Riverside "ID.Entity"/Spheric Universe Experience "Back Home"/WARMEN "Here For None"
私は最近新規バンドの発掘をサボっていたが、アルバムを全く買っていなかったわけではない。数は少ないが。
というわけで、ここ近年で買ったアルバムで主要なものについて、ざっと紹介しておく。
なお、ここで挙げていないので買ったものとしてはA.C.Tの"Falling"がある。これは真野魚尾さんのところで取り上げられていたから割愛する。……その理由は変な気もするが。
軽く触れておくと、A.C.Tが好きなら当然買いだし、言われずとも当然買ってるだろう。
A.C.Tを聴いたことがない人には、私は"Circus Pandemonium"を勧めておく。A.C.Tは総じて質がいいからどこから聴いてもいいと思うが、たぶんこれが今のところ一番いいアルバム。
しかしなぜかSpotifyにはないから、個人的に好きな2ndアルバム"Imaginary Friends"の方を紹介する。これは私がA.C.Tを聴くきっかけになったアルバムである。
……久々に聴いたけど、やっぱり好きだわ。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/3mS9e3eOoHpeMpGrDLtgM1
(A.C.T "Imaginary Friends")
●まずは、Riversideの"ID.Entity"。
当該アルバムのSpotifyのアドレスはこちら。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/5IwfPBHpdtll3jSrGG2XxC
Riversideはポーランドのプログレ(メタル)バンド。"ID.Entity"はその8thアルバム。2023年1月発売。
私は基本的にバンドのファンにはならないように努めている。曲単位で好きということはあっても、バンドの曲が全部好きということはない。
例外はRiversideだけで、なぜか知らないが、結構バンドの方向性が大きく変わったりしたこともあったにも関わらず、どのアルバムも好きだったりする。
A.C.Tも全曲好きだが、あのバンドは一貫して同じスタイルでやっているから、全曲好きでもそんなに驚くことはない。
しかしRiversideは、もはやロックでもプログレでもなんでもない、アンビエントテクノアルバムとしか言いようがない"Eye of the Soundscape"ですら好き。私はテクノが結構好き(ただ、純粋なテクノではなく、ゲーム音楽で使われるテクノ限定だが)なので、意外とこのアルバムはイケるのである。
で、本題の"ID.Entity"だが、このアルバムには複数のバージョンがあって、どれを買っていいかわかりにくい。私は慎重に検討した結果、国内盤を買うのがベストだと判断した。
海外盤の通常盤はいくつか収録曲が抜け落ちており、全部聴きたいならデラックスエディションを買わないといけない。これは今やプレミア価格がついている。
一方、国内盤は、デラックスエディションのみに収録されている曲がボーナストラック扱いで収録されている。デラックスエディションと国内盤の違いは、シングルカットされた曲が入っているかいないかだけ。
というわけで、Amazonとかで注文する場合は、「ID.エンティティー」とかダサいカタカナで表記されたバージョンを買うといいだろう。
国内盤の方が安価で良心的というのは珍しいパターンである。
最近のRiversideは、2016年にバンド創設者の片割れであるPiotr Grudziński(Gt)を病気で亡くして以来、もともと鬱系の曲を書いていたのがますますその傾向が強まり、若干元気がないのが心配だったが、どうやら本作でようやくそれを振り切ったようである。サウンドに"Anno Domini High Definition"の時にあったアグレッシブさが少し戻っている。
近年のアルバムは「プログレメタル」と分類するには重さがなさすぎるかな、と思うところがあったが、本作はまあ、メタルと言っても差し支えないだろう。
Riversideのファンの多くは1stアルバムを至上としており、そういう人からすると、本作のアグレッシブさは気に入らないと思う。そういう人は残念だが、ずっと1stを聴くしかない。
しかし、今までずっと付いて来られた人なら、このアルバムの多様性、雑多さが気に入るんじゃないかと思う。1stの頃のテイストもあるし、"Anno Domini High Definition"の頃のアグレッシブさもあり、"Eye of the Soundscape"のアンビエント系サウンドもある。そしてそれらがうまく曲としてまとめられている。
そして、単なる今までのRiversideの集大成というだけでなく、鬱の中にも希望があるような、ちょっと明るめのサウンドが混ざっていることが特徴。この変化はなかなかいい。鬱曲ばかりだと限界があるので。
なにしろ私はRiversideの曲で嫌いなものがないので、このアルバムの良し悪しを客観的に評価するのは難しいが、たぶん結構いいんじゃないだろうか。極端になにかに走っておらず、バランスのいいアルバムだと思う。
ただ、Riversideを初めて聴く人に勧められるかというと、それはなんとも言えない。Pink FloydやPorcupine Tree系のサウンドが好きな人なら好きという可能性はあると思うが、一般的にはまず1stアルバム"Out of Myself"を勧める。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/58W421bamfVQPu247cGUN8
(Riverside "Out of Myself")
私としては"Anno Domini High Definition"を勧めたい。このアルバムはRiversideの中で最もアグレッシブで、最もメタルしていたアルバムだった。プログレメタル経由でこのバンドを聴くなら、ここから入ったほうがいいと私は思う。このバンドとしては異色のサウンドではあるが。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/2BJkbdmzqURLLnS6xQBmlA
(Riverside "Anno Domini High Definition")
ところでこのアルバム、フルアルバムだとずっと思っていたのだが、なぜかSpotifyではEP扱いになっている。確かに5曲しか入ってないけど、45分あるんだから、フルアルバムと言ってもよくない? ダメなのかね。
