5 副会長
ハルモニア学園に通う生徒達の代表生でもある生徒会長の一名と、部費や行事の予算配分などをする会計の三名と、生徒会報と議事録などを作成する書記の三名は、毎年6月に行われる生徒会選挙によって選ばれる。
ただし生徒会長の女房役でもある副会長のポストは、生徒会長本人が指名することができるのだ。
そして副会長を指名することができる生徒会長の神崎遥は、従兄妹の俺を副会長の席に据えようとしていた。
「後で話があるからな……」
大勢の執行委員が集まった会議室内。そんな衆人環視の中で呼び出された俺は、引きつった笑顔を浮かべながら神崎にポツリと言った。
すると神崎は「分かってる」と小さな声を出しながら俺にマイクを差し出してくる。
「簡単な自己紹介でもいいから」
「分かってる――っと、赤城涼介だ」
俺は会議室内にいる執行委員達を見渡しながら口を開いた。
「普通科の2ーBに所属する一般生徒だ。部活動や委員会などはやっていない。そんな俺が副会長に務まるとは思えないが、生徒会長から副会長になれと指名された以上、取り敢えず全力でやるつもりだ」
ホントは全力で交代したいけどな。
だけどそれを言ったせいで会議がグダグタにするのは不味いだろう……はぁ、上手くやったもんだな、遥は。
「ありがとうございます、赤城さん。それと副会長は外部の脅威に対し「意義あり!!」」
男子生徒らしき声が割り込んできた。
『誰が言ったのだろう?』そんなことを考えながら視線を動かすと、メガネが良く似合うイケメンの男子が立っているのが分かった。
「普通科の三年生男子代表の
「「「そうです、そうです!! せめて執行委員の中から!!」」」
必死の形相で口を動かす三軒茶屋と、それに同意する執行委員達。どうやらぽっと出の俺に副会長にさせたくはないようである。
一般生徒に重要な役職を与えたくない。その気持ちは分かるけど、頑固一徹の遥を説き伏せるのは難しいぞ。従兄妹の俺でも手を焼くほどだしな。
とは言え遥はどうやって執行委員達を説得するつもりなんだ? 副会長になりたくない俺としては失敗してほしいのだが……。
「貴方達の懸念は理解していますが、副会長の席は赤城涼介がベストだと考えています。何故なら危険を顧みずにモンスターを倒すと言った勇敢さを持っているからです。貴方達は未知の存在と戦う事ができますか?」
「「「そ、それは……」」」
神崎の言葉に苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべる執行委員達。
「平時なら執行委員達の中から選ぶのは当たり前かもしれませんが、今は非常事態の真っ只中なのです。なのでハルモニア学園の中で一番強い生徒が副会長になってほしいのです。B班――外部の脅威に対する組織のトップを務めるのですから」
「…………うん?」
今何と言ったんだ?
外部の脅威。モンスターとの戦いをするB班のトップになれと言ったのか? 従兄妹の俺を危険なB班に入れると言いやがったのか?
「私達のレベルは1ですが、赤城さんのレベルは2です。そんなハルモニア学園最強の赤城さんを遊ばせておく理由はありません。それでも赤城さんを副会長にさせるのは反対ですか?」
神崎は鋭い目付きで執行委員達を睨んだ。
「し、質問があるんですけど……」
「何でしょうか? 三軒茶屋先輩」
「副会長の仕事はモンスターとの戦いなのですか?」
「そうです。それとモンスターとの戦いを指揮したり、学園の防衛に関する仕事をやらせるつもりです。やってみたいですか? 凶悪なモンスターと戦ってみたいですか?」
「い、いえ! そう言うことでしたら学園最強の赤城君に任せた方がよろしでしょう!」
「「「(コクコク)」」」
神崎の言葉に慌てた表情で答える三軒茶屋と、壊れた人形のように首を縦に振る執行委員達。どうやら神崎の説得は上手くいったようだ――ってか、一番やりたくない仕事を俺に押し付けただけじゃねえか!! ふざけんな!! モンスターに殺されたら化けて出てやるからな!!
