第20話 金魚すくい


 今日、久々に金魚すくいをした。

 金魚をすくうポイを受け取り、泳ぐ金魚の艶やかさと可愛さに顔がほころんだ。


※ ※ ※


 近所の神社では、秋祭りをしている。

 小さいが露店も開かれ、カラオケ大会もしているが、子どもの数は少ない。

 町内の子どもがいない訳ではない。ただ、こういう催しに参加する子が激減している。


 それは、少しさみしい──。


 私は小さな自転車が並ぶそこに、自分の愛機を並べてやる。

 おおっと目を見張り、吹き笑う。

 その理由。

 置かれた自転車のハンドルには、小さいメットがある。よくよく見ると、自転車が大きい、小さい。大小とまばらに列をなす。

 嗚呼と、安堵とともに。

 ご近所の方や、幼少を抱えた親御さん。

 ご苦労様です。

 賑わう境内に私は、心が浮かれる。

 何が何でもやはりお祭り。


 うん、良いものだ。


 鳥居の外にゴミを運ぶ女性。その横にいる子どもは、お手伝いだろうか。

 良い子だなと思い、湿る土に足を落とす。

 

 さてと……、周囲をさらう。


 うん、あるある。

 たこ焼き、玉せん。バナナチョコ。甘じょっぱさが空気に漂う。

 でも前ほど人の集まりがない。それはそうだ。

 最近ではスーパーでも売ってる。家でも作れる。バナナに関しては、そういう流行りの店がある。

 だからだろうか、綿菓子屋が消えた。

 時代かなと、店の屋根から目線を下に流せてやる。

 おや?? や。

 どうやら。糸くじ、輪投げ、射的に風船割りは──違う、ようだ。子どもが群がる。列がある。

 人集りがある。

 景品も時代に沿ってなのかトレーディングカードが、主だ。

 うん、ゲンキンなもんだ。

 こういう処が現代っ子というべきなのか。食いつく視点さながら店主にも何故か素晴らしいと、感心してしまう。

 うろうろ気付くと、もう店を一週していた。

 どうしよう、せっかく来たのに何もせずに? と考えてるとよく知る、馴染んだ物が足下にある。


「おおっ、いいね」


 私は声を歓喜させ、しゃがんだ。

 目の前にはふよふよちろちろ。赤や白、朱色に薄茶、其れに黒。 水の中に垂らした絵の具のように、線が細く流れている。


 綺麗。


 か弱いが力いっぱい。

 背びれ腹びれが悠々と。

 長い箱に、水が張られるそこに……散り舞う……。


「どうですか?」


 店番のお姉さんに『ぽい』を、見せられる。

 お姉さんが手にする丸い半紙の下には、赤、黒、橙などの、色とりどりが透けている。


 ふむふむ、昔は三十匹ぐらいスス〜イすいすいと寄せ入れたんだよ?


 お姉さんに自慢した後、ぽいを受け取り屈んだ。

 アルミの器に水を少し、そして、ぽいの先を金魚に寄せる。角に追いやられる、可愛い稚魚がいる。

 半紙の上で、ぴぴぴと跳ねる。

 私は素早く入れ物に魚を。丸いアルミに反射する赤色が眩い。

 そうそう、こうなんだよ。と私は喜ぶ。


 ひょいひょい。ひょひょい。

 ぴちぴち、ピチチ。


 水が浸透し、破れそうになる紙の上で跳ねる赤い金魚。

 かわいい。

 黒いデメキンをすくうと重みで穴が開いた。


「あら、穴が」

「いやいや、まだいける」


 器用に傾けてゆっくり、ススス。紙上で、丸い腹見せ悶える小魚。

 細いのを二匹、いっぺんに。

 すすぅ〜。


「うわぁ、器用ですね」

「ありがとう、童心にかえるね」

「そうですよね〜、わたしも小さい頃は」

「やってたの?」

「はい、二匹が限界ですね。いつも魚のおしりを追いすぎて破れて……」

「ムキになると負けだよ?」

「そうだけど、つい」

「ね〜、追うよね〜」


 最後の一匹を魚の流れに合わせていると、大きな穴が空いていく。


「ああ、終わった」

「でもいっぱいですよ」


 数えると十五匹ぐらいだった。

 腕が落ちたな……。


「ありがとう、返しても良いんだよね?」

「はい、でもいいんですか。一つぐらい?」

「猫がいるからね」

「そうですか。また来年も来てください」

「見かけたら来るよ」


 昔は金魚をすくう側のお姉さんが今では店主、とは面白い。

 私は店を一瞥し、鳥居をくぐる。


 夏の終わり、秋の始まりの風物詩。


 また来年と、心を躍らせるも過ぎる不安もある。

 小さい規模になるつつも、きちんと後世に継がれる伝統にうれしく思う一日であった。


「そんなに年は……取ってないんだけどおかしいな?」


 手にはりんご飴ではなく何故か、ぶどう飴がある。

 時代に流される私に、吹き笑う。


「いや、だからそこまで。老けてないよ?」

 

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とある街並みの風景。 珀武真由 @yosinari

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