第4話 免疫はまだ不完全?

 ピピピ…ピピピ…。

 また、いつものように朝が来た。相変わらず重い体をゆっくりと起こす。

エミルの方を見やると起きてるようだったが、顔が赤くなってる。

 「あ、おはよー、、」

調子悪そうにエミルは声を掛けた。

 「大丈夫か?顔赤いぞ、熱あるんじゃないか?」

 「大丈夫だよ、別に」

あからさまに無理してるであろうエミルに僕は体温計を持ってきて熱を測らせた。エミルは測り方が分かってなくて最初はエラーが頻発したけど…。

38.2℃と、体温計に表示された。

「風邪引いたんじゃ…?」

「私は別に風邪なんて引かないもん!たしかに頭痛いし少し喉も痛いけど…。」

「それを風邪引いてるって言ってるんだけど…。」

「だって風邪引いたことないもん。今まで一度も。私だって魔王の娘だから状態異常の耐性も付いてるんだよ?」

(んー、、多分だけど、向こうとこっちじゃ風邪のウィルスが違うのかな?)

 僕は自分で勝手に結論づけた。でも、それはまたそれとして、仕事はどうしようか…。

「今日はどうしても外せない仕事があるんだよね…。一人で大丈夫?」

「大丈bゲホゲホ…大丈夫!」

「大丈夫じゃないね…。確か薬あったはず…。」

 僕は市販の風邪薬をエミルに飲ませた。エミルは終始嫌がってたけど…。

「苦いよぉ…。」

「ごめんね、風邪治ったらエクレアまた買ってあげるから。」

「約束だよ?」

「うん、分かったよ。」

 取り敢えず僕は、直ぐエミルをもう一度寝かせて水で濡らしたタオルなんかをエミルのおでこに乗せて、ついでにお粥なんかも簡単に作って、僕は仕事へと向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 会社での仕事中、僕はずっとエミルを心配してしまってた。そしてお昼休みの頃に、エミルから電話が来た。僕は直ぐに電話に出た。

「もしもし、体調は大丈夫?」

「うん、なんとか大丈夫…。」

「お粥は食べれた?」

「うん、美味しかったよ。ありがと。」

「良かった…。体冷やさないようにちゃんとあったかくして、熱も測ってよ?」

「分かってるよ、後さ、そっちも…お仕事、頑張ってね。」

なんだかこの一言ですごく頑張れる気がした。初めて言ってもらった気もする言葉だ。

「うん。沢山頑張るよ。それじゃあ、そろそろ時間だし、またね。」

「分かった。またね。」

 今日は仕事も早く終わりそうだ。

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 そして夕方…。まぁ、割と普通の時間帯に帰ってこれた。残業も無くて良かったぁ…。安心しながら玄関のドアノブに手をかける。

 「おかえりー!!」

もうすっかり体調が良くなったのかエミルが走って玄関にやってきた。

「え、、もう治ったの?」

「当たり前でしょ!だから私には耐性があるって何度も言ったじゃん。」

(いや半日くらいで状態異常の耐性って付くもんなのかな…?でも、治ってたからいいかな。)

「それで、治ったから当然エクレア買ってきてくれたんだよね?」

 僕はそこで気づいた。そういえば約束していたんだった。

「買ってきてないっていうのは、無いよね?」

「えっと、、ごめん。」

「あー!嘘ついたー!いけないんだー!」

「ごっ、ごめん!明日には買ってくるから、ね?」

「1日毎に一本増えるよ?」

「…今すぐ買ってきます、はい。」

 この後、僕は走って近くのコンビニにエクレアを買いに行く羽目になった。でも、そのあと満足そうにエクレアを頬張るエミルを見て、僕はとても癒された気がした。





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