「決まりですね。でしたら次の案件――学園の内部についてのA班と、外部の脅威と抵抗するB班の班分けをしたいと思います。そのことで何か意見はありますか?」
俺の心境を知るすべのない神崎はこともなげに言った。
そしてA班とB班の班分けについて20分ぐらい話し合った結果。モンスターと戦うのに必要な武器や防具などを調達・作成する工業科とサイエンス科に、生徒全員の食事担当と栄養管理をする調理科と、他の生徒より医療の心得がある看護科は、生徒会長の神崎が率いるA班に所属することになった。
また、ハルモニア学園内のどこかにある非常食と、様々な用途に使う道具類を回収・管理すると言った雑用係をする商業科もA班に所属することになった。
図書室でサバイバルに役に立ちそうな情報を集めたり、今後の生活レベルを引き上げる役目をする国際科もA班に振り分けたのである。
そしてそれ以外の学科。特殊な技能や教育を受けてないけど人数が多い普通科と、手先が器用な生徒が数多くいる芸術科と、ハードな農作業で鍛えられた生徒がたくさんいる農業科と、運動部に在籍している生徒の割合が高いスポーツ科の生徒は、副会長の俺が率いるB班に所属することになった。
「班分けを終わらせたので、会議はこれで終了します――が、最後に言っておきたいことがあります」
神崎は真剣な表情をしながら会議室内をゆっくり見渡している。
「現在、異世界に漂流した生徒達は全滅の危機に陥っています。ですが私達は座して死を待つわけにはいきません。何故なら私達は生徒達の信任を得た生徒会役員と執行委員です」
そこで神崎は大きく息を吸う。
「自分の命をかけろとまでは言いません。尊厳や自由を捨てろとまでは言いません。ですが全身全霊で役目を果たさなければ悲惨な未来が待っているでしょう。そしてそれは絶対に避けなければなりません」
神崎は俺の顔、生徒会役員達の顔、執行委員達の顔を見ている。
「全力で戦いましょう。いつか日本に帰れる日が来るまで。全力で抗いましょう。モンスターが存在する異世界から脱出する日が来るまで。そんな日が来るまで私達は全身全霊をかけて戦いましょう!!」
「「「おおっ!!」」」
生徒会長の神崎以外の全員が声を出し、それぞれの役目を果たそうと動き出そうとする。
当然俺も副会長の役目を果たそうと動き出そうとするのだが、
「遥。ちょっと二人で話さないか?」
「分かってる。生徒会室でいい?」
「二人きりになれるならどこでもいい」
「そう。ならサッサと移動するわよ」
不意打ちで副会長に任命されたことに話し合う為、神崎と一緒に会議室の隣にある生徒会室に直行した。すると生徒会役員の男女の姿が目に入ってくる。書記の腕章を着けた女子と、会計の腕章を着けた男子だ。会計長の命令で生徒会室で待機していた二人である。
「童顔の一年生男子の
「「えっ?」」
「無理矢理副会長にさせた、の間違いだろ」
「「ええっ……!?」」
神崎と俺の言葉に驚きの声を漏らす田中と鈴本の二人は、驚愕といった表情を浮かべているようだ。
そして俺の隣に立つ神崎が、「ちょっと涼介と話し合いたいことがあるから席を外してくれる?」と言いながら二人を生徒会室から追い出したのである。
「それで私にどんな話があるのかしら?」
生徒会室の上座にある執務机の椅子に腰掛ける神崎が、んーっと背伸びしながら俺に言った。
「『どんな話』って、どんな話か分かりきってるだろ。副会長の件だよ。学園一の馬鹿に副会長なんて務まるわけないだろ」
モンスターが存在する異世界に漂流してしまった以上、有能な生徒が副会長になるべきだろ! それなのに『赤点』なんて不名誉なあだ名を持つ俺を副会長にするなんて、狂気の沙汰としか思えないぞ!!
「学園一の馬鹿ね……。私は涼介のことを馬鹿だとは思っていないわよ。少々抜けてるところはあるけど、馬鹿でもアホだと全く思っていない。むしろ努力家だと評価しているつもりなんだけど」
「努力家でも結果が出なければ意味がないだろ。俺は『天才』の遥と違うんだぞ」
「それ、止めてよね。たまたま勉強とスポーツができるからって、私のことを『天才』なんて呼ばないでくれる。正直うっとおしいんだけど」
「そりゃ悪かったな。でも落ちこぼれの俺から見れば天才と呼びたくなるぞ。てか、そんなことはどうでもいい。問題は副会長のことだ。何で副会長を俺に指名したんだ?」
一歩間違えれば糾弾の嵐に見舞われるところだったんだぞ!
