第3話【充実しだした日々】

始業式の日から何日も過ぎ俺たちは移動教室や昼休みにちょくちょく顔を合わせることが多くなった。

放課後も冬華と一緒に俺の教室に来ては俺や、中田、鈴奈の5人で会話をしたり、遊びに行く機会が増え、今まで平凡に過ぎていった時間があっという間に過ぎていくのを俺は感じていた。

充実感ってこんな感じのことをいうのかと、心の底から感じている。


ゴールデンウィーク直前。

俺たちは行きつけになったファミレスで連休にどこかに行こうということになり、計画を練っているとこだった。


「やっぱり、遊園地より映画館にいかないか?どうせ遊園地は親子連れとかリア充のカップルばっかりで、なかなか回れないと思うし、待ってる間暑いじゃん」


中田が面倒くさそうに駄々をこねてきた。

しかし、その前にみんなの好みの映画のジャンルが合わず、どの映画を見るか決めかけている時に鈴奈が親が仕事の関係で遊園地の招待券が3枚あると言ってきたので、なら、2人分は5人で割り勘しようと話がまとまり、遊園地に行くことになっていたのだ。

それなのに中田ったらわがままを言うもんだから俺はどうなってもしらんぞ。


「ちょっと中田先輩!さっきみんなで映画は好みが分かれるし、鈴先輩が遊園地の招待券あるって言うから足りない分はみんなで割り勘しようって言ったばっかりじゃあないですか!」

「そうですよ先輩!冬華の言う通りです!それにせっかく鈴先輩が招待券をみんなで使おうって言ってくれてるのに失礼ですよ!」


冬華とマリルが2人で中田を口撃する。

あまりの言われようにどんどん体が縮こまっていく中田。哀れなもんだ。


「まあまあ2人とも、私のことは大丈夫だけど、そうなるとどこに行くかまた白紙に戻るね」


鈴奈が2人をなだめながら会話を落ち着かせる。

言われ続けて意気消沈した中田がこっちに視線を向けるが俺は知らんフリして顔を背ける。

こういう時女が団結したら男は勝てないことを知っているからだ。

それに、冬華が一度起こり出したら手が付けられないのを俺は兄貴だからよくしっている。

今は落ち着いたが昔はわがままな性格で一度言い出したら言うことを聞かない子だった。

小さい時から顔が可愛かったから周りにちやほやされて育ったのが要因だと思う。


「陽先輩はどこ行きたいですか?」


そんなことを思い出しているとマリルがこっちを見つめながら聞いてきた。


「んっ?俺?俺は・・」


マリルの表情にドッキとして俺は挙動不審になってしまった。


「お兄ちゃん何デレデレしてるの?」


妹は高くて明るい声とは裏腹に冷たく殺意さえも感じる目線でこっちを見てくる。


「べっ・・別に照れてねえし!そっ、そうだなー俺も遊園地でいいとおもうぞ!うん。そうだ遊園地に行こう!」


半ば妹たちの勢いに押されながらもそう言うことが自分の身の為だと察知し、俺は手元のコーラを飲みほした。


「そう言うことだから、遊園地に決定―!」


冬華が立ち上がり右手の拳を上げる。

まるで子供のわがままが通った時のようにはしゃいでいた。

その姿を見て顔を机に乗せうなだれる中田とその中田をなだめる鈴奈。


こうして俺たちのゴールデンウィークの予定が決まった。



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