02

 彼女がいた。所在なさげな感じで、立ち尽くしている。声をかけたかったけど、それどころではなかった。

 追われている。見つかって捕まると、街が丸ごと吹っ飛ぶ。爆弾と鬼ごっこしてる気分だった。

 彼女も大切だけど、同じぐらい街のことも大事だった。なにより、街が吹っ飛んだら彼女も爆散する。バッドエンドまっしぐら。

 彼女。まだ、危険な仕事を続けているのだろうか。はやくやめてしまえばいいのにという思いと、そういう場所でしか彼女は生きられないのだろうというあきらめが、自分のなかで混在している。

 彼女にとって自分は、何だったんだろう。分からない。

 雨。本格的に降ってきた。彼女は傘を差していなかった気がするけど。濡れて風邪をひいたりしないだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

撃ち欠けの意思 (短文詩作) 春嵐 @aiot3110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る