「適任だと思ったからよ。そもそも副会長の仕事なんて大したことない。生徒会長――私の仕事を手伝ったりするだけよ。だから涼介でも副会長の仕事はできるはずだし、何より私の補佐役は涼介じゃなければ嫌なの。学力とか、人望とか、容姿で選びたくないのよ。それに――」
神崎は俺の顔を真っ直ぐ見つめてくる。
「私と涼介の約束。ずっと私のそばにいると約束したことを反故にする気なの?」
「そ、それは……」
凛とした表情を見せる神崎に、俺は反射的に視線を泳がせてしまった。
「私のことが嫌いになったの?」
「そんなことない! 今も遥のことは大事に思っている!」
「だったら私のわがままを聞いてくれてもいいでしょ。今も私のことを大事に思ってくれているのなら、副会長ぐらい簡単にこなしてみなさいよ」
「無茶言うなよ……。てか、赤点の俺が副会長になったら非難の的になるだろ。任命したお前も非難を浴びることになるんだぞ」
「別に構わないわよ。私にとっての副会長は涼介しかあり得ないの。それに身内ひいきで涼介を選んだ訳じゃないから安心しなさいよ」
「……どう言うことだ?」
「さっきも言ったけど、私の副会長は涼介が適任だと思ったのよ。特に今の状況――危険なモンスターがいる異世界に漂流してしまった以上、そのモンスターと戦うのに躊躇しない生徒が必要なの」
神崎は真摯な態度で口を動かしている。
「だから身内ひいきで涼介を撰んだわけじゃない。偶然でも、たまたまでも、女子生徒を守るためにモンスターと戦った涼介を信じているのよ」
そう言いながら信用に満ちた目を向ける神崎。そんな神崎の両目を見た俺は、「勘弁してくれ」と呟きながら天を仰いだ。
学力、人望、容姿。全てを持つ遥のそばに立つことを諦めた俺に、『信じてる』なんて残酷なセリフを吐くなよ……。
今も遥のことを大事に思っている――それは嘘偽りのない気持ちだけど、副会長になりたくない。『天才』の遥のそばにいたくないんだよ。
とは言え数分で副会長を辞職するのは色々と不味いだろう。特に異世界に漂流すると言った未曾有の危機に辞職したら、遥に迷惑をかけるどころの問題じゃなくなる…………はぁ、このまま副会長をやるしかないか。
「副会長、やってくれる?」
「嫌だ――と言いたいんだけど、取り敢えず数日はやってもいい」
俺は渋々と言った顔色で折れることにした。
「だけど俺の働きぶりは期待はすんなよ。ただでさえ馬鹿なんだからさ、俺は」
「ううん。涼介の働きぶりは期待させてもらうわよ。少なくとも約束を渋った利息分は請求させてもらうから」
「みみっちいな……で、副会長の俺は何をしたらいいんだ? モンスターと戦うのは仕方がないからいいとしても、副会長の役目がイマイチ分からねぇんだけど」
モンスターと戦う時にアレコレ指示すればいいのか? そこのお前、爆弾を抱えてゴブリンに挨拶しに行ってこい――って感じで部下を死地に送ればいいのかな?
「そんなに難しく考えなくても大丈夫よ。外部の脅威に抵抗するB班の役目。学園の安全保障に関わることを考えたり、部下に指示をすればいいの。簡単でしょ」
「いやいや、ぜんぜん簡単ではないと思うんですけど……てか、どこに行くつもりだ?」
「会議室に戻るのよ。いつまでも涼介と話をしている場合じゃないでしょ」
そう言いながら神崎は生徒会室から出ていく。もちろん副会長をやると決めた俺も会議室に用があるので、直ぐに神崎のあとを追いかけた。
そして神崎と一緒に会議室に戻ってくると、書記長の腕章を着けた柏木と、会計長の腕章を着けた陣川が、俺と神崎の前に出てくる。
「ようやく戻ってきたか。ほんで副会長の……えっと、何やっけ?」
「赤城涼介君ですよ~」
「そうそう。赤城涼介やったな。俺は商業科の3ーDに所属しとる
陣川は俺の顔をゼロ距離で睨みながら言った。どこからどう見ても歓迎していないようである。
俺が副会長をやることになったのを気に入らないみたいだけど、苦情は遥に言ってくれると助かるんだが……。あとホントに高校生なの? ヤンキーどころかヤクザに見えるんだけど。
「次は私の番だねー。私は看護科の3-Aに所属している
柏木はほんわかした笑みを浮かべながら言った。俺にガンを飛ばした陣川とは正反対な態度である。
表面的には歓迎してもらっているけど、腹の底ではどう思っているのだろう……ってか、流石にそれは失礼だな。
「えっと、普通科の2-Bに所属している赤城涼介だ。副会長になったからには全力でやらせてもらう。それでその……まずは何をしたらいいんだ?」
「知るかボケ……って言いたいんやけど、B班に所属することになった執行委員達と話し合ってこい」
心底嫌そうな雰囲気を出しながら口に出す陣川は、会議室の後ろにいる執行委員達を指差している。どうやらB班の執行委員達は会議室の後ろに集まっているようだ。
「二年の生徒会役員がおるからそっちに相談するんやな。それより会長、ぼちぼちA班を指揮してくれまっしゃろか?」
「分かってるわ、陣川先輩。それと涼す――ごほん……。副会長の仕事ぶりを期待しているわよ」
神崎は俺に向かって笑顔を振りまいた後、陣川と柏木を引き連れる形で俺の前から離れて行く。
そして副会長の俺はB班のグループと合流しようと足を動かした。
副会長の仕事をするのはいいんだけど、何の実績もない俺を歓迎してくれるかねぇ……。それこそ陣川先輩のように拒絶されたらマジでどうしようかな?
