懐かしさと新しい夏の思い出

深水さん

第1話

「あっつー」

今は夏。さんさんと照りつける太陽が、ミンミンと騒がしく鳴くセミが、枕元でぷ〜んと羽を鳴らす蚊がとても憎らしく感じる季節だ。


俺は生まれ育った田舎に大学生のこの夏に帰ってきた。

8月の初め。大学の試験を終わらせて戻ってきた。


「戻ってきて改めて思うけど…都会と違って凄い電車のスケジュールの空きがあるな」

そう、ガラッガラなのである。それだけ人が来ないのだろうか。

まぁそれが都会という人混みに揉まれて疲れた俺にはとても心地よくもあるのだが。


駅で親に着いた旨のメールを送ろうとした時に大声で遠くから見知った声がすることに気づいた。

「湊(みなと)おにーちゃーーーん」

「この声は…蛍(ほたる)か。相変わらず元気なこって」


すぐに声は近くから聞こえるようになり、そう思った時には腹部に何かが突撃してきたのを感じる。

「蛍…痛い」

「えへへ、ごめんごめん湊お兄ちゃん

久しぶりだから嬉しくなっちゃった」

俺の幼なじみの妹…まぁ、ちっさいガキの時から一緒に居たしこいつも幼なじみか、の葉月 蛍。

元気いっぱいな性格は相変わらず、むしろ増したようにも思える。

「久しぶり…そうだな。去年の夏は課題やら車の運転免許やらなんやらで帰れなかったからなぁ。」

「年末に帰ってきたけど数日で帰っちゃうしさ〜。

だから私もお姉ちゃんもずっと待ってたんだよ?」

「そうかそうか、ん、凪紗(なぎさ)はどうしたんだ?」

「お姉ちゃんは夏祭りの準備してると思うよ?」

「そっか、あと3週間ちょいだもんな。」

「だからそろそろ来ると思った私が来たんだよ。

さ、行こ行こ♪」

左腕に抱きついてくる蛍。

頭を撫でるとにへへ〜と言いながら顔をほころばせる。

ほんと、こういうところも変わらないな。


色々大学のことを聞いてくる蛍と話しながら家へ歩いていく。

今年の夏は始まったばかりだ。

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