第6話 初めての事件 3

前書き


事件の結末は、如何に?


猫使い爆誕www



近況報告に表紙イラストを掲載しました。

*****************


(アーク視点)


皆さんこんにちは。

ケイトお嬢様専属執事のアークです。




俺は数年前まで某国のスパイとして活動していたが、現在はユイナーダ王国のボルネオール侯爵家に仕えている。




今回は久しぶりに、俺の前職の特技が活かされる案件が起きた。




現在、お嬢様方発案の【泥棒カラスモドキ及びテイマー捕獲作戦】を実行する為、隠れているところだ。




今回の作戦の相棒も、何処かに隠れているのだろうが、俺からは解らん。

何しろお嬢様方曰く、【ケットシーの血を引く希少種】だそうだからな。




本当だったらマニアの間で高値で取引される猫だ。




そんな事を考えながらケイトお嬢様の部屋の窓を見張っていると、狙い通りカラスモドキが中に入って行き、囮りのスプーンを咥えて飛んで行った。




お嬢様の某読みセリフを合図に、相棒も動いているはず、俺も追いかけるとするか。

下ではわざとらしく、何人かの使用人が追いかける振りをして注意を引いてくれている。




追跡されているのに気付いていないようで、カラスモドキは寄り道もせずに、真っ直ぐテイマーの元に帰る様だな。




向こうも自分のスピードに着いて来れる人間が、いるとは思っていないだろう。




おや?この方向は、港の方?

まさか、犯人は盗んだ貴金属を持って、船で国外に逃亡するつもりだったのか!?




まずい、確か明日の朝、他国に出航する船がある。

今日を逃すと、捕まえられないかも知れん!




案の定カラスモドキは、港近くの安宿に入って行った。

そっと部屋に近づくと、男の声がした。




「チッ!大した物じゃねぇな!流石にもう、此処らが潮時か。」




中に居る男が、カラスモドキのテイマーの様だ。

様子を伺っていると、男はさらに独り言を続けた。




「明日、早朝の船でこの国を出るか……。

それにしても『クロ』、お前は良い拾い物だったな。

弱ってたお前を助けてやったんだから、感謝しろよ♪

【黒いイロガラス】なんて、群れの中じゃ目立って仕方ないからなぁ。

逆にカラスの中に紛れたら、誰も【イロガラス】とは思えない。

それを使った泥棒とかオレ様、頭良いぜ!」




やっぱり明日、この国を出るつもりでいたか。

それにしても、この男…自分で犯行手口バラすとか、実は馬鹿だろう。




男を狙うなら今夜。

寝静まってからだな……

流石に魔鳥の【イロガラス】でも、夜目は利かないし。




深夜、俺は男の部屋の窓を開けて忍び込んだ。

まず、囮りのスプーンと奥様のペンダントを探す。

アレは、大事な証拠品だ。




案の定、荷物に入れてあった。

それにしてもコイツ、油断しすぎじゃないか?

ま、いいか。

仕事が楽なのは良い事だ。




と、思っていたがベッドの下から『ニャ~』と猫の鳴き声がして相棒が這い出て来た。

どうやらずっと、ベッドの下に隠れていたらしい。




そういえば、ケットシー※1の特性に【スリープ】が使える。

と、いうのがあったな。




コイツが起きないのは、その所為か……




ところで、相棒よ……

お前が咥えているその黒い物体は、もしかしなかくてもカラスモドキか?




まさか、殺してないよな?




『フゥー!』

取られまいとしてこっちを睨み、毛を逆立てて威嚇してくる相棒……




イヤ、取り上げないから!

大事な証拠なんだから、もう少し丁寧に扱ってくれると嬉しいんだが。




俺は男が寝静まるまでの間に、調べ挙げた罪状を書いた手紙を付けて、逃げられない様に半裸です巻きにし、衛兵が気付くのを確認してから屋敷に戻った。




翌日の朝、誰の仕業か港近くの衛兵詰所※2の前にパンツ1枚です巻きにされた男が、その罪状を書いた手紙と証拠品、【黒いイロガラス】の羽根と一緒に、転がされていたという。




【その頃の侯爵家】


(ケイト視点)




「重い……。」

朝…起きようとしたら体が重くて動けなかったの。

まさか、この歳で何かの重病?




『ゴロゴロゴロ』

違いました。

シルバーが胸の上に乗っていただけでした。




昨日、カラスモドキの追跡に行かせたこの子が機嫌良くここに居る、という事は『作戦は成功した』という事ね!




シルバーを褒めてあげようとして、私は枕元の黒い物体に気が付き、思わず悲鳴をあげそうになりました。

良く見ると若干羽根が、毟られていますが生きているみたいです。




『しかし、ここで悲鳴をあげ、【猫のお土産】を否定してはいけない。』

と、母様から借りた【正しい猫の飼い方】に書いてあった事を思い出しました。




私は慎重に起き上がり、まずシルバーを褒めるところから始める。




「流石はシルバーです。

私のお願い通り、くれたのですね。

ありがとう♪」

と、笑顔で褒める。




『ニャオ~ン♪ゴロゴロゴロ♪(褒めて♪)』




「そう、

偉いわ♪」




シルバーの言葉が、はっきり解ります。

若干引き攣りながら、褒めると嬉しそうに喉を鳴らして甘え来て可愛いです。

重いですけど……




前から多少は意志の疎通が、出来ていたとは思っていましたけど、どうやらシルバーからテイマーとして認められた様です。




こうして私は【猫使い】デビューを果たしたのでした。




****************


※1

ケットシー


この作品では、ケットシーは、【スリープ】の魔法が使える。という設定。




※2

衛兵詰所


現在でいう【交番】の様な物。

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