第11話 模擬戦開始


 学園長が模擬戦の説明を始めた。


「組み合わせは皆さんわかっていますね?」


 その問いに対して、クラス代表の生徒全員が頷いた。


「では説明を始めます。模擬戦の勝敗は、ダンジョンの三階層にある転移ゲートに入ってもらうことです。対戦相手より早く、転移ゲートで戻ってもらったクラスの勝ちです」


 これに関しては、エルに聞いていたので聞き流した。でも転移ゲートってなんなんだろう? 今まで転移ゲートなんて見たこと無いから.......。するとティアが囁く。


{この世界でも転移ゲートってあるんだね}

{え?}

{転移ゲートって転移魔法のことでしょ? 転移魔法は古代魔法の一つであるから、認知されていないと思っていたわ}

{へ~}


(転移魔法って古代魔法なんだ)


 確か、俺やミシェルが使っている精霊魔法も古代魔法だったはず。それと転移魔法も同じ種類の魔法ってことは、転移ゲートは誰が作ったんだ?


 なんせ、俺やミシェルは魔力ゼロと診断された。現代魔法でない以上、転移魔法は使うことができないし、転移ゲートなんて作ることもできないはずだ。


 そう思っていたところで、学園長が最後の挨拶をした。


「では皆さん、頑張ってください」


 俺とミシェル、エルが、最後の詰めでダンジョンのことについて話していたところ、Bクラス代表たちがこちらに寄ってきて言われる。


「雑魚なんだから死なないでくれよ」

「だな! 俺たちのダンジョンで死人でも出たら困るからよ」


 すると、ミシェルとエルが言い返した。


「それはこっちのセリフよ! 私たちが先にクリアするんだからね!」

「そうよ! あなたたちこそ死なないでよ!」


 Bクラス代表が、こちらを睨みつけながら言い去って行った。


「雑魚は良く吠えるって言うのはこう言うことなんだな。まあせいぜい頑張れよ」


 立ち去って行ったのを見て思う。Bクラスや兄さんたちになんでこんな嫌味を言われなくてはいけないんだ? 俺たちは何か悪いことでもしたか? そうじゃないじゃないか。そう思った瞬間、怒りが徐々に沸き上がってきた。


「絶対に見返してやろ!」

「あぁ。絶対に見返そう」


 ミシェルに言われて、強く思った。マット兄さんや父さんに実家を追放されたときはそう思わなかった。でもミシェルやエル、そしてクラスのみんなをバカにされているのが許せなかった。


 そして、等々ダンジョン攻略が始まった。ダンジョンに入ってまずは、光魔法を 使いあたり一面を照らした。


「「ありがとう」」


 明かりがあるのと無いのとでは、生存率が変わってしまう。モンスターと戦闘する時、攻撃の成功率は変わるし、精神的にも違う。今まで、平然と光がある世界で暮らしていたが、突然暗闇の場所に行ったら不安にもなってしまう。そう言う面で明かりは本当に大切であった。


 そして光魔法とは別に感知魔法を使い、あたり一面にモンスターがいるか確認した。


「特にモンスターはいないから先に進もうか」

「「うん」」


 その後、徐々に進んでいったところで数体のモンスターが感知された。


「そろそろモンスターと接敵するから」

「「了解」」


 そう言った数分後、少し広いエリアにスライムが数体生息していた。予定通り、エルが火玉ファイアーボールをスライムに放って概ねを倒してしまう。残りのスライムはミシェルが風切エア・カッターを使い討伐してしまった。


「な、なんかあっさりと終わったね」

「だね。でもそれってリアムのおかげなんだよ?」

「え?」


 今の戦闘では、何もしていないのに俺のおかげってどういうことだ?


「だって、明かりがあるから魔法を命中させることができたのよ。それってリアムのおかげじゃない?」

「あ、うん」


 まあ言われてみればそうだよな。さっきも思ったが、明かりがあるのと無いのとでは全然違うから。 


「それに感知魔法って普通使えないからね?」

「え? そうなの?」

「だって、感知魔法ってどの属性に属しているかわからないじゃない?」

「あ~」


 言われてみればそうだな。感知魔法って基礎属性であるどの属性に属しているんだろう。するとティアが囁いてくる。

 

{感知魔法は音魔法だよ}

{音魔法?}

{そう、現代にはない魔法だね}


 それを聞いて驚いた。誰もが感知魔法は使えると思っていた。逆に言えば、感知魔法が無ければ突然モンスターに攻撃される可能性もある。


(他のクラスはどうしているんだろ?)


 そう思いながらも、ダンジョン攻略に戻った。特に問題も無く、スライムやゴブリン、コボルトなどをことごとくミシェルとエルが倒して行き、二階層に到着した。


 その時、どこからか殺気を感じた。


(え?)


 だがそれもすぐに消えた。俺は当たり一面を見回したが、殺気を放った存在は見つからず、ミシェルやエルも気づいていない様子であった。


(俺の気のせいかな?)


 そう思いながら二階層の攻略が始まった。


 この時感じた殺気がどれだけ危ないのか俺はまだ気付いていなかった。

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