Final Track
Song.X エピローグ
交流会後、恭弥は何曲も新しい曲を作り出した。
どの曲にも、テーマを決め、伝えたいことをぎゅっと詰め込んで。
それを悠真が微調整し、全員で細部を決めていくことで、完全体となる。
緩急つけたリズムを鋼太郎のドラムが作り、それを恭弥のベースが支える。
瑞樹のギターが旋律を奏でれば、悠真のキーボードが全体をまとめ上げる。
そして芯のある強い声で大輝が唄えば、聞く人の心を掴んで離さない。
全員の力をフル動員して作りあげた曲を、恭弥たちは軽音楽部として文化祭や、放課後ライブなどイベントを計画しては演奏し続ける。
みるみる内に恭弥たちの存在が校内を飛び越え、インターネット上でも話題になっていった。
「やばいよ、キョウちゃん。俺らネット記事になってる!」
とある日の放課後、物理室で大輝が叫ぶ。
「んなの知らねぇよ。それよりとっととやんぞ」
真っ黒なベースの弦を弾く。アンプから出る低音が、薄い物理室の窓をガタガタと震わせる。
「どの曲やるの? それによってチューニングしなきゃ」
「そうだな……」
ベースとギターは、曲によって音を変えなければならない。それゆえ瑞樹が問えば、考えていなかった恭弥がうーんと唸る。
そこに時間をかけるのはもったいないと思った悠真が、コソコソと鋼太郎に指示をすると、強いドラムが最初にリズムを刻む。
その入り方、そしてテンポからどの曲なのかを瞬時に理解した恭弥は、ドラムに合わせてベースを鳴らした。
他のメンバーも次々に加わっていく。
そうして始まったのは、交流会で披露したオリジナル曲。
その頃よりもアレンジを加え、より自由に活気ある曲になっている。
音楽を避ける生活と、音楽と向き合う生活。
後者を選択し、恭弥自身を変えるきっかけになったこの曲に、恭弥はあとになってタイトルをつけた。
『オルタナ』
Fin
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