彦星の答え
――― やっと会えたね ―――
僕は、焦っていたのが馬鹿らしく思えて、もう一度その場にへたり込んだ。床はひんやりと冷たい。それに少し驚きながらも、僕はもう一度その画用紙の文字を確かめ、そして、全てを理解した。
僕の確信は正しかったが、予想はやはり間違っていたことも、君がどうしてあの質問を少し変えていたのかも、なぜ誰もいない、何も見えないあの場所を選んだのかも、あの時、あんな願いを書いたのかも、それでも、本当のことを言い出さなかった訳も、全て。
僕は短冊を見つめながら、空に向かってこう呟いた。
どうして七夕の日はいつも雨が降っているのか、いや天気が悪いのか。その答えがようやくわかったよ。それは、二人が泣いていたからじゃない。二人は、二人だけの時間を、空に浮かぶ白いもので覆い被して、誰にも見られたくなかっただけだったんだ。きっと、それだけだったんだ。
――― 叶えてくれてありがとう ―――
短冊は再び宙に舞うと、今度は空の向こう側に飛んで行き、もう二度と帰ってくることはなかった。
恥ずかしがりやな織姫だった 白銀 来季 @hakuginraiki
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