英雄、再再会。

「リースお兄ちゃんっ、遊ぼう」

 と、リスに語り掛ける少年の声が聞こえる。



 あの日結局遊べなくなったので、失われたその一時を取り返すためにも、今日また再会する事になった。正しく言えば、再再会になるけど。


 私は木陰で涼みながら、楽しそうに遊ぶ彼らを見ていた。街の市街地である噴水の広場から、少し歩くと自然豊かな緑に囲まれた、湖が目に見える。ここは景色も綺麗な事から、数少ない有名な観光地の一つである。リスと少年が水の掛け合いをしているのは、何とも子供らしい。まぁ。両方とも少年で子供であるのだけど。こんな私も大人からしたら、子供なのだろう。


 私は分からないけど、あの日の事もあり、きっと普段より多い数の護衛が陰に潜んでいるのだと思う。こう言う見晴らしのいい場所は敵に格好の狩り場となる一方、護衛もしやすくなるのかもしれない。



 顔に冷たいものが掛かったと思ったら、今度は全身がびしょ濡れになった。誰かが水を掛けたのだった。

 私は湖で遊んでいる彼らに目を向けた。やってしまった、と言う顔をする少年がいた。リスと遊んでいる時にこちらにも、飛ばしたのだろう。私は下を見てから、そんな彼に叫んだ。


「待っていろ、許さないぞ」

 と、笑いながら、湖に入った。


 そして、仕返しと言う風に少年の顔に水を掛けた。私、リス、少年は全身濡れながらも、遊んでいた。幸い、この湖の水は飲めるほど綺麗なので、濡れている服は乾かせばいい。顔や口に付いたとしても、大丈夫なものだった。


 遊んでいる最中に、鋭い金属音が響いて、私達は遊ぶ手を止めた。が、何も起こらなかったので、また遊びを再開した。きっと陰の護衛が、獲物を仕留める時に、獲物が暴れたせいで音が出たのだと思った。その者は獲物を逃さず息の根を止めたので、お咎めはない。私は正規の職員ではなく、一応協力者扱いなのであの日は、あれだけの仕事で済まされた。



 寒くなって来た事もあった、私達は湖から上がって、噴水の広場に帰った。

 私はこないだ、彼らの再会を邪魔してしまった事もあったから、その謝罪のために、あの日の後渡された特別料金で、スイーツを奢った。幸い、こちらの財布も気にしてくれる人達だったので、お金が全部吸い取られる事はなかった。


 私もリスと少年との楽しい時間を過ごしていた。

 昔、リスと遊んだ時と同じように。

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過労の英雄は大人しく休むべき 影冬樹 @kagefuyuki

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