第29話 牧場でゲームしてみた 3

(クリスside)



「大儲け、大儲け♪

まさか、不良在庫の山がこんな所で役に立つとは思わなかったわ♪

ノーネズミ用にお友達と開発したのに、売り出す前に騒ぎが収束しちゃったから困ってたのよ。」




あゝエリーお嬢様…だからあんなに沢山、ポコハンをお持ちだったんですね。

凄く嬉しそうにはしゃぐエリーお嬢様を、生暖かい目で見つめつつ周りを走り廻るモグランを叩き、『ポモトーロは無理でもせめてユウリン館でお茶をするくらいは稼がないと』と、心に誓う僕だった。



―――――――――――――――――


(ハインツside)



「ハインツお兄様、私また倒しましたわよ♪」

「あゝ、良かったなローラ。楽しいかい?」

私が苦笑いしながら尋ねると、彼女は元気よく



「はい♪とっても楽しいですわ♪

ポーラルタオでは、こんな事やった事有りませんもの♪

ユイナーダ王国は、こんなに楽しいイベントが有って羨ましいですわ♪」




楽しそうで何よりだよ……

けど、ローラ…普通はこんな事起こらないからね。

後、じゃなくてだからね。




しかしローラの安全を守りながらの、モグランリーダー探しはけっこう骨が折れるな。

やはり、ライネル殿に事情を話して協力を仰ぐべきだろうか?




私が考え事をしていると、ローラが近寄って来て

「ハインツお兄様、あそこに白いモグランがいますわよ。

アレって得点高いのかしら?」




ん?!白いモグランだと!




モグランリーダーじゃないか!!




私は慌ててローラの周りに結界を張り、奴を追って走った。




暫く追いかけていると私と同じ様にモグランリーダーを追っている人物に気付いた。

A級冒険者ライネル殿だ!




確かまだ彼は学生だったはずだが、流石だな。




2人で交互に攻撃を加えながら、追いかけたが中々致命傷が与えられない。

ええぃ!チョコマカと逃げ回って面倒な!




そして遂に我々はモグランリーダーを壁際まで追い詰めた。




「観念しろ!ここでお前に逃げられちゃ困るんだよ!

魔物の氾濫スタンビートを防ぐ為にもここで死んでもらう!」




おゝ!流石はライネル殿!!

勇者パーティーの魔法騎士らしい台詞だな。




私も負けてられない!




「ついでにその白い毛皮を置いて逝け!

その毛皮でローラにマジックポーチを作る。」




そう言った瞬間、ライネル殿に白い目で見られた様な気がするが、きっと気のせいだ。




アレでポーチを作ったら、きっと彼女に似合う。




「「観念しろ!!」」




ジリジリと近づき剣が後少しで届く…と思ったその時、奴のいる壁沿いを黒い何かが走り抜け、あっという間にその首元に噛み付きとどめを指した。




その正体は……




「アアッ!シ…シルバー!!そのモグランリーダーをこっちに渡せ!

それが無いとこの騒動の原因の証拠が!」




はい??




シルバーってまさかあの猫が

正体が猫って噂、マジだったんだ。




ライネル殿の交渉虚しく、シルバーはとうとうモグランリーダーを咥えて、高く投げてはキャッチするという遊びを始めた。




その度に真っ白だった毛皮がボロボロになって行く。

残念ながらもう、マジックポーチには出来ないな……




そのうちそれも飽きたのか尻尾をピンと立てて、咥えて行ってしまった。

たぶん飼い主の所に、お土産として持って帰るのだろう。




「うわぁー!頼むからそれ以上ボロボロにしないでくれ!

せめて、牧場長の所までは原形を~!!」

ライネル殿は慌ててシルバーを追って行った。




やれやれこれで一応、私の目的は終わったな……




因みにこのモグラン叩きゲームの優勝者はだった。




2位は意外にも、ポリーン伯爵令嬢とその婚約者。

ポリーン伯爵令嬢の土魔法で一気に地面を掘り起こし、婚約者がポコハンで留めを刺すという連携技。

流石は第二騎士団団長子息、なかなかやるじゃないか!




数日後……




エミール殿下と共に、学園図書館への近道を歩いていると、突然勇者シルバーがを咥えて現れ、何故か私の方に放って寄越した。




「うわぁ♪コレってイタッチリーダーですよね?

しかも白なんてなかなか居ないですよ。

シルバーは狩が上手なんですね♪

もしかして、ハインツにくれたの?」




流石は殿下…わかりやすい説明台詞をありがとうございます。




『にゃっ。』




どうやら、この前の詫びのつもりらしい。

暫く私と見つめあった後、シルバーは大きめの白い毛玉を吐いてから立ち去って行った。




白い毛玉?もしかして中に……




ちょっと汚いが、私はシルバーの吐いた毛玉を拾い、ほぐしてみた。

すると案の定、中からモグランリーダーの魔石が出て来たのだ。




それを見た、殿下は大はしゃぎされて




「わぁ♪それ魔石ですね。

私も欲しいなぁ~♪♪

もしかしてその辺りに落ちてるのにも、入ってるのかな?

どう思うハインツ?」




凄く嬉しそうに聞いて来る殿下。




「残念ながら、全部は無理かと……。

そうですねー狙い目はシルバーの毛色と同じ、黒くて少し大きめで、真ん中が膨らんでいる物でしょうか?」




そう答えると殿下は……




「でも、それは白かったですよね?

あ、もしかしてこの前のモグランリーダーの?

なるほど…シルバーが何か凄い魔物を倒した後も狙い目ですね♪」




この後、私は殿下にシルバーの吐いた毛玉の秘密を、教えた事を後悔した。




何故ならこの後暫く、シルバーの毛玉探しが殿下のマイブームになってしまったからだ。

上にバレたら絶対怒られるな……




後日、シルバーがくれたイタッチリーダーは、白くて可愛いマジックバックになって、ポーラルタオル王国にいるローラの元に渡った。




そして、私も記念に剣帯の飾りとして使う事にした。




もちろん、家族にも少しずつ切り分けた。

そうしないと後が怖い……



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後書き


次回からケイト視点に戻ります。

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