第10話 夏至祭の出会い

前書き


新しい出会い。



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【夏至祭】…初等部に入学して、初めてのお祭りです。

今日は授業もお休みなので、朝から学園街に出かけている人達も居ます。




学園では【夏至祭】の時に初等部の学生が、仮装するのが昔からの伝統です。




姉の今年の仮装は、何故か【ニワトリ】でした。

私は以前母様が、【猫メイドセット】を、手直しして使いました。

私は小柄なのでまだ着れる♪




実は【キャッツンロール】では現在、持っている『猫耳&猫尻尾』のセットは、販売されていないのです。

あまりに精巧に作り過ぎて、獣人の国ズーラシアンの猫系貴族の方が、コレを付けていた方にプロポーズして、かなり揉めた為だとか……




現在、販売されている物は誰が見ても作り物だと解る商品です。




私はそれでは嫌だったので、メリアに頼んでメイド服を私用に仕立て直してもらい猫尻尾を付けてもらいました。




……失敗です。




現在、私はいつも以上に、学園猫達に囲まれています。

シルバー曰く、この【猫メイドセット】猫達にとってとても良い香りがするそうなのです。




そう言えば以前、姉がコレを着て猫を集めて何かしていたのを思い出しました。

どうやらその時に付けた香りが、まだ取れていなかったようです。




その所為で、私の跡を着けている猫系獣人の方が数名、私の護衛をしているアークに次々と排除されています。




本当は皆んなと一緒に、お祭に行きたかったのですが、ピピナはあの後レグスト様とお付き合いを始める事になり、今日は2人で出かけてしまいました。

(もちろん、メイドや従者と一緒ですが。)




ピピナの兄であるトロンは、カールと一緒に食べ歩きに行ってしまいました。



カリンカとシャロンも婚約者と一緒に出掛けてしまいましたし……




結果、婚約者の居ない私だけ相手が居ない状態です。

それに輪を掛けて、猫達に集たかられている状態の私に、話し掛けてくれる人は居ません。




寮を出る時には既に学園猫達に囲まれていました。

メリアは溜息をつきながら、

「横着して有り物で済まそうとするからですよ。

お嬢様……

それはそれで可愛いですけど。」

もう涙が出そうです……




こんな状態ではお店に入る事も出来ません。

仕方なく私は猫獣人の、私より少し小さな女の子が店番をやっている屋台で、ニジマスの塩焼きを食べました。

着いて来た猫達にも焼き魚を購入。




普段は大通りの外れで食堂をしていて、お祭りの時だけ屋台を出しているのだそうです。

ちょうど材料が少なくなったので、お爺さんが取りに行っている為、1人で店番をしていたところでした。




焼き魚屋台の女の子、名前は『ミケル』ちゃん。

何故、彼女がこの香りに反応しないのか、聞いたところこの香りは『マタタビ』という木の香りで、ミケルちゃんはハーフだからあまり効果が無いのだとか。




暫くするとミケルちゃんのお爺さんが戻って来ました。

最初、私の姿を見て警戒していたのですが、すぐに本物の獣人では無い事に気がついたようです。




お爺さんは普通の人間でした。




ミケルちゃんとすっかり仲良くなった私は、『何か困った事があったら、この街にいる猫に頼めば連絡が付く』事を教えて、屋台を離れました。




暫く歩いてからアークが、こっそりと

「お嬢様、気付きましたか?

あの屋台の周りに怪しい連中が居たの。」

と、言って来たのです!




えっ!?そうだったの?

「狙われてるのは、爺さんか孫か解りませんが、見張りを付けて置いた方が良いですね。」




今日初めて知り合ったミケルちゃん達に、侯爵家の影を付ける訳には、いかないので私は急いで猫達を説得して、お爺さんとミケルに付いてもらう事にしました。




何も無ければ良いのですけど……

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