パンケーキを食べる旅[2022.12.23追記]

 ロイヤルホストでパンケーキを食べて思ったのだが、私はいままで、あまり外でパンケーキを食べてこなかった。そのため、ロイヤルホストのパンケーキがおいしいかどうかを判定できない。

 そこで私は、パンケーキを食べる旅に出ることにした。


 私は最近、サッカーW杯の観戦のために夕飯を食べていない。夕方から寝て深夜に起きてサッカー観戦をし、朝6時くらいにそれが終わる。で、夕飯兼朝食を食べるわけだが、それをパンケーキにしようという魂胆である。

 にわかサッカーファンと同時に、にわかホットケーキ通にもなれるという、完璧なにわか人生。


 というわけで、最近行った店について、パンケーキを中心にレビューしていく。



 まずは星乃珈琲店。


 ……いきなりでなんだが、実は私は星乃珈琲店にここ2年ほど行っていない。今回も行かなかったので情報が古いかもしれないが、ついでなので書いておく。


 星乃珈琲店は、コーヒーや軽食はなかなかおいしい。私はよくここの豆を買って家で挽いて飲んでいた。ただ、分煙がきちんとできておらず、禁煙席の半分くらいはタバコの煙と臭いがやってきて無意味というのが気に入らなくて、行かなくなってしまった。いま、どうなっているかはわからないが。ちゃんと分煙できないなら、いっそ全席喫煙可にすればいいのにと思う。それなら最初から覚悟して入るか、あるいは入るのをやめられる。禁煙席があると思って入ったら無意味でした、という罠は一番困る。


 星乃のパンケーキはスフレパンケーキ。私の閻魔帳によると、ブレーンのシングルが580円。ダブルが930円。古い情報なので値上がりしている可能性あり。季節ごとにいろいろトッピングを変えたスフレパンケーキもある。モーニングの時間には提供していないので、食べたいなら昼に行く必要がある。また、提供までに20分かかる。コーヒーを先にもらうと来る頃には冷めるので、おかわりをもらうか、パンケーキと一緒に提供してもらうか。

 中はふんわりだが外側はしっかりしており、わりと食べごたえのあるタイプ。ふわふわだと思って舐めてかかると怪我をする。軽食と一緒に頼むと結構ハードである。



 マクドナルド。

 ホットケーキは320円。コーヒーは100円から。


 マクドナルドのホットケーキは当然アメリカの伝統的なタイプで、薄いやつ3枚重ねである。メープルシロップとホイップバターが付く。

 このホットケーキは、おそらく店で焼いていない。冷凍を解凍しているかなんかしているのだろう。そう考えないとあんなに早く提供できない。出来合いのホットケーキらしく、ちょっともっちりしている。その分、見た目より食べごたえがある。

 ロイヤルホストと比べると圧倒的に粗雑だが、じゃあダメかというとそうでもない。そもそもアメリカンなパンケーキは雑だからいいのである。

 そして、安物だの粗雑だのと馬鹿にしつつも、食ったら食ったで意外とうまかったりする。こんなものをうまいと言っていいのか? と理性が否定しようとするが、実際には結構満足してしまうのであった。


 でも、私はマクドナルドのモーニングならエッグマックマフィン一択である。



 珈琲館。

 ホットケーキは480円、2枚重ねは630円。モーニングでは780円でコーヒーとコーヒーゼリーが付く。

 珈琲館のホットケーキは、一般的に「ホットケーキ」と言えば想像されるもの。バターとメープルシロップと生クリームが付く。


 見た目はありきたりのアレなので、480円も出して食べる価値があるんかね? と思いがち。現に私も、何度か珈琲館には行ったが、ホットケーキは頼んだことがなかった。何か食べたい時はカレーとかを頼んでいた。しかし、今回ついにホットケーキを食べてみてびっくりした。うまい。


 このホットケーキがすごいのは、何もつけずに食べてもうまいこと。メープルシロップをかけるのがもったいないほどの完成度である。生クリームだけにしておいた方が生地の香りや味が活きる気がする。私は結局、メープルシロップが半分以上残ってしまい、コーヒーゼリーにかけて使うことにした。


 今回食べ歩いた中で、珈琲館のホットケーキが一番うまかった。見た目はありきたりで普通なのに、とんでもない完成度である。


 これを食べた後だと、ロイヤルホストのパンケーキが酷評された理由もわかる気がする。珈琲館がこれを480円で出しているんだから、ロイヤルホストだってこのレベルのものを提供できるんじゃないの? と思えてしまう。伝統にこだわってアメリカンなパンケーキに固執する必然性はあるのだろうか?


