LCD-GC221HXB(ゲーミングモニター)

 パソコンのスペックが現代的になったので、モニターも高リフレッシュレートに対応したものを買ってみることにした。

 ゲーミングモニターというとかつては高額だったが、今では2万円台から買える。もちろん、上を目指すときりがないが。


 今まで使っていたのはLGのE2250Vで、これは何の不満もなかった。60FPSでゲームをする分には充分。ただ、このモニターを通して音を出すと、かなり音ヤセしてスカスカになるという欠点はあったが。そのために私はHDMIから音声信号を取り出すデバイスを噛ませてヘッドホンアンプに繋ぎ、そこからスピーカーやヘッドホンに繋いでいた。その辺のことは雑記ノートの「オーディオテクニカ AT-HA2」の項で触れている。



 モニター選びと初期設定なんてそんなに難しいものではないと思っていたが、ゲーミングモニターにはゲームをプレイするのに便利な機能がいろいろ付いており、それ故に、その機能が問題を起こすこともある。そのために意外とてこずった。



 まず、モニター選びについて。


 モニターのサイズは、解像度1920x1080のフルハイビジョンを前提とするなら24インチが理想。24インチだと等倍で表示されるから。これより大きいと映像が引き伸ばされ、小さいと縮小される。

 ただしこれは、FPSをガチでやる人でない限りは、そこまで気にしなくていい。


 モニターのパネルにはTA、VA、IPSがある。

 TAは安価だが、他の方式に比べると黒が白っぽく表示されることと、視野角が狭いことが弱点。正面以外の角度から見ると色味や輝度が変化する。3種の中では応答性が高いので、FPSをやるには向いている。ただし、見る角度によって色味が変わってしまうことから、グラフィック関係の作業をするには向いていない。また、寝転がって観るのにも向いていない。

 VAは3方式の中では最も黒の白っぽさが少ない。他の特性はTNと同じ。

 IPSは、視野角による色味や輝度の変化が少ないが、応答性が低め。グラフィック関係の作業をする場合や、テレビモニター向け。

 ただ、液晶モニターは日々進歩していて、どの方式もそれぞれに弱点を克服する技術が付加されている。今となってはIPSだから応答性が著しく低いこともないし、TAだからちょっと斜めから見たら真っ暗になるということもない。


 HDR対応かどうか。

 HDRとはハイダイナミックレンジのこと。従来のダイナミックレンジよりもコントラスト比の高い、くっきりとした映像を出力する機能。この機能を使うには、モニター、CPU、GPU、ソフトが対応している必要がある。最近はHDR対応のゲームも増えてきており、せっかくだったら使いたいということなら、モニターが対応しているか確認した方がいい。


 可変リフレッシュレート機能。

 ゲーミングモニターには、可変リフレッシュレート機能を搭載しているものがある。これはビデオカードが出力する映像のフレームレートにモニターのリフレッシュレートを同期させることで画面のチラつきをなくすもの。

 FPSしかやらない人なら、この機能は要らない。この機能はわずかながら遅延を発生させるから、反応速度を最重要視するなら切るべきである。

 しかし、いろんなゲームをする場合には重要になる。なぜなら、全てのゲームが144kHzや240kHzに対応しているわけではないし、CPUやGPUが、常に高FPSを維持できるとも限らないからである。

 たとえば"ELDEN RING"は60FPS固定だが、こういうゲームを144kHzでやると、すんごいチラつく。これを解消するのには、いちいちパソコンの設定でリフレッシュレートを60kHzに変更しなければならない。この手間をなくすのがこの技術。設定上は最大のリフレッシュレートにしておいて、あとはマシンパワーなりに任せればいい。


 ただし、この機能を使うには、モニター、ビデオカード、ケーブルが全て対応していなければならない。

 接続方式に関しては、一部条件ではHDMI接続でも使えるが、DisplayPort接続だと確実。なお、DisplayPort接続を初めて使う人に注意だが、このケーブルには通常、ラッチが付いており、押さえながらでないと抜けない。初見だとラッチがあるように見えなくて、無理に引き抜こうとしがち。


 AMDはFreeSync、NVIDIAはG-Syncという技術を提供しており、モニターを買う際は、自分の使っているビデオカードが対応しているかを確認する必要がある。Radeonを使っているのにG-Syncにしか対応していないモニターを買うと、この技術は使えなくなる。


