距離が縮まる?

「キュワーン」

「ハイハイ。おはよう」


 地面に体を擦り付けて、私の足元でヘソ天している小狐。触っても大丈夫かな。母狐を見るが無表情のすまし顔だ。嫌なら文句を言ってくるだろう。小狐の顎下部分をワシワシする。


「クークークー」


 何これ。可愛いんだけど。

 小狐は目を細めてクークーと気持ちよさそうに声を出して甘えている。背中辺りも優しく撫でる。初めて触る小狐の毛は、少し硬めだが触りごごちはいい。小狐でも爪は立派で肉球の間には剛毛が生えている。プニプニと肉球を触る。うん、思ったより硬いね。

 小狐お触りタイムも終了したので、手を洗って朝ごはんの準備に取り掛かる。そういえば、野生の動物って触っても大丈夫なのだろうか? ふふ…それこそ今更な心配か…もう既に猪や兎にゴブリン共も触ってるし…オークとは添い寝もしたしね。まぁ食べる前に手はきちんと洗うけどね。


 朝ご飯は恒例の兎焼きと山菜のわらびだ。そろそろわらびは飽きてきた。チンゲンサイは徐々に育ってきているが、収穫まで後一週間以上かかるだろう。それでも袋の裏の日数より成長が早いかもしれない。  

 苦瓜は、マルチングのおかげか芽が出てツタっぽくなり始めた。そろそろツル用の棒を作った方がいいね。カボチャはこの前とあんまり変わってない気がする。生姜も音沙汰なしだ。生姜は元々種芋が体調悪そうだったし、付いてた説明にも温度やら時間やら芽を出して植えろって書いてあった説明の部分を無視して植えたので、期待はしていない。

 トマトは…多分死亡コースだな。水も欠かさずあげて乾燥させず、温度の為マルチングもしたが…やっぱり寒すぎたかな…もう少し暖かくなったら、再度残りの種で挑戦してみよう。


 さて、家庭菜園が終わったので、昨日集めてきた木のツタを編む。うん。これくらいの長さだったら大丈夫かな? 一メートル程に編み込んだツタが四つできる。あまったツタは輪っかに編む。

 編み物に集中してたので気づかなかったが、狐親子の姿がない。もしかして出て行ったのか? それはそれで寂しいな。オーク飯はまだ残ってるのに…あれどうするよ?

 ミントティーで一息つく。小狐の声が聞こえないとこんなに静かなのか…


 ピーピー

 ガーガー

 クカークカー


 …静かじゃなかったわ。この鳥共は夜も鳴き続ける奴もいる。とっても迷惑だ。


「キャウン」


 遠くから小狐の声がする。帰ってきたの? 二匹の姿が見える。どこ行ってたんだろう? ん? 母狐が何か口に咥えてるな。目の前にポイっと置かれたのは、桃っぽいフルーツ。


「くれるの?」

「ヴー」


 どうやら、この桃をくれるようだ。皮を剥いて一口食べる。美味しい! 普通に桃だ! 一気に全部食べる。


「ありがとう。美味しかったよ。残りは後で食べるね」


 狐親子が戻ってきてくれてよかった。

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