感動ハンバーグコース
パンケーキ巡りの記事を書く際にガストのモーニングに行ってパンケーキ&ゆで卵セットを頼み、ガラガラのガストで優雅なひととき過ごしながらメニューを眺めていると、「感動ハンバーグ」なる期間限定メニューのフェアを見つけた。
ガストは 今年の8月か9月頃だったか、ハンバーグをリニューアルして、美味しくなったと宣伝していたから一応食べてみたが、そこまで変わった印象はなかった。
一応注釈すると、このときのリニューアルは、日替わりランチに付いてくるハンバーグやチーズインハンバーグは対象外だった。要するに、グランドメニューのハンバーグステーキのハンバーグがリニューアルしたわけである。 値段は599円~ 648円 (税抜)。
このことから、どうやらこのリニューアルはパティそのものではなく、厚さを変えただけなんじゃないかと私は予想した。パティそのものが変わったのなら、日替わりのぺちゃんこハンバーグだってリニューアルと銘打つだろう。まさかハンバーグステーキと日替わりのハンバーグのパティをわざわざ変えているわけではあるまい。
リニューアルしてもイマイチ感は変わらず、私はガストではハンバーグは避けている。ファミレスはどこでもハンバーグに力を入れていて、ガストと同価格で、よりおいしいハンバーグを提供する店はいくらでもある。
そんなガストに「ハンバーグで感動したこと、ありますか」とか言われてもなあ、という気がしないでもない。
どうせ大したことないんだろ? と思いながらメニューを眺めていたが、価格を見て戦慄した。単品1199円(税抜)。ロイヤルホストの黒x黒ハンバーグ級である。サラダ、スープ、ごはん(パン)、デザート付きのフルコースで1699円。フルコースにドリンクバーを付けると税込2000円越え。
ガストに行く奴が一食2000円以上も払うわけないだろ! 普段のガストでの支払いの2倍以上、下手すると3倍である。参考までに、日替わりランチが635円(税抜)。
しかし、ここまで強気な値段だと、かえって興味が湧いてきた。果たして一ツ星レストランが監修したという「感動ハンバーグコース」は、その名に値するものなのか?
その日はもうお腹いっぱいで食べられないので、日を改めて、私はガストに行くことにした。パンケーキ贅沢三昧の締めに、夜も朝も食わず、これ一食に全てを賭ける。
というわけで次の日、11時に近所のガストに行くと、なぜかそこそこ混んでいた。仕事の合間に昼飯を食いに来た人達や、泣きわめく赤ちゃん連れのママ友会。配膳ロボットは気が早くもクリスマス仕様になっており、サンタの帽子を被っていた。
2000円のフルコースを食うには似つかわしくない雰囲気である。なんでいつ行っても空いているのに、今日に限ってこんなに混んでるんだ?
それでも意を決して、感動ハンバーグコースとドリンクバーを注文する。
ガストは平日の昼にはスープバーが付くが、コースにはコーンスープが付いているので、スープ被りである。でもとりあえずもらっておいた。
ガストのスープバーのスープは、以前はしょっぱいだけのひどい代物で、付いていても要らない代物だったが、最近はだいぶマシになった。
余談だが、スープバーならココスがいい。ココスは日替わりで2種類のスープを用意しているが、牛骨スープがある時は当たり。なかなか牛骨スープを出している店は少ない。2種類をブレンドすることで、より深い味わいが出せる組み合わせのこともある。中華スープにちょっとだけ牛骨を足したりとか。
コースと言いつつ全部一気に来たりして、とか、配膳ロボが持ってくるのかな、などと、いろいろ期待していたが、ちゃんと店員が、まずはサラダとスープだけ持ってきてくれた。
もちろん、店員のサービスはいつものガスト。「お待たせしました。前菜のシュリンプサラダと、コーンポタージュでございます」ではなく、「お待たせしましたー。サラダとー、スープでーす」だった。わかるかな、この違い。
レストランの高級感は、ああいうところで演出されている面もある。ミシュランガイドの星も、味だけでなく、店の雰囲気やサービスも考慮して付けられている。
サラダはエビとフルーツが入ってナッツのかかったオシャレなやつだが、キャベツはいつもの機械で千切りしたアレ。
まあ、ちょっと豪華なだけのガストのサラダだろ? と思いつつ食べてみたが……意外なほどレストランのサラダだった。
サラダは結構難しい料理である。家で作るとあんまりおいしくない。つまり、外食で食べる価値のあるメニューのひとつと言える。意外に思うかもしれないが。
ただし、本当においしいサラダを提供する店は多くない。たいがいはスーパーで袋詰されているようなカットサラダに適当なドレッシングをかけただけで、それなら家で作れるわいというレベルのもの。
ロイヤルホストは、セットで付いてくるミニサラダは手抜きだが、単品メニューのサラダはわり本気を出している。
ファミレスじゃないが、むさしの森珈琲は、かなりサラダに力を入れている。ミニサラダの時点ですでに結構うまい。
そしてレストランになると、サラダはさらにワンランクうまくなる。ドレッシングにこだわるのは当然で、野菜の鮮度や冷え具合、種類とその割合が絶妙に。生野菜を切ったりちぎったりして味付けしただけのくせに、なんであんなに変わるんだろう。
一方で、とりあえず付けてみました感満載のサラダを出してくるレストランもある。それで他のメニューが格別うまいなら文句は言わないが、サラダがダメなレストランは全部ダメなことが多い。
ともかく、サラダの味でその店の本気度がわかると私は思う。
そして、この感動コースのサラダは確かにレストラン級である。ロイヤルホストよりひとつ上のランク。これはもし単品で頼めるなら頼む価値のあるサラダ。これだけでコースの+500円の価値がある。
実際はファミレス向けにコストカットしていると思うが(キャベツはいつものガストのだし)、それをうまくごまかしているのだろう。私は料理研究家でもグルメでもなくただの客なので、単純にごまかされておく。
コーンスープも、ガストのコーンスープじゃない。ちゃんとレストラン味。
……もしかしてこのコース、めちゃくちゃお得なんじゃないか?
次にやって来たメインの感動ハンバーグは、もはやガストのハンバーグじゃない。明らかに使っている肉からして違う。
コストカットのために中にポテトチーズの詰め物をしているが(使う肉を減らせる)、これがまたいい。低価格で満足感を出すための工夫だろう。こういうところはファミレスならでは。客がいくらでも払う店ならこんなことをする必要がない。全部肉でいい。ファミレスにはファミレスの難しさがある。
これよりうまいハンバーグを食べたことはあるが、いい肉を使えばうまくするのは簡単。1300円で2000円クラスのハンバーグの味を出しているところに、このハンバーグの妙がある。同クラスの黒x黒ハンバーグと比べると、感動ハンバーグの圧勝である。
もちろん黒x黒がダメなわけではない。そもそも常設メニューと期間限定メニューは単純には比較できない。もしガストがこれを常設するならとんでもないが、たぶんそれは無理。
最後のデザートのショートケーキグラスは、ちゃんとガストの味だった。ちょっと安心。ここまでレストランばりだったら安すぎである。
もともとガストのデザートは悪くないから、これはこれで充分。ただ、アイスクリームが乗ってないのがちょっと残念かも。トッピングソフトを追加すると満足感がアップするかもしれない。
このコースの面白いところは、ワンランク上のレストランの味を、ガストで食うところにある。赤ちゃんが泣きわめき、おばちゃん達が世間話し、作業服を着たままの人達がとんかつ定食を貪り、サンタ姿の配膳ロボが行き交い、店員のサービスも言葉遣いも普通な環境で、コーヒーをセルフで淹れ、タブレットでネットサーフィンしながら、ちょっと高級なフルコースを食すのである。ものすごいミスマッチ。
周りの雰囲気が安っぽいことが気にならないなら、このフルコースはなかなかお得である。ガストで2000円払う勇気があるならおすすめ。
なお、私はぐだぐだとコーヒーだのココアだの飲みながら何時間か粘ったが、感動ハンバーグを頼んでいたのは私以外には1人だけだった。それもコースではなく単品。
言っておくが、どうせ頼むなら単品はもったいない。500円追加してコースにし、ガストでフルコースをキメる違和感を堪能して欲しい。
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