第3話 はじめてのお留守番
ピピピ…ピピピ…ピピピ…
部屋に目覚まし時計の音が鳴り響く。僕は重い体をゆっくりと起こした。
「あぁ…また今日から仕事かぁ…。」
僕は隣でグッスリと寝ているエミルを起こす。
「おーい、起きろー?」
「後少しだけ…眠い…。」
「我が儘言うな。今日から仕事なんだから…。」
身支度をしながら僕はエミルに言った。
「んむぅ…ふわぁ…」
あくびをしながらエミルはやっと布団から出てきた。全く…こっちは忙しいのに。あれ、そーいえば…。
「エミルは今日は僕が帰ってくるまで家でお留守番だね。」
「え…一人?」
「うん、会社に行かないといけないから。」
「私も行ったら、ダメ?」
「うーん、、悪いけどダメだなぁ。」
「そっかぁ…。」
ガックリと肩を落とすエミル。でも、電車の時間もあるので相手にはできない。僕は続けて言った。
「朝ごはんは用意するけど、お昼ごはんは用意できないから、お金置いていくからこの家の右に真っ直ぐ行った所のコンビニで買っておいてね。後、なんかあったら家の電話から僕のスマートフォンに電話してね。電話番号、書いておくから。」
「うん、分かった…。」
取り敢えず分かったらしい。でも、このリアクションを見ると日中一人になる事には納得いかないんだろうなぁ…。
「今日は出来るだけ早く帰るようにするから、気を落とさないで、ね?」
それでもまだ不機嫌そうにむつけているエミルの頭を撫でてやった。
「絶対早く帰ってきてね!約束だから!」
「うん、分かった、約束するよ。それじゃあ、行ってくるね。」
「いってらっしゃい!」
そうして僕は元気そうなエミルにいってらっしゃいを言ってもらって会社へ向かった。不思議と足取りが軽くなった気がする。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして会社の昼休みの時間。僕は少しだけ心配だったのでエミルに電話を掛けてみることにした。電話を鳴らして暫くすると、エミルが電話に出た。
「もしもし、大丈夫?お昼ご飯はちゃんと買って食べた?」
「うん、大丈夫だよ。カレー?っていうの食べたの。美味しかった!」
「それなら良かったよ。それじゃあまた…」
「あ、ちょっと待って!」
「ん?どーしたの?」
「お仕事、頑張ってね。」
「うん、頑張るよ。」
不思議とやる気が湧き上がってきた。
でも、お昼ご飯を終えて暫くして…。仕事のミスが発覚した。ミスをしたのは一応僕ではないが、総出で対処しなければいけなかった。それでも残業になってしまうだろう。そして、それは的中した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まずい…早く帰るって約束したのに…。」
時計はあと少しで23時になろうという所だ。もしかしたら、というか、もしかしなくても寝てるだろうなぁ…。そう思いながら、僕は玄関のドアを開けた。すると、、。
「おーそーい!!」
機嫌が悪そうなエミルが立っていた。
「いや、ごめん。仕事でトラブルがあって…。」
「 良いから、早くこっち!」
エミルは僕の手を引っ張ってリビングまで連れてった。テーブルにはえらく不恰好なおにぎりが二つあった。
「お腹空いてるかなって思って、、作ったの。食べて?」
「ありがとう。」
僕はそれを口の中に入れる。一人暮らしを始めてから、初めて他の人が作った物を食べた。それはとても暖かくて、美味しかった。
「どう、美味しい?」
「うん、とても。」
僕はとても幸せな気持ちに包まれて、食べていた。
そして、お風呂に入ってる間にテーブルに突っ伏して寝てしまったエミルを布団の中に入れて、僕も眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます