ラファ空爆とパレスチナ問題
イスラエルのラファへの攻撃に抗議するデモが日本各地で行われたらしい。Xでもデモポストが大量に投稿されていた。
日本のデモでは、日本政府がイスラエルに停戦を要求することや、イスラエルに経済制裁を課すこと、ガザ地区への経済支援を再開することなどを要求している。
……デモに参加している人達は、パレスチナ問題を理解しているのだろうか。
まずは、現在起きている、ガザ地区への攻勢の経緯についてざっと触れておく。
現在、パレスチナ自治区には2つの勢力がある。ヨルダン川西部はファタハが仕切っており、ここは和平派。
ガザ地区はハマスが仕切っているが、ここは抗戦派である。
ハマスはイスラエルに対してロケットを発射するなどして攻撃を仕掛け、それに対してイスラエル軍が報復を行う、ということが度々起きていた。
今回のガザ地区への攻勢のきっかけとなったのは、ハマスが大勢の民間人を拉致したこと。
イスラエル軍は何度も人質奪還作戦を行ったが、どれも失敗。
ついにキレたイスラエルは、人質を返さないなら、ガザ地区に侵攻して、お前らの民間人を虐殺してでも人質を奪還する、と宣言したわけである。大っぴらにそう言ったわけではないが、まあそういうこと。
ラファは、イスラエルがガザ侵攻直前に、「イスラエル軍は北から侵攻するから、民間人は南に逃げろ」と言った、その南部にあたる地域。
逃げろと言った地域に攻勢を仕掛けているので、各国から非難されている。
しかし、イスラエルからすれば、ラファに侵攻しないと人質は取り戻せない。
さて、この問題、イスラエルとハマス、どちらが悪いでしょう。
パレスチナ問題自体は複雑で、そう簡単に結論は出せないが、この件に関してはハマスのほうが悪い。ハマスが人質を解放しないから、自分のところの民間人にも被害が及んでいるのである。
イスラエルはやり過ぎだが、自分の子供が拉致られたら、熊や虎だって凶暴になる。それは人間も同じことである。
アメリカだってつい最近、米兵が3人殺されたからといって、報復としてイラク・シリアに空爆していた。君、人のことが言えるのかね。
北朝鮮に自国民を拉致られてもヘラヘラしている国は珍しいのである。
で、デモ参加者は、ガザ地区の子供が空爆で虐殺されるのはかわいそうだけど、ハマスに拉致られた子供はどうなってもいいってことなのだろうか。
大っぴらに爆殺されるのはかわいそうだけど、密室で虐待の末に殺されるのはいいってこと?
それは児童虐待に甘い日本らしい考えではある。
ついでなので、ここでパレスチナ問題についてざっくりとおさらいしておこう。
かつて、パレスチナにはユダヤの王国があった。
しかし2000年ほど前、ローマ帝国に滅ぼされ、ユダヤ人は散り散りとなる。
ユダヤ人はヨーロッパの各国に散らばったが、キリスト教にとってユダヤ教徒は「イエス・キリストを磔にして殺した奴」なので嫌われている。
また、彼らは商才があるらしく、どこでも商売で成功していた。それで妬まれることにもなっていたようである。
これは、華僑や日系人もしばしばアメリカなどで経験していることである。
しかし、妬まれ、蔑まれながらもユダヤ人は成功し、ついにはヨーロッパを牛耳るほどの財閥、ロスチャイルドが生まれる。
第一次世界大戦時。イギリスはオスマン帝国を倒すために、パレスチナに住むアラブ人に武装蜂起を呼びかける。
と同時に、ロスチャイルドから資金援助を受けたいために、「援助してくれたらパレスチナにユダヤ人居住地の建設を許可する」と約束する。有名な二枚舌外交である。フランス・ロシア帝国との密約も含めて三枚舌外交とも言われる。
ユダヤ・アラブ軍はイギリス側についてオスマン帝国と戦い、ついにはオスマン帝国を打倒する。
こうしてパレスチナは帝国から解放されたわけだが、約束にしたがって、ユダヤ人が流入してくるようになった。
当初は一緒に戦った仲、ということで仲良くしそうな雰囲気もあった両者だが、だんだんと険悪になっていく。
その理由はもっぱら、ユダヤ人に土地や仕事を奪われるという危機感だったようである。
現在のアメリカや欧州における移民問題と置き換えれば話はわかりやすいだろう。
パレスチナはもともとオスマン帝国領だったわけで、ユダヤのものでもアラブのものでもなかった。それをイギリスがぶんどって分けてやったんだから有り難く思えよ、仲良くしろよ、というのがイギリスの言い分。
