第22話 ケイトと勇者シルバー 2-5
「行ったか……。」
「死ぬかと思った!あの魔法は危険すぎる!」
『………。』
「お、お嬢様…素晴らしい!
また新しい魔法を開発されたのですね!」
1人喜ぶ見習い執事約1名を除き、俺達は驚愕していた。
なんだ?あの魔法は?!
久しぶりだな。
ボルネオール侯爵令嬢ケイトお嬢様専属執事のアークだ。
俺とお嬢様の飼い猫シルバーと俺の使い魔クロ、エリーお嬢様の専属執事見習いのクリス、そしてお嬢様の片思いのお相手ライネル様は、何かを企らんでいたお嬢様達を影から護衛するべく、ライネル様の魔法、
ライネル様が咄嗟に
あの魔法は危険過ぎる!
戻ったら直ぐに旦那様に報告だな。
とにかく、人が集まる前にお嬢様達のやらかしの後始末をしなければならない。
とりあえず爆発で空けた穴を埋めようと近づいたのだが、俺は直ぐに異変に気がついた。
お嬢様達が空けた穴の中心部に向かって、土が少しづつ移動しているのだ。
拙いな、たぶんコレってアレが出て来る兆候だ。
「全員、直ちにこの場から離れろ!
サンドワームだ!!」
俺達が慌てて離れた直後、穴の中心部からサンドワームが6匹首を出した。
サンドワームの出現に、執事見習いのクリスは真っ青な顔で疑問を口にした。
「何で此処にサンドワームが?!
砂漠地帯の魔物じゃないんですか?」
彼が疑問に思うのは無理もない。
此処はユイナーダ平原と言われている場所だ。
だが、このところのノーネズミ乱獲の所為で辺り一帯の草木が掘り起こされ、急激に砂漠化が始まってしまったのだ。
その為、本来なら居ない筈のサンドワームが出現したのだろう。
とにかく、今はコイツ等を倒すのが先決だ!
と言っても今回は遠距離攻撃するしか無いんだが……
何しろ前衛が猫とイロガラスと
俺も
サンドワーム相手に何処まで通用するか解らんが、とりあえず救援信号は出して置く。
あの爆発音とさっきのメイドも出したからもう誰か向かっていると思うが、念のためだ。
その間にも唯一、遠距離攻撃手段を持つライネル様は風魔法でサンドワームを2匹倒している。
流石は旦那様が目をかけているお方だな。
魔術士としてはかなりの実力だ。
俺はクリスを守りながら警戒を怠らない。
サンドワームが別の場所から出現する可能性もあるからな。
そして、やはりというか俺は足元の僅かな揺れを感知しクリスを抱えてその場から飛び退った。
すると今まで居た場所からサンドワームの幼体が勢いよく顔を出して来たのだ。
サンドワームの幼体が表に出て来るのは珍しい。
持って帰れば【魔生物研究所】が喜ぶだろう。
そう言えば『ギルドに依頼を出している』って聞いたな。
確かかなり前から出されている
コイツ等を持って帰ればかなりの報酬になる。
「おい、クリス。お前確か冒険者ギルドに登録してたよな?」
と尋ねるとクリスは若干青ざめながら
「え、えぇ…エリーお嬢様が『どうしても冒険がしたい!』と言われて領地のギルドで……。」
「そうか…俺も一応持ってはいる。コイツ等をギルドに持って帰ればかなりの報酬が貰える上に冒険者ランクも上がる。
それに貰った報酬でエリーお嬢様の誕生日プレゼントも買えるぞ!
エリーお嬢様もお前の活躍ぶりを喜ばれるだろうし、良い事尽くめじゃないか!
さぁ頑張ってそいつ等を倒すんだ。
ただしなるべく原型を留めてな、でないと報酬額が下がるぞ!」
と俺が全部言い終わる前にクリスとシルバーはサンドワーム(幼体)の群れに突入して行った。
チョロい。
―――――――――――――――――
※1
【魔法銃】
空魔石に魔力を込めて撃ち出す銃。
魔力の無い者でも使える。
もちろんサイド家が開発した物で護身用に特別配備された侯爵家の備品。
※2
【塩漬け依頼】
長期間出させているが誰も達成していない依頼。
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