プーチン大統領へのインタビュー映像
タッカー・カールソンがプーチン大統領にインタビューした2時間に渡る映像がXに投稿された。
誰かが日本語訳を付けたバージョンがあったので、視聴した。
内容に、特に目新しい情報はなかった。今までのプーチン大統領の主張と同じ。
まずは冒頭で、ウクライナがロシアだとする根拠を示すため、30分に渡って歴史について語っている。
ウクライナへ侵攻しているのは、アメリカがウクライナでクーデターを工作したから、それを鎮圧するために仕方なくやっている。
NATOの侵略やアメリカのクーデター工作がない限り、ロシアが西側と戦争をすることなどありえない。
西側はこの戦争で多大な経済的損失を被っている。そんなことをやる暇があったら、自国の経済をなんとかすべきじゃないの?
本当は1年半前にはウクライナとの和平交渉が進んでいたが、米英がそれを破棄させた。
ロシアはこの問題を平和的に解決しようとしている。西側が兵器供与をやめれば、すぐにでも和平交渉が成立するだろう。
あとは、バイデンはロボット大統領に過ぎないとか、バイデンがウクライナで汚職事件をもみ消したことなどに言及している。
プーチンの話はおおむね事実だが、プーチンにとって都合良く解釈された事実でもある。
あと、プーチンにとって都合の悪いことは話していないことも事実。その点は、カールソンが追求しなかったからでもあるし、追求してもうまくかわしたからでもある。
ウクライナがロシアだとする根拠については、まあ怪しい。
そもそも今のウクライナを設定したのはソ連だし、ソ連解体時、ウクライナをロシアにしなかったのはロシアである。
西側の陰謀でそうなった的なことを言っているが、要するに自業自得としか言いようがない。
だいたい、プーチンの言う「ウクライナはもともとロシア」説が支持されるのであれば、ほぼ同じ理屈で、北方領土は日本のものだからさっさと返すべきである。
なぜロシアがウクライナを設定したかというと、あんまりおいしくない土地だったから、というのが大きい。対西側の緩衝地帯としてウクライナは重要だが、ロシアが管理するにはコストがかかる。特にソ連崩壊時、ウクライナではチェルノブイリ原発事故が起きた後だった。
だからウクライナを他国ということにしておいて、外から傀儡政権で操作する形を取ったほうが、ロシアにとっては都合が良かったわけである。
アメリカがウクライナでクーデター工作した云々の話は、事実っちゃ事実。ただ、ロシアに都合の悪いことは言っていない。
もともとウクライナは政局が不安定だが、だいたいはロシアの傀儡政権によって運営されていた。彼らは汚職まみれでろくに仕事をしない。
だから、国民の中に、ロシアの汚職傀儡政権なんてうんざりだというムードが生まれたわけである。
そこにアメリカが付け込んだ、というのが実情。そしてそれはある意味、ウクライナ国民が望んだことでもあった。
ロシアはウクライナをもっと大事にするべきだった。それを怠ったからゼレンスキー政権なんかが誕生してしまったわけである。
ゼレンスキーは、政権発足当初は経済問題に力を入れていたが、それが失敗して支持を失いかけると、ミンスク合意を無視して東部地域に攻撃を仕掛けたり、クリミアを奪還するとか、NATOに加入するとか言い出して、ロシアを挑発した。
これがロシアのウクライナ侵攻を促したかどうかは微妙なところだが、まあ、ウクライナがロシアにケンカを売ったことは事実である。
ただ、プーチンは、このミンスク合意への違反よりも、「もともとウクライナはロシアで、ロシア内で起きたクーデターを鎮圧する」という名目で今回の戦争を起こしている。その大義名分は、世界では認められないだろう、ということは、前回の記事でも書いた。
私がプーチンだったら、ミンスク合意への違反を口実にしたはずである。ミンスク合意にはEU諸国も関与しているから、その合意に違反したことを盾にすれば、EUも文句を言いにくい。
そうせず、ソ連領土の復興とか、ナチスみたいなことを言い出した辺りに、プーチンが耄碌したと思わせる節があるわけである。
ポーランドやラトビアに侵攻する意志がないと発言したのは、本意だと思いたいが、と同時に、インタビューでは怪しい発言もしている。特に必要もないのに、ポーランド分割について言及しているのである。
普通に考えて、ロシアがポーランドやラトビアに侵攻することはありえない。そんなことをすれば第三次世界大戦が始まってしまい、ロシアもただでは済まない。
しかし、プーチンはこのインタビューで、ポーランド分割について触れている。
ナチスドイツがポーランドに侵攻したのは、ポーランドがダンツィヒ返還を拒んだからだ、と発言している。
これ自体は事実だが、問題は、ダンツィヒがドイツ領だとする根拠は、ロシア、プロイセン、オーストリアによるポーランド分割にあること。
ダンツィヒは中世にドイツ騎士団が征服し、ハンザ同盟に加わったが、その後、ポーランドがドイツ騎士団を打ち破り、ポーランド領となった。
それからしばらくはポーランド領だったが、18世紀にロシア、プロイセン、オーストリアがポーランドを滅ぼし、ポーランド領は3国によって分割される。このとき、ダンツィヒはプロイセンの領土となった。
