クロスボウ

 チュンチュンチュンチュンチュン


「あーうるさーい!」


 あぁ朝だ。天井が近い。そうだった…昨日はログハウスのロフトベッドで寝たんだった。今は朝の6時。

 外を見る。夢から醒めてない…

 とりあえず朝ごはんを作る。タンドリーチキンが悪くなってしまうので、朝から重たいが、チキンを焼きシーザーサラダと共に食べる。味が染み込んでいてカレーの風味が最高!

 片付けをして、コーヒーを飲みながら今日やる事を考える。ここがどこかわからない以上、あまり迂闊に動き回りたくない。

 まずログハウスにあるものを整理したい。もう勝手に使っているが、部長の叔父さんにはちゃんと弁償するつもり。後はあの謎の壁? あれが何か調べたい。今日はそんな所かな。

 ログハウスの食べ物は昨日調べた。思ったより食べ物があって良かった。他にあった物はこんな感じ。



毛布

シーツ

ゴム手袋

ゴミ袋

調理道具

食器

バーナー用ガス

バケツ

掃除用具

石鹸や洗剤などの生活用品

ハサミやカッターなどの日常用品

リンスインシャンプー詰め替え

男物の服や靴

色々な野菜の種

インスタントコーヒーや緑茶

焼酎

高そうなスコッチ


 本

 ージビエの解体、調理

 ーハーブの使い方

 ー男一人でサバイバル

 ー一人で過ごす夜に~ガイドブック~

 ーなんかの古いエロ本

 ー指輪を捨てに行った話

 ー筋肉美~トレーニング編~

 ー漢の料理

 ー織田信長は宇宙人だった


 本のセレクションどうなってるの? ログハウス裏のコンテナボックスにも色々あった。



クロスボウ

クロスボウの矢

鎌やくわなどの農業品?

日常大工品

長靴

アーミーナイフ各種


 などが入ってた。クロスボウって違法じゃないの? 叔父さんは、ミッドライフクライシスだったのかな? 本当に、ここにいくら使ったんだろう? そりゃ大金叩いて建てたのに年数回しか使わなかったら家族にも呆れられるよね。コンテナの中はどれも大して使った形跡がない。



 ドンっドンっ



 また何かがぶつかる音がする。斧を持って木の影から音のした場所を覗く。緑色の小人? が見えない膜を棍棒で叩いてる。ギャギャグギャグギャ大きな声で騒いでいる。数は三匹でほぼ裸だ。

 あれって…ログハウスに戻り、双眼鏡で先程の小人を見る。


「やっぱりゴブリンじゃん」


 ここってそう言う所なの? ゴブリンを双眼鏡のアップで見るもんじゃないな。

 ここはいわゆる異世界なのか? 

 異世界アニメなら元彼の趣味でいくつか見た事ある。スライムのなんちゃらや軍隊のなんちゃらの異世界の話だ。双眼鏡で覗いていると、ゴブリンがもう二匹やってきて五匹になった。

 あーどうしよう? 仲間呼んでるのかな? どっかに行ってくれないかな。どうやら奴らは、あの膜を越えれないようだ。あの膜が何かは知らないが助かる。

 ゴブリン共がグギャグギャと移動しながら膜を叩き続ける。どうやら膜はこのログハウスを中心に円状に張っている様だ。奴らは、一時間ほど粘ったが諦めて去っていった。また戻ってきそうな気がする。


 ここが異世界なら魔法とかの世界なのかな?


「ステータスオープン」


 何も起きない。くっ。恥ずかしい。誰もいなくて良かった。

 ヤバイな。認めたくなかったがこれは所謂、異世界転移なのだろう。



「ヤダァ。日本に帰りたい~」


 駄々をこねても仕方ない。でも私は軽いソロキャンプを希望してただけで、こんなリアルサバイバルなんてしたくない。小一時間ほどイジケテいるとお腹がぐっーと鳴った。昨日の残りのパエリアを食べる。

 時間は12時過ぎ、ゴブリンがまた戻ってきた時のためにクロスボウを練習する。親切に説明書もコンテナの中にあった。

 木に的のテープを貼り、十メートルほど離れてみた。笑。これは無理だ。五メートルだったら行けるかもしれない。地面にクロスボウを立て足で固定して弦を引きあげる。そんなに苦ではない。矢を装てんして狙いを定め引き金を引く。あれ? 矢が飛ばない。もう一度説明書を読む。あぁ安全装置ね。安全装置を解除して弓を引く。

 ビンッシュと音がして矢が勢い良く飛んでいく。的には命中しなかったが、木には当たった。矢を抜きに行くと、木にめり込んでいる。凄い威力だな。矢はまだ使えそうだ。クロスボウの矢は四十本くらいあって色は緑、オレンジ、青で分かれている。青が一番少ないので青は練習、オレンジは駆除? 緑は獲物にでも使おうか。一度動物に刺さった矢って衛生上どうなんだろう? 説明書を見るが書いてない。あ。クロスボウを使用しての猟法は禁止って書いてある。鹿やら鴨に刺さった事件あったよね。やっぱり個人で持ってちゃダメなんじゃない? 部長の叔父さん。

 クロスボウの練習を三十分くらいした。五メートルの的には大体当てれるようになったので十メートルの距離にもチャレンジした。四割程度は木に当たるようになったが、的には一度しか当たらなかった。

 時間は14:30。ログハウスの屋根に上がり双眼鏡で周りを見渡す。


 鳥 鳥 鳥 鳥


 いや、バードウォッチングしたいんじゃない!



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