第28話 牧場でゲームしてみた 2

(ライネルside)


何故だ…何故こうなる……

今日は楽しいお出掛けデートのはずだったのに……




ボルネオール姉…アイツが関わるとろくな事にならない。

コレでというんだから、タチが悪い!




「えぃ!」

ポコ!

ケイトちゃんがモグランを倒した様だ。




「やりましたわ♪これで3匹目!

ポコハンのレンタル代の元は取りました!」

はしゃぐ彼女の横で、シルバーがモグランの山を作っている。




モグランという魔獣は普段、地中に巣を作り地中を移動している。

しかし、巣穴近くの地面を叩くと驚いて、巣穴から飛び出して地面を走って逃げるという変わった習性を持っているんだよな。




シルバーがどうやって倒しているかというと、まず猫にしては大きな身体を活かして、地面を叩き巣穴から顔を出した所を、猫パンチか首元に食い付いて息の根を止めている。




そのやり方は、まさにポコハンと同じだ。

アレを作った奴はたぶん、シルバーの戦い方を参考にしたに違いない。




モグランは噛み付きと引っ掻きぐらいしか攻撃力が無い、だからちょっと頑張れば子供でも倒せる。

ただし今回は恐ろしく数が多いのが問題だ。




殆どモグランだけの魔物の氾濫スタンビートだな。

最近同じ様な事※1事が起こったばかりだし後で冒険者ギルドに報告しておこう。




前回もそうだったが必ず何処かにモグランリーダーがいるはずだ。

そいつを見つけて倒さないと次の魔物の氾濫スタンビートに繋がるかもしれない。




因みに俺はA級冒険者なので参加していない。

皆んなの撃ち漏らしを普通に倒しているだけだ。

それでもけっこうな数倒しているがな……




―――――――――――――――――


(ハインツside)



私1人でこっそり奴を倒して、魔物の氾濫スタンビートを未然に防ぐ予定だったのに何故こんな事に……




そもそもゲームにも設定資料集や小説版にも『こんなに沢山モグランが出た。』なんて何処にも書いて無かったんだけど?




ああ、自己紹介がまだでしたね。

皆さん初めまして、ユイナーダ王国第十王子エミール殿下の護衛騎士をしている、ハインツ・F・ライブラです。




実は私には前世の記憶がある。




ライブラ候爵家には時々、そういう者が生まれるそうだ。

私の母上もその1人である。

彼女の前世は魔法使いで得意魔法は土魔法。




領地で魔物の氾濫スタンビートが起こった時は、その能力を活かして石の壁ストーンウォールで長時間城壁を維持し、同時に広範囲でストーンエッジを繰り出すという荒技で殆どの魔物を倒し、避難して来た領民を守り通したという女傑だ。




惣領娘だった母上だが、その恐ろしいまでの魔力に誰も婿の成り手がなく、危うく候爵家が無くなるところだった。

しかしユイナーダ王家の伝で、同盟国のポーラルタオ王国の公爵家から四男の父上を婿養子に迎える事に成功して今に至る。




因みに父上は普通の貴族で文官だ。

戦闘力はたいしてない。

浮気などしようものなら、浮気相手ごとあの世行きだろう。




以前、父上が婿養子なのを知らずに、しつこく言い寄って来た馬鹿な子爵家の庶子の女がいたが、父上に相手にされなかった上に、母上がその女の家の周りに#石の壁__ストーンウォール__#で壁を作り、3週間も閉じ込めるという事があった。




私が子供の頃の話しなので、詳しい話しは知らないが……




どうやら皆んな同じ世界からという訳ではなく、その時々でライブラ候爵家に必要な人間が、呼ばれるらしい。




私の前世の世界に、魔法は無かった。




【乙女ゲーム】の知識を持った私が居るという事は、今回はだという事なのだろう。


----------------


※1


ノーネズミ事件の事。

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