しかし、第一次世界大戦でドイツが敗戦し、帝国が崩壊すると、帝国によって滅ぼされたポーランドは復活する。そして、ダンツィヒは、一応は中立と設定されたが、実質的にはポーランドが支配する領土となった。
ナチスは、第一次世界大戦の結末は不当なものだと主張しているわけなので、当然ダンツィヒはドイツ領だと思っている。だから返せと言ったわけである。
プーチンが大した理由もなく、わざわざポーランド分割について言及するのは、ロシアはナチスと同じことをしているし、これからもするという意思表示だと捉らえられてもおかしくない。
そしてそれは、ウクライナがネオナチだと非難している彼の説にとって都合が悪い。
おそらくプーチンは、そのことに気付いていない。だから、自分がナチスと同じことをやっていると捉えられてもおかしくない、妙な主張を繰り返すのだろう。
以前のプーチンだったら、さすがにこんな発言はしなかったと思われる。インタビュー中のプーチンは一見まともそうに見えるかもしれないが、私は、だいぶおかしな人になったなと思った。
なお、プーチンは以前、クリミアには侵攻しないとか言ったりしていたから、彼が嘘つきなのは間違いない。そもそも政治家は嘘つきだし、彼らの言うことを真に受けるべきではない。
このインタビューで、ロシアが他国に侵略しない理由として、ロシアはすでに広大な土地と資源を有しているから、と言っているが、だったら日本に北方領土を返せばいい。彼の言うことは一見もっともそうだが、実際は多分に嘘が混じっている。
領土が広いから他国に攻め込まないなんてのは嘘もいいところである。
人間の欲にはきりがなく、金持ちはもっと金が欲しくなるし、大国は持っと領土や資源が欲しい物なのである。これで充分などとという心境には絶対にならない。そうして自滅するのが人間という生き物である。
もっとも、これは地球上のすべての生物に言えることだが。地球の生命は節度を知らない。繁栄するだけ繁栄して自滅することしかできないようにできている。
和平交渉を米英が決裂させたのは事実。ただ、そもそもゼレンスキーに戦争をやめる気なんかないから、どっちにしても決裂しただろうとは思う。
それに、そもそもこの交渉は、ロシア側とウクライナ側で折り合いが付いていない。もうちょっとで合意に至りそうだったとか、そんな感じでもなかった。
特に、ウクライナ側はロシア軍のウクライナからの撤退を強く望んでいるが、ロシアは進駐軍を置きたがっている。この辺での折り合いが、今のところまず無理である。
プーチンのこの辺に関する発言は、日本人にわかるように言うなら、ハル・ノートを飲みさえすれば、日本はアメリカと戦争をせずに済んだ、と言っているようなもの。
そりゃそうだし、その方が良かったかもしれないが、実際問題として、それが飲めるのか、ということである。
バイデンのウクライナにおける汚職云々については、ロシアがウクライナに侵攻する以前から、私も聞いたことがある話である。事実確認は取っていないが事実っぽい気はする。
プーチンがバイデンを批判したのは、アメリカの分断を促すため。アメリカ国内が揉めている方がロシアとしては都合がいい。
西側がこの戦争への関与で損をしているのは事実だが、ロシアだって大損している。
西側も、こんな戦争にもうこれ以上金を掛けたくないと思っているだろうが、それはロシアも同じ。だから、さっさと手を引けと言っているわけである。こっちも苦しいから。
この戦争はもともとチキンレースである。どっちかが音を上げるか、崖からダイブするか、という勝負。
この戦争に日本が金を出すことの是非は、なかなか難しいものがある。ぶっちゃけ日本にとってウクライナなんかどうでも良く、ウクライナ人がどうなろうが知ったこっちゃないだろう。
個人的にそう思っているわけではないが、国家戦略を考える時に情を挟むべきではない。
しかし、この戦争の決着の付き方如何では、中国の台湾侵攻が現実になる可能性もある。アメリカがウクライナを見捨てたとなれば、台湾も見捨てるだろうと踏んで中国が侵攻を開始する可能性がある。
実際、トランプ政権ならその判断をしそうな雰囲気もある。
そうなると日本も無関係とは言えなくなってくる。
金を出してこの戦争を長引かせることは、日本にとってメリットがあるかもしれないわけである。
一方で、この戦争に加担することは、ロシアとの関係を悪化させることになり、それは実際に影響が出ている。
ただ、日本の立場としては、この戦争でロシア側に付くことはできない。西側に付くしかない。
となると、できることは、いかに少ない支出で最大の利益を得るかを考えるくらいだろう。
そうした狡猾な頭脳を岸田政権が持ち合わせているのかは非常に疑問であり、そこが問題なわけだが。
必勝しゃもじをあげたりする間抜けなパフォーマンスも、それでご機嫌を取って支出が抑えられるならいいのだが、なんかどうも、打算があってやっているように見えないところがとても不安。
もっとも、日本は伝統的に外交がヘタクソだから、岸田政権じゃなくても結果に大差はなかったとは思う。
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