第5話 本から飛び出て…
「はぁ〜疲れた…明日は休みだし昼くらいまで寝よう…。」
僕はそんな事を考えながら会社からの帰り道を歩く。今日は残業のせいで帰りがとても遅くなってしまった。そしていつも通ってる公園に入ると、ベンチに本が置きっぱなしになっているのが見えた。
「忘れ物かな…。」
僕はその本を手に取った。見た感じは普通の本だけど、書いてある文字は分からなかった。少なくとも日本語だとか英語とかじゃないのはすぐに分かったけど、それだけだった。
僕は、今日はもう夜も遅い為、明日起きたら買い物がてらに交番に届けようとでも考え、取り敢えず鞄に入れて家に持ち帰る事にした。
「ただいま〜。」
「遅いよ!」
玄関で早速エミルに言われた。取り敢えず僕は謝る。
「いや、ごめんよ。今日は忙しかったから…。」
「別に謝んなくて良いよ。お仕事お疲れ様。」
そう言ってエミルは靴を脱ぐためにしゃがんだ僕の頭をポンポンと撫でる。なんだか、すごく癒される気がする。
そして僕は鞄に入れた本を一旦出してペラペラとページを巡ってみる。エミルは取り出した本を見てギョッとしていた。
「それ、どこで拾ったの?」
「え?公園に落ちてたんだけど…。」
「あ、えーとその本はね…。」
エミルが言いかけた瞬間、本が光り出した。そしてその光は人の形を形作り、やがて姿を表した。エミルと同じくらいの身長の女の子。黄色い目に白い髪の毛。狐のような耳と尻尾が生えている。
「エミル、久しぶりだね。」
「あ、えーっと、、誰…?」
「それはこっちの台詞よ。兎に角、エミルは返してもらうからね?」
「エミル、取り敢えず、説明してくれないか?この子が誰か。」
「うん、わかった…。」
エミルによると、どうやらこの子はルアという名前で、エミルの唯一の友達らしい。となると、追いかけてきたのかな…?
そんな事を考えてると、エミルの「絶対帰らない!」というのとルアよ「帰るったら帰るの!」という押し問答が耳に入る。取り敢えず僕は二人の間に割って入り、落ち着かせる。
「帰るにしても、どうやって帰るの?」
と、僕は聞いた。ルアは、
「それは、エミルにワープさせてもらって…。」
エミルは答えた。
「え、それなら当分は無理だよ…?」
ルアは「え?」という顔でエミルを見つめる。
エミルは続けた。
「これ、一度使ったら暫くは出せないんだよね…」
僕は考える。エミルがここに来てから、まだ一ヶ月程しか経ってない。
「どのくらいで出来るの?」とルアが聞くと、エミルは
「ここは魔力の純度が低いから、、一年は掛かりそう…。」と言った。
ルアは「嘘でしょ…。」と言って数秒間俯くと、顔を上げて言った。
「私もここで暮らさせて!」
僕は驚いてしまった。
「いや、あの金銭的な面で不安が…。」
と、言うとルアは即座に返した。
「女の子に出てけって言うのー?」
と言われた。それは言えない…。
結果、僕は押し負けてルアが僕の家で暮らすことになった。ただ、エミルに話し相手が出来たと考えると、悪いことじゃないかな、と僕は思った。
拾ったのは魔王の娘でした。 フェノン♬ @insanity
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