などと後ろ向きなことを考えながら歩いていると、B班に所属する生徒達の顔が視界に入ってきた。訝しげな表情を浮かべる生徒達である。
高橋、竜胆、井上、蔵元は訝しげな表情を浮かべていないようである――って、高橋は執行委員じゃなかったはずだが?
「ちょっといいですか? 副会長が来たみたいなので、話し合いはいったんストップしましょう」
書記の腕章をつけた男子が言った。
陣川先輩が言っていた二年の生徒会役員の一人だろう。見た目は黒縁メガネをかけたフツメンの男子である。ギャルゲーのモブキャラみたいでもあった。
「静かになりましたね。では一言お願いします、副会長」
「あ、ああ……。副会長の赤城涼介だ。俺のことが気に入らない人が何人かいるみたいだけど、モンスターとの戦いは必ず参加するから大目に見てくれ――以上」
B班に所属する生徒会役員と執行委員の顔を見渡しながら口にした俺は、書記の腕章をつけた男子にアイコンタクトを送った。
「ありがとうございます、副会長。それと先程まで執行委員達と話し合っていたのですが、B班に所属することになった生徒達をグラウンドに集合させようと思っています。よろしいでしょうか?」
「問題ない。それとついでに名簿も作ってくれ。戦力がどれぐらいあるのか把握したい。それと……」
「橋爪です。芸術科の2-Aに所属している
慇懃な態度で自己紹介をした橋爪は、小麦色に焼けた肌を持つ女子の顔を見ている。
「農業科の2ーBに所属している
「会計の杉山美香でーす! よろぴく!」
「お、おう。よろぴく……」
俺はギャルっぽい雰囲気を持つ杉山――と言うより、杉山のハイテンションに若干気圧されてしまった。
思わず『よろぴく』と返事をしてしまったけど、よろぴくはもう死語なんじゃねぇの? もっとも生徒会役員と波風を立てたくないから指摘はするつもりはないけどさ。あとテンションが無駄に高い上に声がうるさいんだけど!
「うん! よろぴく! ハッシーみたいにぱっとしないけど、とりま期待してるからね!!」
「それはどうも。で、話の続きなんだが…………それはグラウンドでした方がいいかな?」
「その方がよろしいかと。では生徒達をグラウンドに集めさせる為、いったん解散してもよろしいですか?」
「そうしてくれ」
「分かりました。では、生徒達をグラウンドに集めてください」
「「「はい!!」」」
威勢の良い返事をしたB班の執行委員達は駆け足で会議室から出て行く。高橋達と生徒会役員の6人を除いて。
「お前らは行かないのか?」
俺は目の前にいる高橋達に声をかけた。
「あとで行くつもりだ。てか、オレ達に何か言うことはねぇのかよ?」
「ごもっともだな。でも副会長に任命されたのは正直困ってんだよ。高橋、お前やってみるか?」
「ざけんな。面倒ごとをオレに押しつけんなよ。つーか、執行委員の生徒でもないオレに副会長を押しつけたら不味いだろ」
「それを言うなら俺もそうなんだけど。竜胆や井上はどうだ?」
俺は僅かな期待を膨らませながら竜胆と井上の顔を見る――が、
「アタシもパスするよ。副会長は流石に柄じゃないんで」
「ごめんなさい。私も副会長はちょっと……」
二人分の拒絶する言葉が耳に入ってきた。
「ならばヒナっちはどうだ? ヒナっちが副会長になったらニワトリと呼んでやるぞ」
「ニワトリと呼ばれるぐらいならヒナっちの方を選ぶ――じゃない、ヒナっちと呼ぶな! あと副会長は死んでもやらないから! 赤点の後釜なんて臭そうだし」
「「…………赤点?」」
「文句あるのか?」
「少しだけはありますが、聞かなかったことにします。今の状況で足並みを乱すのは得策ではありませんので」
赤点と呼ばれたことに不機嫌な表情を浮かべる俺に、大人の対応どころか執事のように接する橋爪。まるで優等生の鏡である。
見た目はギャルゲーのモブキャラなんだけど、本物の執事や従者みたいだな、お前……。
副官ポジションにピッタリだから、俺の補佐役に任命してやろうか?
