2023年版 私の好きな曲リスト

 新規楽曲の発掘をしたついでに、2023年現在の私の好きな曲ベスト10を挙げる。

 これは歴史的な価値や思い出補正などは無視して、単純に今、私が10曲だけプレイリストに入れて聴くならどの曲にするか、という基準で選んでいる。また、同じバンドからは1曲のみ選曲することとする。


 1.Riverside "Hyperactive"

 2.The Dear Hunter "The Pimp And The Priest"

 3.OPETH "Ghost of Perdition"

 4.Joe Satoriani "Flavor Crystal 7"

 5.Frost "Hyperventilate"

 6.Tool "Parabola"

 7.Steven Wilson "Drive Home"

 8.Destrage "Jade's Place"

 9.Happy The Man "Service With a Smile"

 10.The Mars Volta "intertiatic esp"


 ……実際選んでみると、なかなか新しい曲は入らないもんである。LOVEBITESとか入れられるかと思ったが、検討してみると10曲だと入れる余地がなかった。


 リンクは公式がYoutubeにて公開しているオーディオである。一部、本当に公式かちょっとわからないものもあったが。



 1.Riverside "Hyperactive"


 https://www.youtube.com/watch?v=VLSFDxQLk0U


 アルバム"Anno Domini High Definition"収録。この曲は、私がマイベストプレイリストを作るなら絶対に入れる。要するに、一番好きな曲と言い換えてもいい。


 Riversideはポーランドのプログレメタルバンド。

 Riversideは本来もっとゆったりとした曲が多く、"Hyperactive"のようなアグレッシブな曲は珍しい。たぶんRiversideのファンの多くはこの曲は好きじゃないだろう。私は異端である。


 私はRiversideのアルバムは全て持っており、もちろん普段のRiversideも好き。"The Same River"とか"Reality Dream III"とか。

 しかし、私がRiversideから1曲だけ選ぶなら"Hyperactive"である。この曲は私がプログレメタルに求めるものの理想型に限りなく近い。


 曲そのものはそこまで複雑ではないが、メロディをリードする楽器とカウンターメロディを演奏する楽器が次々に入れ替わるために、複雑で多彩に聴こえるようになっているのが特徴。各パートのパワーバランスがよく取れている。


 特にキーボードワークが絶妙。メタルにおけるキーボードは微妙な立場で、いなくても成立するパートであり、目立とうとすると音がうるさくなるパートでもある。

 この曲におけるキーボードワークは、弾きまくっているわりに悪目立ちしておらず、そして、曲の中で重要なパートを担ってもいる。この曲はキーボード無しには成立し得ない。



 2.The Dear Hunter "The Pimp And The Priest"


 https://www.youtube.com/watch?v=ZmMSbQkooZY


 アルバム"Act I - The Lake South, The River North"収録。これもマイベストを作るなら絶対に外さない。ただ、1曲しか選べないなら"Hyperactive"を取るが。


 The Dear Hunterはアメリカのプログレバンドで、全6部からなる"The Dear Hunter"シリーズを作るために結成されたバンド。2006年結成なのでもう17年かかっているが、現在"Act V"まで発売されているので、あともうちょっとで完結するはず。

 "The Dear Hunter"シリーズ以外のアルバムもリリースしているが、アルバム全体でカラースペクトラムを表現している"The Color Spectrum"など、とにかくコンセプトアルバムを作りたいらしい。ただ、プログレバンドにありがちな1曲20分とかいう曲はなく、5分前後の曲が多い。


 このバンドの曲のテイストは独特で、何と言っていいかわからない。楽器構成はチェンバー・ロックっぽいが、チェンバー・ロックにありがちなクラシカルな要素は少なめ。

 若干憂鬱な雰囲気が漂う曲が多く、私は最初聴いたとき、イギリスか、少なくとも欧州のバンドだと思っており、アメリカだと知って結構驚いた。


 このバンドのファンという人自体をネット上でもほとんど見かけたことがなく、このバンドのファンの間で一般的にどの曲がベストとされているかは知らないが、私が一曲選ぶなら"The Pimp And The Priest"である。この曲は私の好みのど真ん中である。メランコリックだが3拍子リズムということもあってわりと軽快で、チェンバーロック風のアレンジもいいし、こもり気味の古臭い音のテイストもありながら、ちゃんと広がりのある現代風のサウンドでもある。



