作中冒頭で、大好きだった音楽を主人公は嫌いになるわけであるが、その経緯が、深い絶望に対してそれをなにかのせいにしなければやっていけなくなってしまうような、非常に人間臭さを感じられるものになっている。一見これは、理解が難しい、それとこれとは話が別だろうという印象を受ける可能性があるが、それは深い絶望を、物語の中であれ自分の人生であれ、今まで味わった人にとっては非常に共感できるものであり、小説としてのそのような深みを冒頭から既に表現できているところがこの作品の素晴らしいところだと私は思う。話の掴みが非常に上手い。
またそのように始まった物語であるため、今後への可能性を多く残す、期待をとても強く感じる作品となっている。音楽を嫌いになった主人公がこれから音楽と、そして父と現実にどう向き合うか、非常にこれからが楽しみである小説だ。
さてこちらの作品、私が少々音楽に関わっている人間であることも含め、上記の理由から冒頭で一気に引き込まれたなと感じております。これからどういった展開が待っているのか非常に楽しみにしておりますので、期待を込めて☆2とさせていただきました。今後の連載、心よりお待ちしております。