「赤点って、あの赤点? 期末テストとかで30点以下をとったことが何度もある噂の落第生……ぷっ、赤点のアンタが副か「これ以上は喋らないでください」もがー、もがー」
橋爪の手によって口を塞がれた杉山が暴れ動く。
「落ち着いてください、杉山さん。副会長に言いたいことは理解できますけど、他の執行委員達が聞いたら面倒なことになります。なので何も言わずに口を閉じてくれますか?」
「わひゃった、わひゃった(分かった、分かった)」
杉山はコクコクと首を縦に振っている。
そんな杉山の様子を見た橋爪は、直ぐに杉山の口から手を放した。
「うるさくして申し訳ありませんでした」
「いや、ぜんぜん構わない。杉山の反応は当然とも言えるしな。それより高橋達は行動を開始しろよ。てか、高橋は執行委員じゃないよな?」
「そうだ。だけどこのままトンズラするのはどうかなっと思ってな。だから取り敢えず七海と一緒に行動することにした。ちょうど同じスポーツ科の生徒だから都合がいいんで」
「ふ~ん。ならよろしく頼むぞ」
幼馴染みの七海を助けたいんじゃね――っと思ったけど、口に出すのは流石にヤボだな。
「ああ。そっちこそ副会長の仕事を頑張れよ――っと、そろそろ俺達も動くか」
「そうだねー。あまり遅くなると不味そうだし、そろそろ行動を開始した方がいいかもね。久瑠海ちゃんもそう思わない?」
高橋の言葉に答えた竜胆は井上の顔を見ている。
「そうですね。御手洗先輩に会議の内容をお伝えしないといけませんし……って、何でニヤニヤしているんですか!」
「いえいえ、憧れの御手洗先輩に会う口実ができましたなぁっと思いまして」
「七海さん!!」
からかうような笑みを浮かべる竜胆と、顔を真っ赤にしながら怒る井上。
「緊張感をぶち壊さないでよね、アンタ達……。異世界に漂流したことだけでもショックなのに、学園の恥部が副会長になるなんて、お先真っ暗の状態なんですけど……」
蔵元はどんよりとした雰囲気を出しながら言った。
「文句があるならヒナっちが副会長をやるか?」
「やるわけないでしょ」
「なら今は黙って働け」
「はいはい。アタシ達はもう行くけど、副会長の仕事をサボらないでよね」
副会長になったばかりの俺に釘を刺すように言う蔵元は、三人(高橋、竜胆、井上)と一緒に会議室から出て行く。そんな時だった。
「すみません。ちょっといいですか?」
白いコックコートを着用する男子が、申し訳なさそうな声を出しながら俺の前に出てくる。
「調理科の一年生男子代表の
一年生特有の初々しさが残る飯島は、俺に向かって礼儀正しく言った。
「一時間後だな。分かった。生徒達を集めたら食堂に向かうからよろしく頼む。ちなみに昼食のメニューはどんな感じだ?」
「豚汁とオニギリです。とにかく急いで量を作らないといけないので、美味しく簡単にできるご飯を作る予定です」
「そうか。調理科の生徒なら心配はしていないけど、くれぐれも食中毒に気を付けてくれよ。病院どころか医者の当てがないんだからさ」
「分かっています。では僕はこれで」
飯島は速足で俺の前から消えて行った。
「昼食の心配はなさそうですね」
「そうだな。遥の手回しの良さのお陰でな――っで、どちら様で?」
先程の飯島と入れ替わる形で俺の前に出てくる男女。灰色の作業着を着こなす男子と、制服の上に白衣を着用した女子に声をかけた。
すると灰色の作業着姿の男子が不遜な態度をしながら一歩前に出てくる。
「俺は工業科のモンだ。副会長はテメーか?」
「ああ。副会長の赤城涼介だ。工業科の執行委員様が副会長の俺に何か用でも?」
工業科の実習に着用する灰色の作業着姿の男子。もといスカルバンダナを頭に巻いた不良のぞんざい過ぎる言葉に、思わずトゲのある言い方で返事をしてしまった。
随分と態度が悪いな。てか、コイツの名前はなんだっけ? 会議中に井上からSPFC団体の幹部かもしれないと言っていたやつだよな?