 3.OPETH "Ghost of Perdition"


 https://www.youtube.com/watch?v=MDBykpSXsSE


 アルバム"Ghost Reveries"収録。

 OPETHはスウェーデンのメタルバンド。アルバムごとに趣向の変わるバンドで、初期はデスメタルバンド、アルバム"Still Life"の時はゴシックメタルだったこともある。その後はだんだんプログレへと傾倒していった。


 私はOPETHだと"Harvest"や"The Lotus Eater"も好きで、1曲選ぶ時にどれを取るか迷うところだが、ここは順当に"Ghost of Perdition"を選んでおく。


 "Ghost Reveries"以前のOPETHは、悪くはないが、長くて構成が複雑すぎる曲が多くていまいちだった。もう少し冗長なところを刈り込んだらずっと良くなるのにと思っていた。実際、"Harvest"は彼らの曲の中では異例なほどシンプルだが、これがよくできていたのである。


 発売日に十字屋で"Ghost Reveries"を買って、帰りに早速、車のCDプレーヤーに入れて聴いたときのことはよく覚えている。"Ghost of Perdition"のイントロを聴いた瞬間に「うおおお! きた! ついにOPETHが神がかりおった!」と興奮したもんである。まさかOPETHがここまで化けると思っていなかった。彼らはずっと無駄に複雑な曲を書くマイナーバンドであり続けると思っていた。それが何よこれ。

 面白いが私はあのとき、イントロを聞いただけでこの曲が神曲だと悟った。10分もある曲のたった10秒を聞いただけで、なぜそう確信したかは私にもわからない。しかし、いい曲はイントロからいいものだと私は思う。入りがいまいちだがいい曲というパターンはあまり多くない。


 このアルバムの時のOPETHは、曲そのものはいつも通り複雑だったが、各フレーズがどれも神がかって良かった。どこをとっても聞き所満載で、これなら複雑で長くてもダレようがない。特に"Ghost of Perdition"は完璧な一曲であった。


 しかし、OPETHは変態なので、"Ghost Reveries"が多くの人に受けたことが気に入らなかった。その後彼らはわざと"Ghost Reveries"に収録された曲っぽいのを避けて曲を書き続け、めでたく再びマイナーなバンドになったのであった。わけわからん。



 4.Joe Satoriani "Flavor Crystal 7"


 https://www.youtube.com/watch?v=H4FVFQYKYsY


 アルバム"Engines of Creation"収録。

 "Engines of Creation"は全編デジロックなサウンドだったために、彼のアルバムの中ではあまり評判は良くない。しかし私はデジロックが好きで、サトリアーニのアルバムの中でも一番好きだったりする。


 "Flavor Crystal 7"はその名の通り7拍子の曲で、この変則的なリズムとテクノの機械的なサウンドが奇妙に混ざりあうことで独特の曲調となっている。


 私はこの曲とは奇妙な因縁がある。いつの頃だったか、私は真夜中に無意味にテレビを付けてぼーっとしていた。すると、スポーツ速報が始まってそのBGMとしてこの曲が流れた。

 私は「おお、すんげえいい曲だな」と思ったが、その時は速報番組専用に作られたBGMだと思いこんでいて、その曲が誰の何という曲かを調べようとは思わなかった。こんな曲をこんな深夜の誰も観ていないような番組のBGMとして流すだけなのは惜しいよな、CDがあったら買うのに、とは思ったが、まさか本当にこの曲が収録されているCDが実在するなんて、全く想像もしなかったのである。


 それから何年も経った後、私はロックに目覚め、片っ端から必聴とされるアルバムをネットで調べて買っては聴きまくっていた。

 その関係でジョー・サトリアーニも買うことにしたのだが、その時ネットで勧めていたのは"Surfing with the Alien"や"The Extremist"で、"Engines of Creation"はテクノっぽくてイマイチとあった。

 しかし私はテクノとロックの融合した曲が結構好きだったので、いけるんじゃないかと思い、"Surfing with the Alien"などをCD屋で注文するついでに"Engines of Creation"も注文することにした。そして、あの時聴いた曲と運命的な再開を果たすのであった。



