貧乏天ぷら
私は家では揚げ物をしない。台所が汚れるし、廃油の処理が面倒なので。
しかし、家には未開封の天ぷら粉がある。冷蔵庫で保管していたが、確認すると賞味期限を2年も過ぎていた。
天ぷら粉は別に腐ったりはしないので、カビていたり虫害に遭っていたりしていない限り、2年くらい過ぎていても食えなくなることはないだろう。しかし、いい加減消費してしまった方がいいのも事実。
しょうがないので、天ぷらを作ることにした。
ただし、普通には作らない。油は必要最低限のみ使うことにする。
一時期、揚げない揚げ物の作り方が流行った時期があったような気がするが、その方法は大きく分けて2つあったと記憶している。
ひとつは、フライパンに油を1センチ程度だけ注いで揚げる方法。もうひとつは、衣を付けた食材に霧吹きで油を吹きかけ、オーブントースターで焼く方法。後者は天ぷらには向かないと思う。トンカツやコロッケを作るときに使える手だろう。
今回私がやるのは前者。ただし、フライパンに注ぐ油の使用量はもっと少ない。
まず、具材は薄めに切り、衣はちょっとだけ粘度高めに作る。普通の天ぷらの衣の粘度だと具材と衣が分離しやすい。
あと、私は衣に味付けする。何もつけずにそのまま食えるようにするため。
次に、フライパンに油を注いで熱する。油の量は、フライパンの3分の1くらいに油溜まりができる程度。油の量が少ないので、すぐに熱くなる。
熱くなったら、油溜まりに具材を投下。このとき、具材を引きずらないように注意する。引きずると衣が剥がれる。
油の量が少ないので片面だけ揚がる。
片面がいい感じに揚がりそうになったら、フライパンの空いているスペースに最初と同じくらい油を注ぎ、熱する。
片面が揚がり、油が熱せられたら、フライ返しでひっくり返し(やはり引きずらないように注意。衣が剥がれる)、フライパンを傾けて油を具材の方に移動。もう片面を揚げる。
揚がったら紙を敷いた皿に並べ、上から紙を被せて油を切る。よく吸い取るべし。
そして食う。
この方法のいいところは、廃油が出ないことと、常に新鮮な油を使うこと。揚げ物をするとすぐ油が汚れ、後に揚げるものほどまずくなっていくが、この方法だと常に新しい油を使うからいつまでもおいしく揚がる。後片付けも簡単。
欠点は、一度に揚げられる量が少ないこと。一回にフライパンの半分しか使えない。
あと、厚い具材はダメ。側面の衣がうまく揚がらない。できるだけ貧乏臭く、うっすい天ぷらを作るのだ。海老とかの円柱形の具材なら、転がすことで揚げることができるが。
こんな外道な揚げ方でも、意外とまともな天ぷらができる。必要上薄くすることもあって、素人でもサクサク天ぷらになりやすい。
ただ、天ぷらにはひとつ罠がある。見た目以上に油っぽいということ。
この方法で揚げればわかることだが、天ぷらの衣は結構な量の油を吸っている。揚げたあとに紙で油を切るが、それでも取りきれないくらい油まみれな料理である。お猪口で油をぐい呑みしているのと変わらん。
私は100gの天ぷら粉を使って衣を作り、衣がなくなるまで揚げては食ったが、これは明らかに食い過ぎだった。具材の量は大したことなく、鍋料理だったら少ないくらいだが、よく考えたら油の量が相当ヤバい。
天ぷらだけで腹一杯にしようとしたらダメなのである。天ぷらはせいぜい5つくらいまでにして、あとは飯でも食っておくべき。
数時間後、私は胃のむかつきで地獄を見た。
そして、やはり家で天ぷらを作るのはやめようと思うのであった。
揚げ物は大量生産に向いている料理で、家族の少ない家庭には適していない。コロッケとかとんかつとか天ぷらとかは、食いたきゃスーパーの惣菜や外食を利用した方がいい。家で作るとどうしても作りすぎてしまい、食い過ぎて悲惨なことになる。
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