また君を愛することができるなら

秋奈うさ

高嶺の花

―ミーンミンミンミンミンミー

 セミが「待ってました」と言わんばかりに煩く鳴き叫ぶ、八月の初め。


 夏休みだというのに、毎日のように学校に行っていることに嫌気がさしているはずなのに、心とは裏腹に足は軽やかに最寄駅へと向かっている。補習や追試なら、こんなに楽しみなはずがない。


理由はただ一つだ。今は、学園祭準備の真っ只中。つまり、神楽さんに会えるのだ。会えるだけじゃない。一緒にセリフを考えて、劇まで作っている。なんて素晴らしいことなんだ!小さい頃から見ていた映画は、この為にあったのだろう。素晴らしい。

 


 浮ついている僕の前に、四両編成の短い電車が停まった。

 

神楽さんと同じ車両に乗れる確率は、四分の一。昨日は外れてしまったけど、今日は、なんだか自信がある。


―プシューッツ。〇〇駅、〇〇駅です。お忘れ物にご注意ください。

 降りてくる人を待ち、電車に乗り込むと、即座に神楽さんを探した。


 ゆっくりと車内を見渡すと、奥のドアにもたれかかっている、ピンクゴールドのイヤホンをつけた神楽さんを見つけた。

 当たったぁぁぁあ!朝から、景色を眺める神楽さんを見ていられるなんて。幸せだぁぁ。


 それから二十分間、目が合うことのないように注意しながら、神楽さんを眺め続けた。

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また君を愛することができるなら 秋奈うさ @akiusa_28

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