「『何か用』じゃねーよ。工業科とサイエンス科はオメーらに武器を用意しなきゃいけねぇんだっての。だからどんな武器がほしいのかさっさと言えよ、ウスノロちゃん」
「誰がウスノロだ。仮にも副会長に向かって言うセリフじゃねぇぞ、チンピラ君。冗談はお前の頭に巻いてあるバンダナにしとけよ」
「んだと……。俺のトレードマークにイチャモンつけるなんて、命知らずな大馬鹿野郎じゃねーか。テメェの口を溶接してやってもいいんだぞ、こっちは!!」
「俺の口を溶接する、だと……? 随分と面白いジョークを言うじゃないか、チンピラ君。顔の形が崩れるぐらい殴り飛ばしてやろうか、このクズ野郎!!」
「テメェ……!!」
「やんのか……!!」
俺と不良の間に険悪な空気が臭ってくる。
そして殴り合いの喧嘩に発展すると思われた瞬間、
「止めろっての!」
白衣の女子が不良のケツを蹴りあげた。
すると声にならない悲鳴をあげながら床に倒れる不良の様子が、俺の視界に飛び込んでくる。
「こ、
ケツの穴を両手で押さえながら悶える不良は、親の仇を見るような目で白衣の女子を睨んでいる。
「初対面で喧嘩を吹っ掛けておいて何をほざいているよの、虎太朗は……。お姉ちゃんを困らせないでよね」
「だ、誰が『お姉ちゃん』だ……! 俺が『兄貴』だと、口酸っぱく言っているだろ……!」
「いーや、私がお姉ちゃんよ。床で這いつくばるような人なんて、私の兄貴なわけないでしょ」
「床に這いつくばるようになった原因はお前だと思うのだがッ!!」
目の前で痴話喧嘩をする不良と白衣の女子。そんな二人の様子を黙って見ていると、ケタケタと笑う杉山の声が耳に入ってくる。
「黒渕双子の上下バトル、ま~たやってる~。今日はどっちが勝つと思う、ハッシー?」
「ノーコメントです。と言うよりまたですか……はぁ、どちらが上でもいいじゃないですか?」
「いいわけないだろ!」
「いいわけないでしょ!」
呆れた表情を浮かべる橋爪の言葉に、黒渕双子は怒りの表情を露にした。
そして再び口論を続ける黒渕双子の様子が目に入ってくる。
「うるせぇ双子だな……。つーか、ホントに双子なのか? 双子の割りにはあまり似ていないように見えるんだけど、マジなの?」
「マジらしいよ、アッカー。二人の目元を良く見てごらん。結構似ていると思わない?」
「どれどれ……」
俺は杉山の言葉が正しいのか確認する為、口喧嘩を続ける黒渕双子の顔を観察する。
二人の目元が似ている――なんてことを言っていたけど、確かに似ている気がするな。二人とも鋭くて怖い目『三白眼』がそっくりに見える…………よな? 自信はないけど。
「似てるでしょ、アッカー?」
「う~~ん……まぁ、似てるということで良いんじゃね? 同じ三白眼だし……ってか、『アッカー』って何だよ?」
「愛称だよ、愛称。副会長って堅苦しいから親しみを込めて『アッカー』と命名してみました! 結構いいでしょ!」
「普通に赤城もしくは副会長でお願いしまーす。それよりあの双子をどうにかしてくれ。話が全く進まねぇんだけど」
「そう言われてもねー。黒渕双子の喧嘩が始まったら長いんだよ、これが。とは言えこのまま時間を潰すのはもったいないよね?」
杉山はニヤリと不穏な笑みを浮かべたままスカートのポケットに手を突っ込み、そこからキラキラとデコレーションされた手帳を取り出した。
「何だそれは?」
「秘密兵器『黒歴史ノート』だよ。これで黒渕双子の喧嘩をストップさせてみせましょう!」
「「ッッ……!?」」
杉山の言葉に顔を青ざめる黒渕双子。
「まずは黒渕虎太朗の恥ずかしエピソードその8。虎太朗の頭に巻いたバンダナの中身は「ギャー、言うな! それだけは絶対に言うんじゃねぇ!!」」
虎太朗は杉山の口を塞ごうと飛び掛かるが、杉山は紙一重で避けながら黒歴史ノートを朗読する。
「高校デビューで髪を「言うな! 言うんじゃない! 頼むから言わないでくれ!」スプレーの成分が髪に合わなかったせいで「悪かったから! 俺が悪かったから勘弁してください!!」」
虎太朗は杉山の前で土下座をしている。
そんな虎太朗の姿を確認した杉山は、虎亜良がいる方向に顔を動かした。
「次は虎亜良ちゃんのちょっとエッチなエピソードその4。中学二年生のプールの授業中に「ぎゃああああぁぁぁぁ!!」」
虎亜良は絶叫しながら杉山に掴み掛かろうとするが、杉山は涼しい顔でそれを避ける。
「胸がきつくなったのに無理矢理水着を着て泳いだせいで「イヤァァァァァァァァァァ……!! お、思い出させないで! あの忌まわしい過去をッ!!」」
頭を抱えながら苦悶する虎亜良。その顔色は真っ赤に染まっているのが良くわかった。無茶苦茶恥ずかしい黒歴史を思い出してしまったようである。
水着が豪快に破けたりでもしたのかな? 杉山の話ぶりと彼女の狼狽えを見た限りだと、プールの授業中で彼女がスッポンポンになったのだと予想できるのだが…………いや、流石に可哀想だから想像するのはよそう。彼女の名誉の為に。
てか、彼――黒渕虎太朗のバンダナの中身も気になるな。ハゲたのか? それとも鳥の巣みたいに髪がボロボロにでもなってしまったのだろうか?