しかし、アラブ人にしてみれば、彼らはずっとパレスチナに住んでいるんだから自分たちの土地だと思っている。
そしてユダヤ人も、2000年前にはユダヤ王国のあった土地なんだし、イギリスとの約束もあるんだから住んでもいいだろと思っている。
そのうち、アラブ人とユダヤ人との間で紛争が起きるようになり、イギリスは、「どうやら、こいつらの住む場所は分けたほうが良さそうだ」と思うようになった。
第二次大戦後、国連決議によって、パレスチナはユダヤ人領とアラブ人領に分割された。
この国連決議を強く後押ししたのはアメリカだった。イギリスはもう、パレスチナから手を引きたくて、この決議は棄権している。
この辺がイギリスの狡猾なところ。この問題を引き起こしたのはイギリスだが、ぎりぎりのところで責任を回避し、アメリカに押し付けたのである。
アメリカは一見強くて賢そうに見えるが、わりと馬鹿な一面がある。馬鹿だから無意味に中東問題に首を突っ込んで、イスラム過激派から恨みを買い、9.11を引き起こすことになる。
アメリカがなんでこんな問題に首をつっこんだかというと、ユダヤ人に恩を売ることがアメリカにとってメリットになるからでもあるし、アメリカからユダヤ人を追い出せるからでもあったようである。
なんか知らんがユダヤ人はどこでも嫌われており、みんなパレスチナに行ってくれたら好都合、というのが欧米諸国の考えだったようである。
この分割決議には、ユダヤ人からも、アラブ人からも不満の声があったが、特にアラブ側は強硬に反対した。彼らは「パレスチナ」というひとつの国を作ることを要求していた。イスラエルとかいうわけのわからん国を勝手に作るなと。
というわけで、イスラエル建国の翌日から、アラブ諸国による侵攻が始まった。これが長く続く中東戦争の始まりである。
イスラエルは当初、防戦一方だったが、第三次中東戦争になると様相が一変し、逆にアラブ人領に攻め込むようになった。
こうしてイスラエルは、パレスチナの8割を支配するようになった。
アラブ側は国連で、イスラエルに対して非難決議を提出するが、アメリカが拒否権を発動して採択されず。
国連が決めた領土を超えて占領行為を行うのは国際法違反だが、それを言うなら、先に攻めてきて、イスラエルを滅ぼそうとしていたアラブ側も国際法違反である。
自分が都合がいい時は国連を無視して、都合が悪くなったら国連に泣きつこうとするのはどうなんかね、と思わんではない。
というわけで泥沼化したパレスチナ事情だが、1993年にオスロ合意が交わされ、一時はイスラエルとパレスチナ自治区は平和的解決へと向かう素振りを見せた。
しかし21世紀に入ってイスラエルが右傾化し、ガザ地区に壁を作るように。
これによってガザ地区からのイスラエルに対するテロ行為は大幅に防げるようになって、イスラエルとしては喜ばしいことだったが、ガザ地区が物理的に封鎖されたことになり、内部の環境は悪化。ますますガザ地区の住民のイスラエルへの怒りは募り、それがハマスが支持を集める要因のひとつとなっている。
私の意見としては、この問題に日本が関わる余地はないし、関わるべきではないと思う。
これはユダヤ、キリスト、イスラム教の問題であり、日本が関知することではない。
それに、日本が何と言ったところで、彼らは仲良くはできないだろう。彼らの間には長い恨みの歴史があるし、ユダヤ教系の宗教は、恨みを絶対に忘れないのである。
彼らは執念深いので、下手に関与して、アラブやユダヤから日本が恨まれるような事態にだけはするべきではない。そんなことになれば、日本は彼らが滅ぶまで、永遠にテロの対象となるだろう。アメリカの二の舞いは避けるべきである。
むしろ、何でもかんでも水に流せる日本のほうが珍しい。自国に核爆弾を落とした国とも仲良くしちゃうんだから、とんでもない雑草ぶりである。
プーチンは何かのインタビューでこのことを冷笑していたが、大国に囲まれている日本が生き残るには、そうするしかなかった。
核爆弾を落とした国の司令官を英雄視して迎えた日本人は、馬鹿だし愚かかもしれない。しかし、その愚かさが日本を救ったとも言える。
ユダヤ人やアラブ人は、日本人の忘れっぽさ、泥臭さを真似たほうが幸せになれるとは思うが、まあ無理だろう。
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