撃ち欠けの意思 (短文詩作)

春嵐

撃ち欠けの意思

 彼だった。

 捕らえることも、殺すこともできずに。その場に立ち尽くす。雨は小降り。

 彼を逃してしまったのか。それとも、彼に逃げてほしかったのか。分からない。

 彼と一緒にいる人生。そんな選択も、どこかにあったのかもしれない。それに気付かず、壊して、なくして、いま。ここにひとり。

 どうしようもなかった。雨が降っている。心まで浸透してしまいそうな、水滴の音。

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