キャンプはどうした

 キノコが走って逃げた…


 これは絶対夢だな。自分をツネル。普通に痛い。こんなのじゃ夢か分からない。もう一度寝よう。起きたら夢から醒めるはず。テントに戻り二度寝をかます。

 意外と熟睡した。起きてきたが、やっぱりまだ夢の中の森。これはいよいよ頭がおかしくなったのかもしれない。スマホを確認するが圏外、時間は9:41。とりあえず朝ごはんを食べるか…

 保冷バッグからチャック付きポリ袋に用意していた、細かく切った玉ねぎ、ジャガイモ、ミニトマトに卵ケースから出した卵二つと調味料を入れる。



 もみもみもみ



 十五センチほどのスモールスキレットに油を引き、材料を流し込む。蓋をして待つ。うん、スパニッシュオムレツの完成。カフェプレスも準備してして、コーヒーが出来るのを待つ。

 朝のコーヒー。至福のひと時、森の中楽しむこの贅沢なひと時。

 辺りを見る。頭のおかしい時間は続いているようだ。二泊の予定だったのだが…切り上げて、早く帰った方が身の為だ。

 テントや道具を片付けてバックパックに入れる。時計を見る。時間は11時。これは父親から貰った、コンパスと温度計付き時計だ。貰った時はコンパスとかいつ使うん? とか思ったけど…ありがとうお父さん! スマホにもコンパスはあるけど、山道でチラチラとスマホをチェックするわけにもいかないしね。

 車を駐車したのは東だ。とりあえず、東に向かって歩く。森の景色は相変わらずきた時とは全然違う。十分ほど歩くと何かの動物がいる。鳥でも見ようかと持ってきた二千円の双眼鏡を覗き動物を確認する。



 二足歩行の犬?



 何度見ても二足歩行の犬だ。なんだあれ? 身長は然程無いが犬にしては、体が結構がっしりしてる。

 ログハウスに戻ろう。そろりと回れ右してきた道を帰る。ログハウスが見えてきた所で茂みからガサガサと音がする。まさかさっきの犬?

 出てきたのは兎なのか? 兎って角なんて生えていたっけ? なんて考えていると、角の生えた兎が突進してきた。びっくりして尻餅ついた所で、兎の角が腕を掠る。

 痛い。

 怖い。

 手が震え心臓のバクバクがうるさい。再突進の準備をする兎。急いで立ち上がりログハウスに向かい走る。



 ドンっ



 後ろを振り向くと、兎が何かにぶつかって蹌踉よろけていた。兎は、再度突進してまた何かにぶつかり倒れた。倒れた兎は、完全に動かなくなる。

 気絶したの? あまり近づきたくないが、その辺の棒で兎を突く。反応は無い。思いっきり棒で兎を叩くが、それでも無反応。

 死んだの? 遠くから五分ほど観察するが一切動かない。双眼鏡で見ると角が折れて舌が出ている。多分死んでる。そのまま置いていても良いけど、さっきの犬に嗅ぎつけられるのは嫌だ。仕方ないので回収に行く。

 触りたく無い…キャンプ用に買ったグローブをはめて棒でもう一度突く。無反応。よし! 子猫を掴む様に、兎の首根っこを掴み持ち上げる。ああ…牙もあるのか、まだ温かいのが生々しい。

 とりあえず、兎を掴んだままログハウスに向かう。これ何処かに埋める? とりあえずポリ袋に入れ、ログハウスの横に置く。

 このログハウスは部長の叔父さんのなのだが、緊急事態なので入る事にする。人の家に無断侵入。気分は微妙だ。

 平屋のログハウスは真新しくは無いが、古くもない。そもそも、この山の土地は部長の叔父さんが、数年前にいきなりスローライフを送りたいと言って衝動買いしたらしい。ログハウスもその時建てたらしいが、それから数回しか使ってなく叔父さんは家族から呆れられているらしい。

 ログハウスのドアを開ける。

 鍵は掛かっていない。良かった。中は外観からは想像できない、広いワンルームタイプだ。ソファやテーブルもありベッドはロフトベッドになっている。

 とりあえず腕が痛い。持っていたファーストエイドキットで傷を念入りに消毒をする。傷自体はそんなに深く無いが、野生の動物はどんな菌を持っているか分からない。絆創膏を貼り手当て終了。

 夢にしてはやけに長いしリアル。夢じゃなかったらどうしよう…不安になる。時計を見ると13:00。夢でもトイレには行きたくなるのね。ログハウスの裏のトイレに行く、このトイレはバイオトイレで電源入らずの手回しハンドル型。部長の叔父さん、一体いくらこのトイレにかけたんだろう…どれだけ型から入ってんだ。

 このトイレについても説明を受けていたので、用を足した後、グルグルとハンドルを回す。

 外に置いていた兎をチェックする。

 まだ、死んでるね。良かった。この兎、バイオトイレで処理できるんじゃない? いや…そのまま入れるのは、あれだから小さく切らないといけないな。小さく切る…やっぱりそのままどこかに埋めよう。


 ドンっ


 また大きな音がして見に行くと兎が倒れている。



 またかよっ





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