとされている。


 鍬どうしよう? 風の魔法の杖でも良いんだけど…あれコントロールが微妙でオークの頭がなかなか狙えない。特に動く物に当てるのが大変で、何度かオークに挑戦したけど…一匹殺すのに、何回も杖をブンブン振らないといけない。的が素早いと、十回全部外れたりする。おかげでオークとゴブリンがやってくる方の膜の外側は木や地面がぐちゃぐちゃになっている。

 新しい武器がいるな。剣は重たいから、持ち上げて振るくらいしかできない。鍬みたいにフェイントがかけられないしな。

 基本オークは私の事を雑魚だと思っているのか、躊躇せず膜のギリギリ迄近づいてくる。奴らはやっぱりゴブリンと同じで知能が低いのだろう。

 武器か…木で作れる杭か? 

 そう言えば、部長の叔父さんの日常品に釘があった。壁には、誰かのサイン入りバットとボールがあったよね?

 ログハウスに戻る。ケースに入れて飾ってあるコレコレ。サインの名前を見るが…野球選手はよく分からないので、誰かわからない。でもこれは使えそうだね。

 ボールはうどんにあげる。ポイっと投げたら、物凄い勢いで走って追いかけて行った。

 ほぼ犬だな、うどんは。

 さてと、バットに釘を打ち付ける。釘は四種類の百二十個セット。既にいくつかの釘は使われている。一番長くて太い釘を四十個バットに刺す。これは…刺しすぎたかも。でも、見かけはちゃんとした釘バットだ。


 タタラ~タラタラータタタタターン


 地元のヤンキーのテーマソングを歌いながら、性懲りも無くまたやってきたオークの頭を狙い、釘バットを無数に振る。


「ギャーブモォォ」


 ちっ。即死には至らないのか。倒れ込んだオークの頭を剣で突く。死んだオークを見ると顔が穴だらけだ。こんなホラー映画があったよね。

 釘バットも普通に使えそうだね。


「かっ飛ばせ~か・え・で」


 何故かユキに冷ややかな目で見られる。


 ユキちゃん!!

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