第17話 国策落語

 落語家の林家三平さんが、「国策落語」を披露しているそうです。戦時色が濃い中、従来の落語には禁じられた演目も多く、代わりに、国威発揚、戦争協力を促す演目が作られ、上演された由。

「機関銃、戦車を買うために長屋でも寄付しよう」なんて内容、ぞっとします。

 三平さんは、先代の三平師匠の息子さん。お父様は昭和の爆笑王、子供の頃、とても親しい存在でした。そのお父様が、学徒出陣されていたこと、今回、初めて知りました。


 三平さんも存在は知っていたが、祖父が関わっていたことを知らなかった。今回、「出征祝」を聞きました。

 中に、「紀元は2600年」という言葉が出てきて、ドキッとしました。先日、自作の小説「アマテラス~女性消滅社会」第4話に、同じタイトルをつけていたからです。

 SFのつもりですが、女性がいなくなる設定、ある意味ホラーですね。よろしければ下記から。

 https://kakuyomu.jp/works/16816700426149711825/episodes/16816700426296921939


「出征祝」は、息子に召集令状が届いた大商店のご主人が、喜んで息子を送り出そうとする話。

「明日、陸軍、海軍、大本営にも一万円ずつ寄付しよう」

 祝い酒を買ってこいと番頭に命じると、もう買ったと。

「二本買った(日本勝った)」

 これが落ち、全く笑えません。怖くなります。


 三平さんの祖父、先代三平師匠のお父様は、当時、圧倒的な人気を誇った、林家正蔵師匠でした。

「祖父は、出征した息子のために、国策落語を演じることを選んだ」

 と三平さんは語ります。

 息子が、少しでも有利になるように。もし断ったら外地の激戦地に送られる。そんなことが、と思われるかもしれませんが、私は実例を聞いたことがあります。

 2.26事件を起こした青年将校には埼玉出身者が多かった。それで、埼玉の兵士が多数、激戦地に行かされたと。なんと陰惨なやり方。


 正蔵師匠の息子、先代の三平仕様は千葉の部隊に配属された。敵の戦車が上陸してきたら、海岸に掘ったタコつぼの中から爆弾を投げるという特攻です。爆薬の準備もできないうちに幸い、終戦を迎えたそうで、本当によかったです。


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