音楽リアクション動画で取り扱われていたバンドの傾向その他
というわけで、ここしばらく、YouTubeの音楽リアクション動画を観まくっていたわけだが、せっかくだからリアクション動画そのものについても言及しておこうと思う。
この手のリアクション動画は、日本では流行していないようである。少なくとも検索ではほとんど引っかからなかった。
引っかかったのは、音楽メディアの公式動画らしいのだけ。あんまり面白いことも言っていなかったので、スキップしながらざっと観た。
リアクション動画で取り扱っているバンドは、どこもわりと似通っていた。ドラマーはドラムカバー動画によく反応するし、ヴォーカルはヴォーカルが主役となるポップスが多いなど、チャンネルによる個性はいくらかあるが、ほとんどのチャンネルで取り上げられていたのは、BABYMETAL、LOVEBITES、BAND-MAID、TOOL、DREAM THEATER、NIGHTWISH。
あと、Gacharic Spinの"Mind Set"、花冷え。の「我甘党」も多かった。日本のバンドを多く取り上げているチャンネルだと、彼女らの他の曲も取り上げていることがあったが、とりあえずこの2曲はだいたいのところで取り上げていた。
他は、日本のバンドをよく取り上げているチャンネルだと、Nemophila。
にゃんごすたーが「アンパンマンのマーチ」を演奏している動画もよく見かけた。にゃんごすたーの動画はいろいろあるが、なぜかみんな「アンパンマンのマーチ」の動画をよく取り上げている。
にゃんごすたーは、日本だと、客のまばらな寂しいどこかの野外ステージでX-JAPANの「紅」を演奏している動画で有名になったのだが、海外の人はX-JAPANを知っているとは限らないから、取り上げるのに適当ではないのかもしれない。
最近活動している韓国のポップスやロックも、チャンネルによっては多数取り扱っていた。ポップスは興味ないので割愛するとして、よく見かけたのはDream Catcher。韓国のガールズバンド。
扱われているものの多くは、現在活動しているバンドの比較的新しい曲が多い。最近活動が活発でないバンドの曲については、チャンネルによって偏りがあった。
また、アメリカのバンドが多く、ヨーロッパのは少ない傾向があった。METALLICAやRed Hot Chili Peppersなどは比較的多くのチャンネルが扱っているのに対し、Angra(これはブラジルのバンドだが)、Children Of Bodom、Sonata Arctica、Rhapsody Of Fire、Pain Of Salvationなど、日本では有名どころがほとんど扱われていない。OPETHはかろうじて"Ghost Of Perdition"を扱っているところがあるくらい。
これは、最近活動が少ないからというのもあるだろうし、いい動画素材が少ないからというのもあるかもしれない。
今回私が新たに購入した楽曲の多くが日本のバンドだったのは、別に日本をひいきしているからではない。単に、今のHR/HM界では日本のバンドの元気がいい、というだけのことである。
そもそも、私がこんなに集中して日本のバンドの楽曲を買ったのは初めてである。日本のバンドは私の趣味と合わないことが多い。
日本のバンドと私の趣味が合わないのは、日本のメタルはアメリカの影響が大きいからじゃないかと思う。
アメリカとヨーロッパのメタルには大きな違いがある。
アメリカのメタルは、ものすごくざっくりと言えばビッグ4の系譜といえる。すなわち、METALLICA、MEGADETH、SLAYER、ANTHRAX。ざっくりと言うと、リズムの面白さを重視したメタルである。
もちろんNirvanaとかPearl Jamとかのグランジ系の影響も強いとか、他にもいろいろあるが、それを言うとややこしくなる。
一方、ヨーロッパのメタルはクラシックの影響を大きく受けており、メロディ重視なことが多い。乱暴に言えばHELLOWEENの系譜。
日本では両方のメタルがごちゃごちゃに聴かれている。たぶん、IRON MAIDENがイギリスでMETALLICAがアメリカなんて、最初は知らずに聴くと思う。イギリスもアメリカも同じだろ、というノリである。
しかし、ある程度聴いていると、「あれ、なんか合わないな」と思う楽曲に、偏りがあることがわかってくる。
その、合わないのがMETALLICA系なのかHELLOWEEN系なのかで、その人のメタルの嗜好がアメリカ寄りなのかヨーロッパ寄りなのかがわかるわけである。
そして、私はかなりのヨーロッパ寄りだった。アメリカのビッグ4の曲は何がいいんだか本当に分からなかった。今でも大半の曲は好きではない。
The Mars VoltaとかToolとかを聴くようになって、ようやくアメリカンテイストに慣れてきたが、それでもやはりアメリカ色の強すぎるメタルの良さはわからないのである。
で、面白いことに、日本のメタル系でバンド活動をする人の多くは、アメリカ寄りなことが多い。実際、バンドメンバーが好きなバンドとして挙げているのもアメリカのバンドが多い。
一方、ゲーム音楽のコンポーザーはヨーロッパ寄りなことが多く、ゲーム曲のメタルはヨーロッパ寄りのことが多いのである。不思議な偏りだが。
しかし、アニメやゲームの音楽の影響もあるのか、ようやく日本でもヨーロッパ寄りのメタルをやる人が増えてきたようである。それで、私が買いたくなるようなバンドも増えてきた、ということ。