 5.Frost* "Hyperventilate"


 https://www.youtube.com/watch?v=3MExUWJqV0U


 アルバム"Milliontown"収録。

 Frost*はイギリスのプログレバンド。Jem Godfrey(Key, Vo)によって2006年に結成され、もともとはアルバム"Milliontown"と、それに伴うライブツアー限りの活動の予定で、実際ツアー後に解散したが、その後もちょくちょく再結成してはアルバムを作り、そして解散するのを繰り返している。キーボーディストが中心となっているバンドということもあり、曲もキーボード中心。


 活動が不安定なバンドだけあって曲のデキにもばらつきがあるが、"Milliontown"収録の"Hyperventilate"と"Milliontown"のデキは秀逸で、この2曲だけでもこのバンドの意義は充分にある。

 "Milliontown"は26分35秒の大作で、これも好きだが、"Hyperventilate"は7分32秒で同等にいいので、だったら短い方を取ったほうがいいだろう。



 6.Tool "Parabola"


 https://www.youtube.com/watch?v=-_nQhGR0K8M


 アルバム"Lateralus"収録。リンク先のはMV版になっていて、アルバムとはイントロが少し違うが、ほぼ同じと考えていい。

 アルバムではこの曲は"Parabol"と"Parabola"の2曲に分かれているが、これは商業的な理由で曲数を増やすために分割しただけで、もともと"Parabol"と"Parabola"は繋がっている。この曲を聴く時に片方しか聴かない人はいないだろう。私も、この2曲は波形編集ソフトでくっつけて1曲にしてスマホに入れている。


 Toolはアメリカのプログレメタルバンド。変拍子も使うが、どちらかというとリズム自体は変えずに、ポリリズムや区切り方を変えることで擬似的にリズムが変わったように見せかける曲作りを得意としている。7/8拍子を4、3で区切ったり3、4で区切ったり。

 リフのパターンは長いこと一定であることが多く、ギターリフを頼りにリズムを取るとノリやすいが、リフとドラムの両方を聴いてしまうとポリリズムのせいで混乱しがち。


 Toolのベスト曲に何を挙げるかは、かなり割れると思う。予想では"Lateralus"を挙げる人が多そうではある。フィボナッチ数列を作曲に盛り込んだ変態曲。


 しかし、私は迷わず"Parabola"を挙げる。私はコンセプトや楽曲構成の複雑な曲を聞き慣れているから、単に複雑だからいいとは思わない。"Lateralus"は曲作りのコンセプトは面白いと思うが、聴いた時に直感的に「いい」と思うのは、やはりシンプルかつ強力な曲のほうだと思う。この曲のリフはすごくいい。


 "Parabola"は、ぱっと聴くと、同じフレーズを繰り返しているだけに感じるかもしれない。しかし、構成が見事で、曲が進むことにだんだんと盛り上がっていくようになっている。"Parabol"部分がこの曲に絶対必要なのもそのため。あれは単に長ったらしいだけのイントロではなく、ちゃんと後々の展開の伏線となっており、意味がある。あれがあるから後の展開が活きるのである。



 7.Steven Wilson "Drive Home"


 https://www.youtube.com/watch?v=ycYewhiaVBk


 リンク先はMV付き版。これは絶対MV付きで観た方がいい。


 アルバム"The Raven That Refused to Sing"収録。


 実は私は、Steven WilsonやPorcupine Treeがそこまで好きとは言えなかった。いい曲を作るとは思うし、時には素晴らしい曲もあるが、全体にはもうひとつフックが欲しいなと思うことがよくあった。少し複雑にしすぎて曲の良さを損なっていることがあるイメージ。ちょっと音楽に対して知的に構えすぎというか。


 そう思っていた私をブッ飛ばしたのがアルバム"The Raven That Refused to Sing"だった。なにこのアルバム。どの曲もPorcupine Treeより良くない? なんでこのレベルの曲をPorcupine Treeで書かないのさ、Steven Wilson。ソロワークでこんな曲書いちゃうの? むしろソロワークだから肩の力がいい感じに抜けて良くなったのか?


