第12話 ダンジョンの異変


 一階層とは違い、モンスターの質が変わった。先程まで戦っていたゴブリンは武器をしていなかったが、今回は武器を使っているため、倒すのに手間がかかってしまった。他にもスライムだと、火属性の体勢持ちになったりしていた。


 流石に俺も二階層から戦闘に加わりながら戦っていたため、そこまで苦戦することなく先に進むことができたが、少し疑問を感じた。


(戦闘回数多くないか?)


 そう、普通のダンジョンなら戦闘回数なんてあまり気にしない。でも今いるダンジョンは違う。なんせこのダンジョンは人為的に作られたダンジョンである。


 普通、人為的なダンジョンなら人が死なない程度にモンスターなどを駆除しているはずだ。ましては、学園が所持しているダンジョンだ。それなのに、ここまで戦闘回数が多いなんて何か非常事態が起きているのかと思った。


(それにさっき少し感じた殺気も気になるしな)


 でも、学園から模擬戦中止が言い渡されているわけではない。そんな時、エルとミシェルが話しかけてきた。


「Bクラスはどうなっているかな?」

「そうね。少し気になる」

「あぁ」


 二人が言う通り、現状Bクラスがどこにいるのか気になった。もうすでに三階層にいるのかもしれない。


「は~。精神的にも試されているのね」

「だね~」


 精神的にもか......。まあ、ダンジョンでどれだけ正常に戦えるかも見られているだろうし、敵チームを意識してボロが出てしまう可能性もある。そう言う点では精神的にみられているのかもしれない。


「まあ今考えても意味ないし、少し休憩を挟んだら先に進もっか」

「「うん!」」


 そして、俺は感知魔法をうまく使いながら全員で休憩を挟んだ。小一時間程休んで二階層攻略に戻った。


 二人が倒しそびれた敵を、俺が火玉ファイアーボールなどを使って処理しながら先に進んでいると、やっと三階層に行ける階段を発見した。


「やっと三階層に行けるのね」

「だね。でもなんでこんなにモンスターが強いんだろう」


 エルの言う通りだ。現状はうまく切り抜けられているが、普通はここまでモンスターが強かったら誰かしら棄権している可能性も大いにある。ましてや俺たちは学生だ。死人が出ていてもおかしくはない。


 そう思いながらも三階層に入った。攻略を進めて数分経ったところでオーガと出くわした。


(は?)


 なんでこんなモンスターが居るんだよ! 二階層までいたモンスターたちは、精々低級モンスターの部類であったが、今目の前にいるオーガは正真正銘中級モンスター。そんなモンスターを相手にさせるなんて......。


 オーガの皮膚は厚いと有名であったため案の定、エルの魔法ではオーガに傷一つつけることができなかった。そこで、俺は一つ指示を出した。


「エルの魔法でオーガの気を引いてくれ。俺とミシェルでオーガを倒すから」


 すると、二人は頷いて了承してくれた。エルがオーガの足元に火玉ファイアーボール水玉ウォーターボールを放って気を引いている時、ミシェルが風切エア・カッターを腕に放った。だが斬り落とすことはできず、軽い損傷で終わった。


 俺はミシェルの魔法を見て、攻撃の方向性を変えた。オーガに物理的攻撃が無理ならと思い、火と風の二階級魔法、炎風フレアストームを放った。


 案の定、オーガは苦しそうな表情をしていた。そしてミシェルに指示を出す。


「ミシェル! オーガの目に目掛けて攻撃をしてくれ!」

「わ、分かったわ」


 怯んでいるオーガ目掛けて風切エア・カッターを放ってくれて、オーガの片目に損傷を与えることができた。そんな時、ティアが言った。


{魔力を濃く練ってオーガに攻撃してみて}

{わ、分かった}


 ティアに言われた通り、魔力を濃く練った火玉ファイアーボールをオーガに放ったら、オーガの片腕が燃え盛った。


 その後、風切エア・カッターなども同様に使ってギリギリのところでオーガを討伐することができた。


 すると、二人は腰を下ろしながら安堵していた。


「なんでこんなモンスターがここにいるのよ......」

「ね......。本当に模擬戦なの?」

「あぁ。俺もそう思う」

「やっぱりみんなそう思うよね」


 はっきり言ってこんなの模擬戦じゃない。もうダンジョン攻略だ。


「まあ、もう三階層なんだから早めに転移ゲートを探して終わらせよう」


 二人は軽く頷いたので、休憩を挟んで三階層の攻略に戻った。そこから、何度かオーガやホブゴブリンなどを感知したが、うまく切り抜けて転移ゲートがありそうな部屋を見つけることができた。


 その時、Bクラスのメンバーがこちらに走ってくるのが分かった。


(どうしたんだ?)


 俺たちに負けるのがそんなに嫌なのか。そう思ったのも一瞬であった。Bクラスの後方からキメラが追いかけて来ていた。


(え......?)


 それはミシェルやエルも同様で、全員がその光景に呆然してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

実家を追放された魔力ゼロの魔法使い〜実は古代魔法【精霊王の加護】を使うことができるので、学園で無双します!兄さん、俺に決闘を挑んだこと後悔しますよ? 煙雨 @dai-612

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