第25話 策が尽きた
策が尽きた。
彼はとりあえず早足で歩きながら考えていた。
早く現場に着くと、そもそも事件が起きない。
事件が起こるタイミングだと、直接助けるのが間に合わない。
どうしようか…
そんな彼を、毎度の事ながら彼女が自転車で追い抜いて行く。
そして、件のワゴン車も彼を追い抜いて行く。
しまった、考えに没頭してて反応が遅れた。
彼は慌てて走った。
二人目の男が彼女に手を伸ばしたのが見えた。
彼女を掴んだ時には、力負けして引き摺り込まれた。
ココはもう、不意討ちアタックしか無い!
走り込んだ勢いで、彼は彼女を掴む男に体当たりした。
倒れ込む男に巻き込まれて転びかけた彼女を抱き止める。
(これは…決まった!!)
色々と策を弄した結果、何も考えて無い時の方が上手く行くのが彼クオリティ。
彼は車の反対側、死角にいるハズの女生徒二人に向かって叫んだ。
「そこの子たち!警察呼んで!!」
男達は、彼に悪態を付きながら逃走した。
(やった!やったぜ!って言うか…ラノベなら最初からこの展開だろ、普通)
「危なかったね、大丈夫?」
(フッ、決まった!)
「怖かった…ありがとう…」
「駅まで送るよ」
「うん、ありがとう」
無言で自転車を押して歩く彼女。
隣を歩く彼。
チラリと彼女の様子を伺うと、サッと目を逸らす彼女。
(お、コッチ見てた!よし!コレは惚れたな!)
彼は彼女と肩を並べて歩ける状況に満足していた。
駅に着いて彼女と別れる。
帰りの電車に揺られながら、達成感に浸っていた。
だがしかし、彼は帰宅してから気が付く事になる。
彼の致命的な欠点、話術不在。
彼は彼女の連絡先をゲットするどころか、自分の名前すら聞かれて居ない事に…
もちろん彼は時間を戻し、次の瞬間には帰りの電車の中で唇を噛み締めていた。
■だから助けられたら惚れるとは限らない
あの娘を危機から救い、俺に惚れて… 〜ラノベラブコメの常識と非常識〜 翠色のワンコ @greeeeen51
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