喫茶店で聞く音楽その2 光田康典 "THE BRINK OF TIME(クロノ・トリガー)"
さて。"Be"が終わったということは1時間ほど経過したことになるものの、隣の客はまだ役員会議がどうとかうるさいので、続行。いくらなんでもでかい声で何度も電話しすぎだろ。ここはあんたの事務所じゃないんだぞ。私の仕事場でもあるんだ! ……それも変な話か。
"THE BRINK OF TIME"は、『クロノ・トリガー』の曲のアレンジアルバム。1995年発表。
このアルバムは最初、レンタル屋で借りて聴いた。当時の私はスーファミを持っておらず、『クロノ・トリガー』をプレイしたことはなかった。じゃあなんで借りたのかというと、確か5枚借りたら1000円とか割引があるから、目に付いたのを適当に借りたんじゃなかったかと思う。
余談だが、このレンタル屋はとっくの昔になくなっている。よく通っていた本屋兼ビデオレンタル屋だったが、本はどこで買っても値段が同じということもあって、TSUTAYAの隆盛と共に、小さい店はだんだんと淘汰されていった。
というわけで、元の曲を知らないので、このアルバムの曲がどれだけ原曲と異なるのかは知らなかったが、プレイしたことのある友達に聴かせたら「どの曲?」と言っていたから、かなり原曲と異なるアレンジなんだろうなと思っていた。なお、当然ながら友達の質問に私は答えられなかった。
それから何年か後に、また聴きたくなった私はこのアルバムを買った。
このアルバムは、全体にはアシッドジャズをベースにしたアレンジになっているが、実際にはもっと雑多で複雑。もともとアシッド自体がジャズ+ダンサブルなテクノという雑多な音楽だが、このアルバムの場合は元々がゲーム音楽だし、別にクラブで使うわけでもないということで、より自由なアレンジになっている。
このアレンジは原曲からかけ離れているとされて賛否両論だったらしいが、私はわりと原曲を残した、いいアレンジだと思う。ちゃんと元のフレーズはそのまま残っているし、「そこを変えたらダメだろ!」と思うようなところはなかった。原曲の良さをことごとく殺して、要らないオリジナリティばかり追加した酷いアレンジがはびこる中、このアルバムのアレンジはかなりよくできている。
たぶんこのアルバムの評判がイマイチだったのは、単にアシッドジャズを聴き慣れない人が多かっただけだろう。
私もアシッドジャズなんて聴いたことはなかったが、PCエンジンの『エメラルドドラゴン』や『イースIV The Dawn of Ys』あたりでは、このアルバムに近いアプローチのアレンジの曲がBGMとして使われたりしていた。そのために違和感がなかったのだろうと思う。
仮に『クロノ・トリガー』がPCエンジンに移植されたとして、このアルバムの曲がゲームでBGMとして使われていても違和感がなかったのがPCエンジンだったのである。いやほんと。
こうして考えると、やはりPCエンジンは、BGMに関しては数年未来を行っていたよなと改めて思う。他の部分はともかく、BGMに関してはめちゃくちゃ豪華だった。
しかし、これだけちゃんと原曲の原型が残っているのに、プレイしたことのある人が「どの曲?」と言ったのはどういうことなんだろうか。世間ではこれは大幅なアレンジというのだろうか。メインフレーズが丸々残ってるし、かなりわかりやすくないか?
まあ、「ジール宮殿」は元からかなり変わっているので、原曲がわからないのもしょうがないと思うが(とはいえ、中盤まで聴けばわかると思う)が、「魔王決戦」とか「世界変革の時」とかの人気曲は聴いたらすぐわかるくらいほぼそのまんま。……と思うのだが。
もしかすると、『クロノ・トリガー』をプレイしたことがない人が聴くのがちょうどいいアルバムなのかもしれない。プレイしたことのない人がこのアルバムを手に取る確率はかなり低いとも思うが。
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