木こり活動で作った杭を更に尖らせる。小さめの杭もいくつか準備する。

 罠は何処に仕掛けるかな…間違って自分が掛かったら、完全にアホの子だよね。一応印をつけておくか。

 ゴブリンたちがいつもやって来る方角に歩き、以前作った落とし穴の近くまで来る。穴を確認するが何も落ちていない。

 落とし穴を避けたら歩くであろう方に一つ罠を仕掛ける。小さな穴を掘り、輪っかに編み込んだツタを半分ほど地面から出し小さな杭で撃ちつける。よし引っ張っても取れないな。穴を埋めて周りに軽く葉っぱを散らす。足引っ掛け罠の出来上がりだ。 

 次にゴブリンたちが倒れるだろう方向に尖った杭を上に地面に打ち込む。場所はこの辺かな。この位置に杭があれば、ゴブリンだったら頭か首辺りでオークは腹かチンのところに刺さるだろう。


「キュウーン」

「ああ。ごめんね。まだ終わりじゃないの」


 落とし穴をもう一つ作る。相変わらず時間のかかる作業だ。落とし穴が出来たら底に杭を打ち込み、落とし穴の前方に小さな杭二本を五十センチ程離し撃ちつけツタで作った紐をよろい結びで杭に巻きピンと紐を張る。これに足を引っ掛ければ転んだ先は先程の杭が待つ落とし穴だ。ククク。


 全ての作業が終わった頃には、日が暮れ始めていた。早く帰らないと。

 ログハウスに帰り、服を着替え風呂を沸かす。水の魔石の残量はまだ半分以上ある。最近水をたくさん使う事が増えて来たので減りは早い。

 夕食は焼き鳥の缶詰だ。もうeveryday兎が辛い。他に食べれる動物いないかな? オーク? あれは…あまりにも人間に近すぎて…食べるには抵抗がある。外を見ると狐親子ガツガツとオークを食べている。明日は鳥猟にでもチャレンジしようかな。


「キュワーン」

「食べ終わった? って口の周りが血だらけじゃない! 拭いてあげるからおいで」


 小狐の口を拭いていると母狐が近くでゴロンと横になった。え? 触っていいのかな? 恐る恐る触ると母狐は目をゆっくり閉じた。毛並みいいな~。これぞモフモフよ! この世界に存在しないかと諦めていたモフモフタイムだ。でも口は生臭い…母狐の毛並みを堪能したところで、風呂が沸いたので入りに行く。

 風呂から上がりランタンをつける。辺りはすっかり真っ暗だ。狐親子の表のドア横の小さなテラスで丸まって寝ている。

 久しぶりにスマホを見る。写真や動画、メッセージアプリの何気ない会話を読み返す。


((((瀬戸さーんハッピーバースデー!))))


 去年、同僚にレストランで誕生日を祝ってもらった時の動画だ。最後にケーキも出て来て感動したんだよね。


 そうです。瀬戸楓、本日28歳になりました。お祝いに誕生日羊羹を齧る。

 去年との差よ!



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