第10話 見返すために


 俺たちは、ダンジョンでどのように戦うかを話し始めていた。


「はっきり言って、ダンジョン攻略の肝は誰も怪我をしないことだと思う」

「え?」

「誰か一人でも怪我をしてしまったら、攻略時間が遅れてしまう。だから、これだけは避けたい。まあ、誰かが怪我するところなんて見たくないって言うのもあるけど」


 そう。ダンジョン攻略でいち早くクリアするためには、モンスターを倒すことでも対戦相手の研究をすることでもなく、誰もかけずに先に進むこと。


 誰かが怪我をしてしまったら、その後その人に意識せざる追えないため、進行スピードは遅れてしまう。そうなったら勝てる試合も勝てなくなってしまう。


「じゃあどうするの?」

「まずは、安全なフォーメーションを考えなくちゃだね」

「そっか」


 誰がダンジョン攻略で指示を出して、戦闘時には誰が最初に魔法を使うかを話し始めた。


 まず、全属性使える俺がダンジョン攻略で指示を出すことになった。そして、戦闘時は、最初に魔法を使う人はエルになった。


 本当なら俺が最初に魔法を使うことがいいのだと思う。なんせ俺が魔法を使ってモンスターを一掃できればそれが一番だし、もしそうじゃなくてもある程度モンスターを倒すことができる。


 でも、俺がダンジョン攻略の指示を出す以上、接敵したとき、反応が遅れてしまう恐れがある。だから、二番目に強いエルが魔法を使うことになった。


「じゃあ私はどうすればいいの?」

「ミシェルは、エルが取りこぼしたモンスターのカバーだね。後、風属性の魔法が得だから、バフ魔法も使えるよね?」

「うん。じゃあ私はバフ魔法とエルのカバーってことね」

「あぁ」


 ミシェルが風属性のバフ魔法をかけてくれれば、行動スピードは上がることができる。そしたら戦闘の際にもスムーズに事を運ぶことができると思った。すると、エルがまとめを言い始めた。


「前衛が私、中衛がミシェル、後方がリアムってことでいいよね?」

「「了解!」」


 そう言って、話が終わったところでミシェルが言った。


「そう言えば、私達敬語が無くなったね」

「あ~そう言えば」


 いつからだろう。入学当初は、エルさん、ミシェルさん、リアムくんと敬語を使っていたが、今はお互いが呼び捨てで呼んでいる。エルは嬉しそうに言った。


「それだけお互いがお互いを信用し始めてきているってことでしょ!」

「そうだね」

「このまま一生の友達とかになれればいいね」


 ミシェルがそう言ったら、エルは満面の笑みで頷いた。


(一生の友達か)


 そんなこと考えても無かった。ティアに出会うまで、この学園に入学できるとも思っていなかったし、友達もできるとは思っていなかった。


 でも、精霊と契約しているミシェルと出会い、実力で拮抗しているエルと友達になることができた。


(ティアには感謝しかないな)


 すると、ティアが耳元で囁いてくる。


{私のおかげじゃないからね? リアムの実力で友達ができたんだから}

{そ、そうだね。でもティアには感謝しているよ。本当にありがとう。俺を救ってくれて}


 そう。ティアが何て言おうと、ティアと出会わなければ今の俺はいない。だからこそ、一番感謝しているのはティアであった。


{ば~か}


「俺もミシェルやエルとは一生の友達で居たいな」

「「うん!」」


 その後、個人練習に合わせて話した通り、三人で連携の練習などをして試験一週間前になった。そこで、模擬戦の組み合わせが出た。


「俺たちはBクラスとか」

「ね。どうせならAクラスと当たりたかったね」

「そうね!」

「がんばろう!」


(俺的にはAクラスじゃなくてよかった)


 ぶっちゃけ本番でマット兄さんが居るAクラスと当たるのは分が悪い。相手の力量が分からないし、俺たちもダンジョン内でどの程度連携が取れるかわからない。だからこそ、練習が挟みたかったし好都合であった。


(まあ欲を言えばCクラスと当たりたかったけど)


 そうこうしながら、最後の詰めをしているところで、Bクラスの代表が歩いているところでこちらに気付き、嘲笑うように言った。


「Fクラスと当たれて俺たちはラッキーだったな。それも魔力ゼロが二人に落ちこぼれ一人だろ? 楽勝じゃないか」

「だな! 魔力ゼロがクラス代表とか笑っちまうわ」

「無能と天才がどれぐらい違うか、見せてやろうぜ」


 そう言いながら去って行った。するとミシェルとエルが怒りながら話し始めた。


「同じ学園に通っているんだからバカにすることないじゃない! 本当にα組ってロクな人が居ないわね!」

「ね! 絶対に見返してやろ! リアムもそう思うよね?」

「あぁ」


 流石にあそこまで言われたら、俺だって見返したくなる。


「絶対に勝とうな」

「うん! そしてリアムのお兄さんも絶対に見返そうね」

「あぁ」


 そして、模擬戦当日になった。


 この時は、まだこの模擬戦で何が起こるか知りもしなかった。

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