「アッカー。黒渕双子を大人しくさせたよー、偉い?」
「偉い――と言うより、怖いんですけど……。人の弱味を記録したり、その弱味につけこむ真似をする杉山がめっちゃ怖いんですけど」
「ぶー」
「可愛く拗ねるな。でもまぁ、黒渕双子を大人しくさせたのは褒めてやろう。良くやった」
杉山の行動に色々言いたいことがあるけど、取り敢えずヨイショしておこう。逆恨みでもされたら面倒だし。
「それでその……黒渕虎太朗、だっけ?」
「そうだ。てか、
「サイエンス科の二年生女子代表の黒渕虎亜良よ。双子の私達が一緒にいる間ぐらいはファーストネームで呼んでもいいわ」
「そうか。俺は赤城涼介だ。一応よろしく頼む。それで虎太朗は俺に何の用で?」
俺は改めて虎太朗に問い掛けた。
「武器についてだよ。工業科とサイエンス科は武器を用意したり、適当な資材で武器を作る役割を持つことになっただろ」
虎太朗は不承不承と言った表情をしながら口を動かし続ける。
「それでどんな武器がほしいのか聞きにきたんだっての。日本刀のようなちゃんとした武器を作るのは無理でも、有り合わせなモノで槍を作るのは難しくないからな。で、どんな武器がほしいんだ? 鈍器か? それとも刃物? 俺の一推しはドリルだけど、たくさん作れそうにないからやめてくれよ」
「いや、ドリルは絶対に有り得ないから。男のロマン武器に興味はあるけど、今は普通の武器を頼む。特にリーチが長い武器がほしいのだが、弓は作れるか?」
弓は戦国時代の合戦で一番活躍した武器だから役に立つと思うのだが、大量に作れそうかな? もし作れたら女子を中心に持たせたいのだが。
「弓か……。竹や塩ビパイプなどがたくさんあるから作れるんじゃねーの? 矢の方もそんなに難しくはないと思うし……虎亜良はどう思う?」
「弓を作るのは良いと思うよ。でも弓を扱うのに技量が必要なんだけど、そこのところはどうするつもりなの? 弓道部の友達曰く、かなり難しい、と言っていたよ。それと男子にあまり言いたくないんだけど、胸の大きい女子が弓を扱うのは結構しんどい、とも言っていたわ」
「……どういう意味だ?」
「矢を飛ばす際、弦が胸に引っかかるの。だから女子は胸当てが必要なんだけど、それでも胸に引っかかる女子がいるみたいだって」
「な、なるほど……。男子の俺にとっては縁のない悩みだな」
胸が邪魔になることがあるなら弓を持たせるべきではないかな? でも安全な場所から攻撃できる武器だから持たせたいんだよなぁ――などと考えていると、杉山が手をあげながら「はいは~い!」と大きな声をだした。
「弓が無理ならクロスボウにすればいいんじゃない?」
「それだ!」
杉山の提案に目を大きくした。
クロスボウなら初心者でも簡単に扱えるし、何より豊満な胸を持つ女子でも問題なく扱えるだろう……うん、かなりいい提案かもしれない!
「クロスボウねぇ……。弓より複雑な構造だけど、作れないこともないな。とは言え現物がないからちょっと時間がかかるぞ。設計したりしなきゃいけないからな」
虎太朗は『作るのが面倒くさい』と言った表情を浮かべているようだ。
「ちょっといいでしょうか、虎太朗さん。確証はありませんが、現物はあるかもしれません」
しばらく黙っていた橋爪が口を開いた。
「虎太朗さんも知っていると思いますが、ハルモニア学園には様々な部活動と同好会があります。そしてその同好会の中に『クロスボウ部』があったと記憶しています」
「ホントか?」
「はい。ですのでクロスボウ部に所属している生徒に相談してみてはどうでしょうか?」
「そうだな。一からクロスボウを作るのは時間がかかるだろうから、クロスボウ部の生徒に相談するのもアリだよな?」
虎太朗は虎亜良の顔を見ている。
「ええ。私もその方がいいと思うわ。ちょうど武器を集めたりしなければいけないし、そのついでにクロスボウ部に当たればいいんじゃない?」
「だよな」
虎亜良の言葉に満足そうな表情を浮かべる虎太朗。どうやら方針は決まったようだ。
「副会長、武器はクロスボウを中心に作ることでいいんだよな?」
「ああ。安全な後方から攻撃できる武器がたくさんほしいんだ。もちろん直接攻撃できる武器もほしいが……頼んでもいいか?」
「問題ねーぜ。俺ら工業科はモノ作りに特化してるしな。それに虎亜良達サイエンス科もクロスボウを作るのに協力するからなんとかなるだろ」
「ええ。私達サイエンス科もクロスボウ作りに参加するわ。もちろんサイエンス科らしく化学的なアプローチでね」
「そうか。ならよろしく頼む」
「もちろんだ」
「分かったわ」
俺の言葉に承諾の返事を口にした黒渕双子は、俺達の前から去っていこうとする。
そして黒渕双子が会議室から出ようとしたところで、
