カクヨムの星

 ここ数日、タブレット(Fire HD)はあるけどキーボードはない、という状況で時間を潰さなければならないことが度々あった。


 具体的には、寒すぎて暖房のそばから離れられず、寒い部屋に置いてあるキーボードを持ってくるのが億劫だった。


 キーボードがないからエッセイとかを書くこともできなかったので、この機会にカクヨムで他の人の作品を読んでいた。



 私は星を付ける時、できればコメントを添えたいと思っているが、私は当たり障りのないコメントを書けないので、本当に書くべきかどうか、書くとしたら何をどう書くかを検討するのにめちゃくちゃ時間がかかる。よく知らない人向けに書く場合は、だいたい8時間から数日かけるのが普通。


 しかし今回は、なにしろキーボードがなかったから、初めからコメントについて考えなくていい。

 とにかく読んで星を付けるだけ。めちゃくちゃ簡単である。


 というか、もうこれで良くないかと思う。


 作者が欲しいのは面倒くさいコメントではなく星なんだから、黙ってとっとと配り、今まで「コメントどうしよう」とか悩んでいた時間で他の作品を読んでさらに星を付けたほうが、誰にとっても得な気がする。


 小説を書く人は、しばしば精神を病んでいるので、コメント無しで星だけ付けると、お返し目当てのスパムなんじゃないかと疑われることがある。

 せっかく星を付けているのに悪く取られたら馬鹿らしい気もするが、それはいちいち気にしてもしょうがないだろう。



 カクヨムの星は投票権やクーポンと同じで、使わないと意味がないし、使わないだけ損になる。


 ミシュランの星は、簡単には付けないことで信頼と権威を増している。簡単には付けないから「あのミシュランが星を付けるんだから、さぞ素晴らしい店なんだろう」と思うわけである。


 しかしカクヨムの星は、渋る人の星もバラ撒く人の星も同じ価値。渋っても何もいいことがない。むしろ渋るほど、バラ撒く人の星の価値が上がるだけだったりする。



 そして、星を付ければ自分の好みの作品が活性化するし、それが長期的には、自分の作品にとっていい環境を作ることにもなる。


 ニッチな作品を書く人は星を渋る傾向にあるが、本当はむしろ逆で、とにかく星をバラ撒いて環境作りをしないと話にならない。

 我々が星を渋っている間に、テンプレ小説の読者は何も考えずに大量の星をバラ撒いているのである。



 ただ、カクヨムの星の価値は、本来よりも高く見積もられ過ぎているところがある。


 カクヨムの星評価は、小説家になろうのシステムをパクったものだが、小説家になろうでは、ランキングからの読者流入の影響が大きいから、ポイントを稼ぐことは重要になる。


 一方、カクヨムのランキングは動線として頼りない。ランキング上位に着いても、意外とPVが増えなかったりする。


 これは実際にランキング上位に食い込んだことがある人ならわかると思う。

「これで儂の作品もめちゃくちゃ読まれるようになるわい。ヒッヒッヒッ」とか思っていても、実際は想像以上にPVが増えない。


 そして、ある作品がランキング上位になったからといって、自分の他の作品が芋づる式に読まれるようになるわけでもない。

 たいがいの人は、ついでに他の作品も読んだろうとは思わないようである。


 異世界ファンタジー、現代ファンタジーで上位になった場合はどうかわからないが、そもそもあの辺のジャンルで上位になるほど星を稼ごうとしたら、そのためにまず相当数の読者を集めなければならないはず。

 つまり、ランキングとは別の動線をすでに確保している作品でないと、あのランキングには乗らないはずである。


 だから本当は、星はそこまで重要とは言えない。

 他の人に星を付けまくって環境を活性化させることは大事だが、自分の作品に星が付くことには、さほどこだわらなくてもいい、ということである。



 余談だが、10万PVを越えているような作品って、どんな営業してるんかなと思って、いくつか見て回った。


 まず、何百万PVとかの作品は、だいたい書籍化している。

 書籍化しているからPVが多いのか、PVが多いから書籍化したのかは、今となってはもうわからない。

 星は4桁はあるが、そんなにめちゃくちゃ多いわけでもない。1000ぎりぎりで800万PVとかいうのも結構ある。


 10万PVクラスになると様相は様々。

 中には、他の作者との繋がりもなく、近況ノートも書かず、なろうやXもやっておらず、スコッパーに紹介されたわけでもないのに、何10万も読まれている作品もある。

 どこから読者を引っ張ってきたのか、全くの謎。


 で、そんなに面白いんかと思って読んでみても、あまり読まれていない作品と大差ない。

 私がその手の作品に興味がないから差異がわからない、というのもあると思うが、それにしても、読まれる作品と読まれない作品には、そこまで大きな違いはないように見える。


 強いて言うなら、作者の熱意が違うかもしれない。読まれている作者の方が、なんか淡々としていることが多い。いまいち楽しんで書いている感じがしない。それは本文からも、読者コメントへの返信などからも伺える。



 私の月々のリワード結果からすると、だいたい1PVは0.05円くらいのようである。月によっても違うが。

 10万PVだと5000円。


 この程度の収入のために、楽しくもないのに小説を書くのもどうなんだろうと思わんではない。本当に楽しんでないかはわからないが。


 意外とこのくらい中途半端にPVがある方が辛いのかもしれない。大して儲からないけど、やめるわけにもいかない雰囲気。



[2024.01.02 追記]

 カクヨムコン短編賞のランキング上位に、長編への誘導目的の釣り作品が入っていた。

 PVが多いのは、釣りに引っかかった人が読むわけだから、まあわかる。しかし、こんなのに星が200とか付いている。


 あれを見てるとますます、星を渋ってる場合じゃないよなと思う。



 私の読書データによると、年末にかけて200作ほど読んで、そのうち40くらいに星を付けた。付き合いのある人の作品は除く。

 そのほとんどは短編かエッセイ。長編はどうしても挫折しがちで、なかなかちゃんと読めない。



 そのうち、星を返した来たのは2人。

 これは予想通り。むしろ誰も返して来ないと思っていた。


 カクヨムでは星爆(作品を読まずに星を大量にバラ撒いてお返しを期待する行為)が問題になった過去があり、また、そういう人の中には、お返しの星を付けると、付けた星をわざわざ取り消すマメな人がいる。

 そのため、無言で星を付けて来るよくわかんない人に対する警戒が厳しい。コメント無しで星を付けると、感謝されるどころか、営業かもと警戒されるのがカクヨムの現実である。


 星を付けてもこんなもんだから、ハートだけ付けて営業するのがどれだけ効率が悪いか、わかるだろう。



 エッセイのランキング上位作(トップページ掲載)のPV増加数を確認する機会があったが、やはり驚くほどPVは増えていなかった。

 トップページ掲載効果は、だいたい1日あたり10人増くらいだった。星の効果がいかに薄いかがわかる。


 これはジャンルにもよるだろうが、しかし、それにしても、カクヨムのトップページに載ってこの程度の効果しかないのは致命的だと思う。


 というわけで、カクヨムで星を集めるのは効率がいいとは言えないし、星をあまり気にしてもしょうがないわけである。星やランキングに頼らない動線作りが必要。


 本当は、この辺はもっとなんとかしてほしい。営業に煩わされず、投稿したらそこそこ読んでもらえるサイト作りをしてほしいもの。

 だが、カクヨムの運営は、この現状をヤバいと思っていないからどうにもならない。

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