 ただ、食べごたえ、という点においてはロイヤルホストの方が上。いくら薄いとはいえ、3枚重ねは伊達ではなく、あれは結構満腹になる。一方、珈琲館のは1枚では物足りない。2枚欲しい(そもそもめちゃウマなので、どうせ頼むなら是非2枚食べたい)。ロイヤルホストにおいて500円未満で満足できるメニューが貴重なのは事実で、なくなったら困る人は多いはず。となると変えるべきではない。そこがこの問題の難しいところ。



 むさしの森珈琲。すかいらーく系列の喫茶店。


 朝の開店直後に行くと、すでに混んでいて驚いた。客層も多様で、ビジネスマン、主婦、家族連れ、老夫婦と様々。しばらくすると満席になり、10組以上の待ちが出た。ガストのモーニングがいつ行ってもガラガラだと思っていたら、みんなここに来ていたらしい。すかいらーく系列恐るべし。

 ガストと同じく、フリーWifiとコンセントあり。ガストはそのわりにWifi利用者がいなかったが、むさしの森ではWifi利用者はかなり多い。ノートパソコンを広げている人も多く、老婦人がスマホでフリーWifiを利用していたりも。ガストのモーニングがいつ行ってもガ(以下略)。


 客がコーヒー飲み放題のガストではなくむさしの森を選ぶのは、圧倒的に居心地がいいからだろう。むさしの森は喫茶店とファミレスのいいとこ取りをした店内となっており、雰囲気はいいし、席が広くてコンセントもフリーWifiも完備。「さっさと飲み食いしてさっさと出ていけ」といった雰囲気もなく、かなりゆっくりできる。喫茶店は意外とそういう雰囲気を出しているところが多く、あんまり長居できないが、むさしの森は圧倒的なくつろぎ感を誇る。行ったことがない人は、すかいらーく系列の分際で強気な値段設定に割高感を覚えるだろうが、一度行けば、実はあれでお得な価格なのだと納得するはずである。ガストがガラガラなわけである。みんな、どこがいい店か知っているんだね。同じ系列の、しかも系列の顔であるチェーンから客を奪ってていいのかね、とは思うが。


 ただ、待ってまで喫茶店を利用するべきかは考えどころ。むさしの森は圧倒的居心地の良さのために客の滞在時間が長い。待っていたらいつ入れるかわからない。それだったらガストで妥協してもいいんじゃないかと思う。


 むさしの森のモーニングは、飲み物を頼むとトーストセットが付く。というわけで450円(税抜)から利用できる。


 ここのコーヒーはかなり量が多く、コメダのたっぷりと同じくらいある。すかいらーく系列のドリンクバーで使われている豆とは別の銘柄のようで、より苦味とコクがある。おかわりは200円~250円。

 おかわりをしないなら、ガストのモーニングとむさしの森珈琲のモーニングの利用料はほぼ同等。となると、より雰囲気のいいむさしの森に行ってしまうのはわかる気がする。


 ふわっとろパンケーキは、スフレタイプのふわっふわ。やわらかすぎてフォークでは食べられないため、スプーンで食べる。580円。モーニングだとコーヒーを頼むと380円で頼めるが、トーストサービスはなくなる。提供までに20分かかる。

 泡を食べているような食感で、味はフレンチトーストに近い。「食べた」という実感が希薄なので、なんとなく物足りなさを感じるし、味も特別おいしいとは思わない。まずいわけではなく、これはこれでありだが、あえて頼みたくなるような特別感はない。むさしの森はメニューが豊富なので、その中で、あえてこのパンケーキを指名したくなるほどではない、ということ。

 これなら星乃珈琲の方が断然うまいので、スフレパンケーキが食べたいなら、私なら星乃珈琲に行く。


 むさしの森で頼むなら、パンケーキよりフレンチトーストの方がおすすめ。パンケーキと同じ値段で、モーニングだと1切れ+フルーツとホイップ付き。グランドメニューだと2切れになる。追加は1切れ280円。

 パンケーキの陰に隠れて地味な存在だが、数量限定は伊達ではなく、かなり丁寧に作られている。何もつけなくてもおいしいので、いきなりメープルシロップをぶっかけるのではなく、まずはそのままで食べてみて欲しい。メープルシロップでごまかさなくてもおいしいのは、完成度が高いということ。食べ比べたら「フレンチトーストの方が良くない?」と思う人は多いと思う。


 むさしの森のモーニングにはもうひとつ、「森のチーズパンケーキ」というのがある。これはモーニングのみのメニューで、サラダプレートとセットで1080円。飲み物とセットで頼むと880円になる。単品での販売はない。提供までに15分かかる。

 薄いパンケーキの2枚重ねで、ふわっとろパンケーキと比べると、ありきたりな見た目だし、なんか貧相に見えるし、高い。モーニングで1000円越えるのはロイヤルホスト級である。しかし実は、看板メニューであるふわっとろパンケーキよりも頼む価値があると私は思う。

 このパンケーキにはリコッタチーズとクリームチーズが練り込んであり、見た目よりも濃厚でガッツリしている。素の状態では甘くなく、酸味の効いた甘くないチーズケーキのようで、これはこれでいいが、メープルシロップをかけるとしっとりする。メープルシロップをどの程度かけるかで、しっとり感を調整できる。この、自分好みのしっとり感を調整して見つけ出すのがなかなか楽しい。


 実は、ふわっとろパンケーキと森のチーズパンケーキは、生地は同じ。ふわっとろパンケーキも、リコッタチーズとクリームチーズが練り込んである。しかし、メレンゲのせいなのか、あまりチーズ感がない。一方、森のチーズパンケーキはがっつりとチーズの風味がある。チーズ好きなら断然こちら。