ただ、LOVEBITESはちょっと面白くて、アメリカのビッグ4とHELLOWEEN系のハイブリッドなのである。このバンドが売れるのは当然だと思う。この融合は何気ないが、今までなかったテイストである。そして、長く望まれていたテイストでもあった。
ちょっと面白かったのは、LOVEBITESに対する反応が日本と海外では異なること。
日本人がLOVEBITESの楽曲に反応している動画は1本しか見つからず、他はgoogle検索してLOVEBITESに言及している文章をいくつか読んだのだが、日本人の多くは、彼女らが脚を出していることに言及している。好意的にしろ否定的にしろ。
否定的に「どうせ脚を出して売れたんだろ」と言う人がいるのはわかるが、好意的な意見でも、なんだか知らないがやたらと脚について言及する人が多いのは興味深い。
一方、欧米のリアクション動画多数と、それに付いているコメントをざっと読んだ限りでは、誰一人として脚に言及している人はいなかった。そういう発言をするとマズいからかもしれない。もしくは脚フェチが少ないのか。
ただ、LOVEBITESが白いドレスを着ていることには、たいがいの人が大きな違和感を覚えるようである。女性らしい服装でメタルをやるのに違和感があるらしい。これも意外な反応。
私は服装については何も感じなかった。海外ではどうか知らないが、少なくとも日本のガールズバンドは女性らしい格好をしていることもよくあり、別に珍しいと思わない。
ただ、統一感があっていいとは思った。ガールズバンドは個々が自由に個性的な格好をし過ぎてバンドとしての統一感がないことがあるので、それよりはある程度統一したほうがいいと思う。
[2023.08.07 追記]
せっかくなので、今回視聴したけど購入しなかった主要なバンドの寸評もざっと書いておく。
●BABYMETAL
以前から知っていた。アイドルソングとメタルサウンドを融合させた曲が特徴のユニット。バックバンドの「神バンド」はサポートミュージシャンであり常駐メンバーではないから、BABYMETALをバンドとは呼べないだろう。
あくまでベビメタはアイドルグループであり、メタルバンドではない。私の位置付けとしては、声優が架空のロックバンドを演じているプロジェクトと同類だと思っている。これは別に否定的な意味はない。どういう形態であろうと、曲が良ければ何も問題ない。
ライブの完成度は凄まじく高く、楽器演奏もライブだと質が段違いなので、もし買うならライブ映像一択である。スタジオ盤はいらない。
●NIGHTWISH
以前から知っていたが、2010年以降の活動は知らなかった。もともとはTarja(Vo)のオペラ調のヴォーカルがウリのシンフォニックメタルだったが、なんかあってTarjaは脱退。それで男性ヴォーカルになったはずだが、いつの間にか女性ヴォーカルが復活していた。
私はこのバンドの曲はいまいち惹かれない。昔も今も、である。熱狂的なファンがたくさんいるから、たぶんすごい曲なのだろうが、いくら聴いても何がいいのかわからない。これが相性というやつである。
●Gacharic Spin
日本のガールズバンド。かつて何曲か聞いたことがあったが、よくあるポップロックみたいな曲調だったので注目していなかった。
今回初めてライブ映像を見たが、このバンドのライブパフォーマンスはぶっちぎれている。BABYMETALみたいに舞台装置や演出に金をかけるタイプではなく、バンドメンバー全員がひたすら動き回り、常にステージ上でなにがしかやっているタイプ。普通のバンドならセットリストの最後の曲でやるような大騒ぎを、最初から最後までずっとやっている。これほどライブに命をかけているバンドは他に知らない。
曲自体には惹かれないので今回買わなかったが、いずれライブ映像は購入して全体を観たい。
●花冷え。
日本のガールズバンド。GITADORAに「我甘党」が収録されていたから存在は知っていた。他の曲は今回初めて聴いた。
スクリーモとクリーン、アニメ声を使い分けるミクスチャ系の曲で、1曲が短いのが特徴。2分台か3分台の曲ばかりで、下手すると1分台のものも。音ゲーに収録するには都合のいい長さ。
悪くないが、マキシマム・ザ・ホルモンの影響で、日本ではよくあるタイプの曲でもある。
●Nemophila
日本のガールズバンド。2019年に結成したばかりだが、バンドメンバーはみんな過去に他のバンドに所属していた経験があり、実力的には申し分ない。
結成直後、Youtubeで公開していたライブセッションの時は、演奏やギターの音作り、録音技術などに不安があったが、最近のライブではそうした問題は解消されている。
ヴォーカルはスクリーモとクリーンを使い分けるが、喉を壊しそうな歌い方をしている気がして心配になる。スクリーモ専門のヴォーカリストを追加で雇うか、クリーンに専念したほうがいい気が。
悪くないが、もう一押し欲しい。
●Dream Catcher
このバンドに限らずだが、韓国のメタルバンドはまだアイドルグループっぽさやポップへの未練を引きずっている印象がある。プロデュースされてます感があって面白味に欠ける。
これは以前の日本のバンドにも言えたことなので、韓国のメタルもいずれはこの辺の問題を解消してくるのだろう。そうなってからが本番。
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