●次はSpheric Universe Experienceの"Back Home"。
当該アルバムのSpotifyのアドレスはこちら。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/4udJEN75E1qpyhOrX6gmxu
フランスのプログレメタルバンド、Spheric Universe Experienceの5thアルバム。2022年作。
Spheric Universe Experienceは、4thアルバムの"The New Eve"が2012年に出たきり、長いこと音信の途絶えていたバンド。
音沙汰がないからもう解散したのかと思っていたら、10年越しでアルバムを出してくれた。
アルバムのデキに関しては安定の内容。相変わらずメロディは爽やかな泣きの美旋律を奏でつつ、演奏はテクニカル。
以前と比べると演奏は複雑になり、よりテクニカル志向になっているが、メロディのシンプルさと美しさは維持したままとなっている。
ただ、今までと違った傾向の曲も、特に後半のトラックにある。
Tr9"The Absolution Pt1"、Tr10"Pt2"のように、オケを使った大仰な曲がある。聴く限り、たぶん本物のオケではなくシンセオケだと思うが、それは別にどっちでも構わない。
Tr11"Rebirth"もシンセオケを使っているが、それよりも重要なのはインスト曲ということ。これも今までには確かなかったはず。
そこから続くTr12"Of the Last Plague"は、Dream Theaterの"Six Degrees Of Inner Turbulence"あたりにありそうな、リフをザクザク刻んでいくタイプの速い曲になっている。これは前作"The New Eve"のTr8"Self Abuse"、3rdアルバム"Unreal"のTr9"Tomorrow"と、毎回アルバムの最後の方のトラックで似た感じのをやっていたから、このバンドの伝統なのかもしれない。
しかし、Dream Theater本家と違って、やっぱりこういう曲をやってもメロディアスなのがこのバンドらしいところ。実は本家よりこのバランスのほうが好きという人は結構いるんじゃないかと思う。
今までのSpheric Universe Experienceから大きく変化したわけではないが、いろいろ新しい試みもしていて、懐かしさと新しさのバランスの取れたアルバムだと思う。なにより、さすがに長年活動しているだけあって、全体に巧くなっている。
このバントに関しては、初めて聴く場合でもこの最新作からでいいと思う。
●最後はWARMENの"Here For None"。
当該アルバムのSpotifyのアドレスはこちら。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/0QDm4iN6f0rZTy1TIBV3On
WARMENは元Children Of Bodomのキーボーディスト、Janne Wirmanのソロワークプロジェクトバンド。"Here For None"は6thアルバム。2023年8月発売。
もともとこのプロジェクトは、アルバムごとにゲストを招いてChidren Of Bodomではできないタイプの曲をこっちでやる、といった感じで、インスト多めのキーボード弾きまくりネオ・クラシカル寄りのメタルが主体だった。
しかし、今作は明らかにそのまんま初期の頃のChidren of Bodomの曲をやっている。ヴォーカリストとしてEnsiferumのPetri Lindroosを迎え、ちゃんとデス声ありのメロデススタイルに。
これはChildren Of Bodomの中心人物であるAlexi Laiho(Vo, Gt)が2020年に亡くなったことと無関係ではないだろう。明らかにこれはAlexiの追悼アルバムである。今後この路線でずっと行くつもりなのかどうかは不明。
情報として確かなのかはわからないが、どうやらPetri Lindroosは正式メンバーとして加入しているらしい。ということは、今後こっちでChildren Of Bodomな曲をやり続ける……ということなのか?
詳細は不明だが、ともかく、本作のサウンドは先にも書いたように初期のChidren Of Bodomのスタイル。北欧系のキラキラサウンドとデス声というアレである。
もちろん、ヴォーカルやギターはAlexiではないから、やはりChidren Of Bodomとは決定的な部分で異なる。ただ、今そんなことを言っても始まらないだろう。
私は近年のChidren Of Bodomは聴いていなかったが、それはメロディが弱くなり、このバンドならではの魅力が薄れたことが原因だった。
今作のWARMENの曲は、あのときのメロディが復活している。Alexiがいないのがかなり痛いのは事実だが、再び昔のChidren Of Bodomサウンドを聴けるとは思っていなかったので、これはこれで結構嬉しいサプライズだった。
私はWARMENの、好きな曲を好きなようにやってます感漂う、気楽な感じのアルバム構成が好きだったので、今後このバンドがジェネリックChidren Of Bodom的なサウンドになっていくのだとしたらちょっと残念な気もする。しかし、こんな感じの曲を求めていたのも事実で、それはそれで喜ぶべきなのかもしれない。複雑な気持ち。
……いやまあ、そもそも最近アルバムを出していなかったから、活動してくれただけでもありがたいわけだが。
なお、最後のトラックはUltravoxの"Dancing With Tears In My Eyes"のカバー。
Ultravoxはイギリスのシンセポップ系さわやかロックバンドだが、それをなぜかメロデスアレンジしている。この選曲にどういう意図があるのかはよくわからない。バンドメンバーの誰かが好きだったのだろうか。
このアルバムに関しては、かつてChildren Of Bodomが好きだった人は、追悼の意味も込めて聴くといいと思う。
Children Of Bodomを聴いたことがない人は、これを聴くよりは本家を聴いて欲しいところ。おすすめは3rdアルバム"Follow The Reaper"。デスメタルなのにキラキラしたシンセが散りばめられるという、なかなか面白いテイストである。デスメタルが嫌いでもこれは結構普通に聴けるはず。
https://open.spotify.com/intl-ja/album/6NA0J6jgJVHjmCnCMBwKH7
(Children Of Bodom "Follow The Reaper" )
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