 このアルバムから1曲選ぶことは何の迷いもないが、その1曲を"Drive Home"にするか"The Raven That Refused to Sing"にするかではちょっと葛藤があった。でもまあ、曲全体の完成度の高さを考えれば"Drive Home"で間違いないだろう。この曲こそ最強の鬱ソングである。そして最後のギターソロが良すぎ。



 8.Destrage "Jade's Place"


 https://www.youtube.com/watch?v=h1VIJr0StfQ


 アルバム"The King Is Fat 'N' Old"収録。


 Destrageはイタリアのメタルバンド。メタルコア系のミクスチャバンドで、日本で言うマキシマム・ザ・ホルモンに似たタイプ。おバカでバカテク。日本ではジブリの曲をメタルアレンジした『プリンセス・ジブリ』に参加したことで有名だと思う。


 "Jade's Place"は彼らの曲の中では比較的シンプルで、おそらく本人達は不本意だと思うが、たぶん最高傑作だと思う。

 この曲の展開は複雑だが、フレーズとフレーズの繋ぎがスムーズで、極端に変化するわけではない。本来のDestrageは極端に変化する曲を好むが、繋ぎが極端ということは、やはり音楽的には無茶しており、良くは聴こえないものである。

 この曲はぱっと聴くとなんとなく聞き流してしまうほどスムーズ。しかし実はものずごく複雑だし、いろいろなことをやっている。私はこういう曲のほうが好きである。


 ところで、MVやクレジットを見ると、どうやらこの曲にはスウェーデンが誇る変態ギタリスト、Mattias "IA" Eklundhが参加しているようである。最後のソロを弾いているのは特徴的かつ変態的な音でわかるが、リフとかも弾いているのかまではわからない。なにしろオリジナルメンバーのギターテクも充分変態的である。



 9.Happy The Man "Service With a Smile"


 公式音源が見つからなかったのでリンクはなし。YouTubeで検索すればすぐ出てくる。聴くときはスタジオ盤をおすすめする。このバンドのライブテイクはイマイチなことが多い。


 アルバム"Crafty Hands"収録。


 Happy The Manはアメリカのプログレバンド。フュージョンっぽい、ゆったりとした曲が多いが、その中にあって"Service With a Smile"は珍しく緊張感のある曲となっている。

 全体が3/4+5/8の11拍子で構成され、イントロからずっとキーボードによる同じリフが演奏されている上でギターとキーボード主体のアンサンブルが展開される。シンプルと言えばシンプルだし、短い曲だが、私はこの曲が大好きである。


 この曲をライブで完璧にキメたらめちゃくちゃ格好いいと思うが、残念ながら残っている数少ないHappy The Manのライブ動画でこの曲を完璧に演奏できているテイクを私は観たことがない。絶対どこかでミスっている。残念。



 10.The Mars Volta "intertiatic esp"


 これも公式らしき音源は見つからなかったのでリンクなし。すぐ見つかる。聴くならスタジオ版をおすすめ。The Mars Voltaのライブは原曲からかなりアレンジしていることがあり、しかもそのアレンジがあんまり良くなかったりする。さすが変態。


 アルバム"de-loused in the comatorium"収録。


 The Mars Voltaはアメリカの変態メタルバンド。一般にはポストコアとかプログレバンドに分類されるが、私は認めない。変態メタルバンドである。私の位置付けとしては、イタリアのEvil WingsやスウェーデンのFreak Kitchenあたりと同類だと思っている。曲調は似ていないが精神が似てる。つまり変態的。

 これは別にけなしているわけではない。ただ、プログレと変態はちょっと違うので、プログレと思ってこのバンドの曲を聴こうとするのを防止するために私は区別している。

 ただ、最近のアルバムの曲はプログレと認めてもいいくらいまともになってきているが。


 アメリカのバンドなのにラテン調の強いサウンドが特徴。そして、なにかにつけて変な音を鳴らしたがる。ノイジーなサウンドが嫌いな人は、このバンドのサウンドには耐えられないかもしれない。私はノイジーミュジックも結構イケるので問題ないが。

 もっとも、今回選曲した"intertiatic esp"ではほとんど変態ノイズサウンドは使われていない。ちゃんと曲として聴ける。


 私はアルバム全体で聴くなら"Frances the Mute"を好むが(変態ノイズ満載なので人には勧めないが)、曲単体で選ぶなら"intertiatic esp"にする。この曲はすごくいい。ハイスピードでテンションの高い曲だが、メランコリックでもある。そして3拍子リズム。

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