「そろそろグラウンドに向かった方がいいかな?」
生徒会役員の二人(橋爪と杉山)に向かって言った。
「そうですね。副会長になったばかりの赤城さんが遅れたら
「うんうん。ハッシーの言うとおりだよ。だからレッツゴー!」
杉山はウキウキと言った気分で歩きだした。
そんな杉山についてくる形で会議室から出ようとすると、
「あっ、副会長。ちょっといいですか?」
書記の腕章をつけた一年生の女子。鈴本が大きめの箱を持ちながら俺達の前にやってきた。
「確か、鈴本だっけ?」
「そうです。工業科の1-Aに所属している鈴本美羽です。一応よろしくお願いします、副会長」
鈴本は箱を持ったままお辞儀をした。
「それはどうも。普通科の2-Bに所属している赤城涼介だ。それで鈴本は俺に何か用でも?」
「はい。この箱の中に入ってるモノ――スマホをお届けにまいりました。是非受け取ってください」
「……スマホだと?」
俺は鈴本が持つ箱の中から黒いスマホを取り出し、そのスマホの触り具合を確かめる。
「異世界でスマホは使えないんじゃないのか? 通話やメールはできなくても写真や録音はできるんだろうけどよ……」
「いえ、このスマホはPHSのようなモノですが……PHSは知っていますか?」
「多分だが……内線電話みたいなもんだろ? 特定の範囲内までなら通話やメールが可能とか――っで、合ってるか?」
「合っています。それと副会長が今持っているスマホの使い方なんですが、普通のスマホを扱うようにしても問題ありません。何か質問したいことありますか?」
「いや、特にないな」
「そうですか。では、私は用事があるので行きますね」
「ああ、スマホありがとな――って、あれ? 鈴本の姿がもう見えないんだが……」
一瞬で鈴本の姿が完全に見えなくなったことに、俺は驚きの表情を浮かべてしまった。
「凄いでしょ、くノ一忍者スズ。非道な真似で私腹を肥やした役人を月にかわって始末する。それが生徒会役員の掃除人、くノ一忍者スズよ!」
杉山がドヤ顔を浮かべながら言った。
「くノ一忍者って、馬鹿じゃねぇの? 鈴本から目を離した一瞬で消えたのはビックリしたけどよ……。てか、忍者と、必○仕事人と、美少女戦士がごちゃ混ぜになってないか?」
「……テヘ☆」
「『テヘ☆』じゃねーよ。あと可愛く流すな、ビミョーに腹立つ」
「やーん。怒っちゃやーよ」
「うっっっっっっ、ぜぇ……!!」
俺は杉山の態度に顔をしかめながら会議室から出ようとする――が、
「忘れてた」
「うぉぉっ!?」
鈴本が急に現れたせいで変な声が出てしまった。
「い、いきなり現れるんじゃねぇよ……」
「めんご。それより副会長に渡すものがあった」
忍者のように一瞬で俺の目の前に現れた鈴本が、スマホが入った箱を器用に片手で持ちながら『副会長』と書かれた腕章を俺に差し出してくる。
「腕章、受け取ってください。それと会長から『ジャージ姿で動くより見栄えがいい制服で行動した方が良い』と伝言があります」
「ジャージ姿より見栄えがいい制服だと……?」
俺は怪訝な表情を浮かべながら鈴本の手から副会長の腕章受け取った。
そして遥の伝言についてより詳しく鈴本に尋ねようとするが、
「用事は済ませたので私は行きますね」
鈴本が忍者のように一瞬で姿が見えなくなってしまったのである。
「なぁ、橋爪。鈴本は俺のこと嫌いなのかな?」
「いえ、違います。鈴本さんはめんどうなことが嫌なタイプなので、用事を終えたら直ぐに去ってしまうんです。なので副会長のことを嫌っているというわけではありません……多分ですけど」
「そうなのか? だったら良いんだけどよ……」
俺は忍者のように消え去った鈴本について考え事をする。
あの女子は忍者の末裔だったりするのかな?
もしそうならモンスターとの戦いに役立ちそうだ……少し落ち着いたら勧誘でもしてみるか――っと、そう言えば遥から伝言があったな。『見栄えがいい制服に着替えろ』と。
その言葉にどんな意図があるんだろう? 人望や実績がない俺の印象を少しでもマシに――そんなところかな? 多分だけど…………ってか、そろそろ移動した方がいいな。
「橋爪、杉山。グラウンドに向かう前に着替えてきてもいいか?」
「もちろんです」
「オッケーだよ」
「じゃあ一旦俺の教室に寄るぞ。そんで俺の着替えが終わったら真っ直ぐグラウンドに行くぞ」
俺は橋爪と杉山を引き連れる形で会議室から俺の教室に向かうのであった。
東京都内にあるハルモニア学園×俺を含む3000人の生徒達×異世界に漂流(転移)=異世界漂流学園物語 千葉一 @phnak-45
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