主張が苦手な高校2年 由芽の葛藤
松本タケル
主張が苦手な高校2年 由芽の葛藤
『ニンゲンとは矛盾を是とする生物である』
哲学者の言葉のようだが違う。
これは高校二年生の
「明日、班で議論するのでしっかり調べて見解をまとめてくるように」
こんな宿題が出されることがある。
だが、議論の場でそれを主張することはない。
主張はしないくせに 『大勢の意見だから』 という理由で同調はしたくない。
「A案かB案かどちらが適切か手を上げてください」
先生がそう言って挙手を
クラスの大部分の人は声の大きい人の意見に賛同する。
しかし、
クラスで一人だけ違う意見に手を挙げたこともある。
『主張する』 って何だろう。
ほとんどの人が、自分の意見を優先してほしいと思っている。
会話をしても、相手の話よりも自分の話しを聞いて欲しいと思う人がほとんどだ。
自分の事ばかり話すと周りの人に嫌われる。
それが分かっていても、やはり自分の話しを聞いて欲しい。
そんなに自分が優先なら群れずに一人でいればいいと思う。
でも、一人でいるのは嫌なのだ。
嫌われたくない、一人でいたくない。でも、自分のことは主張したい。
『そう思うニンゲンは矛盾している』。
帰宅部の
その日も土手で本を読んでいた。
「あれ、
背後から女性の声。学級委員の
話し上手で、容姿端麗なクラスの人気者。
「横、座ってもいい?」
「うん・・・・・・いいけど」
直接、話したことはほとんどない。
「・・・・・・」
話題が浮かばない。
「一度、ちゃんと話してみたかったんだ」
「私・・・・・・と? なんで?」
「
「うん、まあ・・・・・・私なりには」
「いつも気になってたんだ。少数派になった人のほとんどが 『しまった、空気読み間違えた』 みたいな顔するけど
そこまで見ている人がいることに
「もし良かったら理由、聞かせてくれない?」
「いいけど、私、結構、理屈っぽいよ」
「うん、是非!」
「昨日の課題だけど、まずは経済産業省の白書を調べたの。そうしたら、課題で出されているデータは直近三年分だけだって分かったの。傾向を分析するのに三年じゃ少ないと思った私は、さらに過去十年分のデータを白書から抽出したの・・・・・・って、これって楽しい?」
「うん。もっと話して!」
「そのデータを表計算のソフトに入力してグラフ化してみたら、おもしろい傾向が分かってきたの、それで・・・・・・・」
「すごい、すごい!」
お世辞かと思ったが嘘ではないようだ。
「私さ、実は自分の意見がほとんど無いんだよね」
「そうなの?
「Aさん、Bさんと順番に意見を聞いたあと、それをいくつかに分ける。分けたグループの間で話し合ってもらって私はそれを聞く。最後に納得できると思う側につく。それが私のやり方。それでいいのかなって時々思うの」
「意見をまとめる能力って、私すごいと思うよ」
「本当? うれしい!」
(
自然にこういう仕草ができると人気が出るのも当然だ。
「ねえ。また、
「へ?」
「
「うん、いっぱい聞きたい」
「あと、
「じゃあ、あ、
「じゃあ、
そう言い残して
そして「誰かに思っていることを話すのも悪くないかも」 と思った。
主張が苦手な高校2年 由芽の葛藤 松本タケル @matu3980454
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