リヒトラブ 1冊でも倒れないブックスタンド

 ホームセンターを物色していたら、「1冊でも倒れないブックスタンド」なるものが売っていた。

 ネットで検索すれば一発で出るので、実物を見てもらったほうがわかりやすいと思うが、文章で説明するとこうなる。


 そのブックスタンドは、背に幅1センチくらいのフラップが一列に並んでいて、本を入れると、入れた部分のフラップだけ持ち上がる、という仕組み。

 本のない部分のフラップは下がったままなので、それが本を支える。


 たとえば、2冊の本が並んで立ててあるとする。1冊抜くと、抜いた部分のフラップが下がるので、本は横倒しにならない、というわけ。



 私はこのブックスタンドを見た瞬間、買うことを決めた。


 私が今使っているブックスタンドは100円ショップで買ったもの。それに対し、このブックスタンドは1000円もする。10倍高い。

 本当にこのブックスタンドに、今使っているものの10倍の価値があるのか?


 YES!


 我々は今まで、どれだけ本が横倒しになる忌まわしい現象に煩わされてきたか。今まではその対策のために、使いもしないノートをたくさん立ててスペースを埋めたり、ダミーの本を用意して差し替えたりとかしなければならなかったのである。

 このブックスタンドがあれば、そんな馬鹿げた儀式から開放される。その価値はプライスレス!



 問題は買うか買わないかではなく、何個買うかである。

 このブックスタンドは、私が今使っている100円ショップのブックスタンドの1.5倍くらいの幅がある。

 私は現状、100均ブックスタンドを2個使っており、「1冊でも倒れないブックスタンド」を1個買うと0.5個分足りず、2個買うと1個分余計。


 この哲学的難題に私はしばし苦悩したが、そのとき、天啓が下ったのである。



 ――余ったら別のところで使えばいいんじゃね?



 嗚呼、なんという天才的ひらめき! そうだよ、こんな素晴らしいものが余るわけがないのであった。引く手数多、使い所無限! 私は臆せず、ただ2個買いすればいいのであった!



 ……というわけで、2個買いしたこのブックスタンド。

 普通の文具ブログだったら褒めちぎって終わりだろうが、ここでは実際に使ってみてどうだったかについて言及する。



 このブックスタンドが特に威力を発揮するのは、CDケースを1つだけ立てたいときなど。

 CD棚からCDを1枚持ってきて、ケースからCDを取り出してCDプレーヤーに掛ける際、常に問題になるのが、CDケースをどこに置くか、である。机の上に直に置くと引きずってケースが傷ついたりするから、わざわざ下敷き用のノートを用意して、その上に置くとか、しょうもない手間をかけることになりがち。机の上もごちゃごちゃする。

 しかしこのブックスタンドがあれば、そこに立てておくだけでいい。

 DVDやCD、あるいは文庫や新書など、資料を一時的に保管する場所として使うのが、このスタンドが最も便利で輝く瞬間だろう。



 一方、机上でノートなどを管理する場合にはひとつ問題がある。それは、下に支えがないこと。


 たとえば、このブックスタンドに『ゴルゴ13』の単行本を1冊だけ立てる。確かに1冊だけ立てても自立する。便利!

 しかし、この状態で本の下側に力がかかると、本が斜めになってしまうのである。そしてこういうことは、実際に使っているとまあまあある。本を取るとき、隣の本に指が当たって下側を押してしまい、斜めになってしまう。確かに倒れはしないので名前に偽りはないのだが、斜めになるのも困りもの。


『ゴルゴ13』くらい分厚い本ならさほど問題ないが、50枚綴り以下のノートだと、ノート自体の安定性が低いために、この現象は起きやすい。

 そして、机の上ではだいたい30枚~50枚綴りのノートを立てることが多いから、結構この斜める現象に出くわすことが多かったりする。


 もし下側にもフラップがあれば、この問題は解消される。ぜひリヒトラブには、下側にもフラップを追加した「真・1冊でも倒れないブックスタンド」を作ってほしい。



 あと、このブックスタンドが対応しているのはA6~A5までと考えた方がいい。B5だとフラップの長さが足りず、支えが頼りない。A6より小さい、たとえばA7のノートとかも一応立つが、下側に支えがないことがより問題になり、すぐ倒れる。



 B5のノート、あるいは広辞苑などの分厚くでっかい本をメインに立てたいのなら、伸縮式のブックスタンドを使ったほうがいいだろう。1500円くらいで売っている。

 ネットでは自作のやり方も紹介されており、自分好みのブックスタンドを自作したいならそれでもありだが、コストを考えると既製品を買っても大差ない。


 逆に、主に小さくてペラいものを立てるのなら、L字型の鉄製ブックスタンド2つとマグネットを用意する手がある。L字型スタンドを2個組み合わせてコの字型にし、接合部を強力なマグネットで固定する。これで伸縮式のブックスタンドを自作できる。コストは安いが、所詮はL字型スタンドをマグネットでくっつけただけなので、若干支えが頼りない点には注意が必要。重い本を支えるには向いていない。


 伸縮式の問題は、倒れないようにしたいなら、本を出し入れするたびにいちいち伸ばしたり縮めたりしないといけない点。実はわりと手間である。

 だからこそ、フラップ式のリヒトラブのやつは革命的なのである。これなら何の手間もなく本が1冊から立つわけなので。

 ……というわけで、リヒトラブには下にも支えがあるバージョンをぜひ作ってもらい、手間はかけたくないが本はきれいに立てたいという自堕落で贅沢な願いを叶えて欲しい。

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