 もしグランドメニューにこのチーズパンケーキがあれば、わたしはこちらを頼む。モーニング限定だし、地味だし高いからそうそう手が出ないと思うが、チーズ好きなら試す価値あり。


[2022.12.23 追記]

 ここのパンケーキは、冷やしたやつの方がおいしいことが判明。ただし、冷やしたパンケーキを頼むのは簡単ではない。普通のふわとろパンケーキは冷たいのを選ぶことはできない。確認したがダメだった。


 頼む方法その1は、10:30~17:00までやっているフォレススペシャルを頼むこと。これはプレートとパンケーキとドリンクがセットになって1580円というものだが、このパンケーキは温と冷を選べる。温のはいつでも普通に頼めるから、ここは絶対冷にすべし。そして冷の方がうまい。


 頼む方法その2は、季節のパンケーキを頼むこと。これは冷やしパンケーキなのである。



 ガスト。


 一度むさしの森を体験してしまうと、ガストに行ってる場合じゃないように感じてしまうのは確かだが、同じ値段でコーヒー飲み放題なのはやはり強い。たまに変な客がいることなどに目を瞑れば、ガストのコストパフォーマンスの高さはやはり魅力的である。時間潰しや作業する場が欲しいだけならガストで充分。イヤホンかヘッドホンを持ち込んで音楽でも聴きながら作業すれば、変な客はまあまあ気にならなくなる。


 ガストのパンケーキは、グランドメニューではフルーツや生クリームの乗った600円(税抜)のものしかない。プレーンが売っているのはモーニングのみ。

 モーニングのパンケーキ&ゆで卵セットは、ドリンクバーとスープバーが付いて409円~559円。私の近所では480円。追加単品では199円。


 味は普通のパンケーキだが、生地がカステラというか、かためのスポンジケーキというか、独特のもので、あまり見かけないタイプ。

 ガストは平凡なメニューばかりだが、その中では物珍しく、そういう意味でお得感がある。私はモーニングではだいたいパンケーキを選んでいる。 


 ただ、グランドメニューで頼むかというと微妙。ドリンクバーもスープバーも付かないくせに600円と高めになってしまうので、そうなると他のスイーツを頼みたくなる。パフェとか。

 おそらく、グランドメニューにプレーンのパンケーキがないのは単価が安すぎるからだろう。だから、フルーツとかを乗っけて高くしている。逆に言えば、プレーンが頼めるモーニングタイムはお得だということ。ガストのパンケーキが食べたいなら朝に行くべきである。



 喫茶店ピノキオ。フジオフードの系列で、最近店舗数を増やしている。


 モーニングにはパンケーキがない。一番売れる時間帯にパンケーキを売らないということは、要するに店としてあんまりパンケーキには力を入れていない、ということだと思う(星乃がスフレパンケーキをモーニングに売らないのは、忙しい時間帯にあの面倒くさいパンケーキを焼く暇はないからだろう)。

 プレーンのパンケーキは660円で2枚重ね。コーヒーは450円、ホットケーキとセットで頼むと280円になる。他にはクリームがたっぷり乗ったやつとか、色々バリエーションがある。


 ピノキオはノスタルジックをウリにしており、ここのパンケーキはまさしく「家で焼くパンケーキ」そのまま。焼き目も、いかにも家で作った雑なやつ。この味は自宅で簡単に再現できる。それがウリなのだから、これはこれでいい。


 私が思うに、ピノキオのパンケーキは罠メニューである。ラーメン屋にとりあえずある餃子みたいなもの。喫茶店と言えばホットケーキと、機械的に頼んでしまう人向けのメニュー。自分で料理をしない人が懐かしくて頼むならありだが、思い出補正のない人がわざわざ頼むほどのものではない。


 ピノキオのメニューは、見た目はレトロな昭和感丸出しだが、味は意外と工夫されている。カレーは本格的だし、ハンバーグやナポリタンも、レトロ感を出すために甘めの味付けにしているが、ベースとしては結構ちゃんとしたものを提供してくる。昭和の喫茶店にありがちな、高くて粗雑で量が少ないというぼったくり感はない。

 パンケーキは、660円で2枚なので量的には良心的だが、味は普通で、特別工夫していない。それでいい、という人向けのメニューなので、パンケーキにノスタルジーを感じない人は、素直に別のものを頼んだ方がいい。

 私のおすすめはモンブラントースト。トーストにモンブランクリームを乗せただけなので、こんなもんわざわざ頼む必要あるの? と思えるが、そのモンブランクリームが意外とうまい。

 味見がしたいなら、モーニングのトーストに、このモンブランクリームを添えたものがある。ピノキオでモーニングを頼むならおすすめ。



 というわけで、連日モーニングでコーヒーとパンケーキを頼むという夢のような日々を過ごしてみたが、優雅な毎日には代償も付き物で、わりと無駄に食費を使ってしまった。

 ただ、今まで見向きもしなかったパンケーキの奥深さを知ることができたし、人々が私の目を盗んでこっそりむさしの森珈琲に群がっていたことも知れた。この散財は無駄ではなかったと信じたい。

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