 NVIDIAは現在、FreeSync対応のモニター向けにG-Sync compatibleを用意している。ただし、ちゃんと動くかどうかは、やってみないとわからない。NVIDIAで動作確認をしたモニターの表を掲載しているので、博打をしたくないなら事前に確認した方がいい。そこまでわかっているならビデオカードに対応したモニターを買ったほうがいい気はするが。


 私はこうしたことを、購入時に全部知っていたわけではない。買ってみて初めてわかったことも多かった。



 そんな私が買ったのは、I-O DATAのLCD-GC221HXB。I-O DATAがリリースしているゲーミングモニターシリーズ"GigaCrysta"の中で最も小さくて安いモデルであり、今年7月に生産終了したモデルである。

 モニターサイズは21インチ。24インチが最適なのは知っていたが、パソコンのモニターは小さめの方が便利である。


 HDRには非対応。これは購入前には知らなかったが、別にどうでもいい。


 そして、FreeSync Premium対応。これは若干失敗だったかもしれない。NVIDIAのビデオカードを使っていながらRadeon対応のモニターを買うという。

 ただ、G-Sync compatibleは問題なく機能しているように見える。


 TNパネル採用だが、意外と視野角は広めで、下から覗き見しても、ちょっと色味が変わるだけでちゃんと見える。黒の発色もいい。


 音声出力に関しては、結構マシな音を出す。付属のスピーカーの音はチープだが、ヘッドホン端子から出る音は悪くない。これでHDMI信号分離器は必要なくなった。LCD-GC221HXBからヘッドホンアンプに繋ぎ、そこからスピーカーやヘッドホンへと出力している。


 モニターの設定操作には難がある。モニターの右裏にあるボタンを操作するのだが、何しろ見えない位置にあるので誤操作しやすい。どのボタンがどの機能なのかはモニターに表示されるが、この表示は実際のボタンの位置からズレているので、見た目で押すと誤操作する。

 このモニターの設定を素早く正確に操作するには、"GITADORA"のギターと同じ技術が必要になる。すなわち、一番下のボタンに小指、その上に薬指……と置いて、人差し指は上の2つのボタンを担当する。で、小指が決定、人差し指がキャンセル、中指が上、薬指が下と頭に叩き込むのである。

 いくらゲーミングモニターだからって、モニターの操作にまでゲームセンスが必要とされるのはどうかと思う。もっと簡単に操作できないのかね。まあ、もっと高級なモデルにはリモコンが付いているらしいが。貧乏人とケチは自分の腕でなんとかしろということか。



 モニターなんて普通、繋げは即使えるものだが、ゲーミングモニターはそれだと何かと問題が起きる。


 まず、パソコン側の設定で、リフレッシュレートとダイナミックレンジが正しく設定されているかを確認する。

 設定のリフレッシュレートが60kHzのままだと、240FPS出しても表示されるのは60FPSのまま。

 また、ダイナミックレンジが「限定」になっていたりすると、画面が白っぽくなる。NVIDIAのビデオカードを使っている場合は、NVIDIA コントロールパネルを開いて、ディスプレイ→解像度の変更「3.次の設定を使用します」の項目で、「NVIDIAのカラー設定を使用」を選択し、「出力のダイナミックレンジ」をフルにするとこの問題は解消される。


 次にモニター側の設定。GITADORAのごとくな操作を要求されるやつである。


 まず、輝度や色温度、コントラストを好みに設定する。この辺はどのモニターでもやること。


 次に、メインメニュー→その他で、FreeSync Premiumを、使うなら入に。ここでオンに設定しないと、NVIDIAコントロールパネルにG-Syncの設定項目が表示されない。


 メインメニュー→表示。

 CREXは切、アスペクト比は固定にしたほうが無難。

 CREXは自動で輝度を調整してくれるが、頻繁に明るくなったり暗くなったりして結構鬱陶しい。

 アスペクト比は初期設定だと拡大になっているが、このままだと画面が暴れたり、テレビ映像を映した際に一瞬映像が巻き戻って見える現象が起きたりする。

 これら設定は、画面モードごとに記憶されるので、使用する全画面モードの設定をいちいち切らないといけない。面倒である。というか、変な機能は初期設定ではオフにしておいてくれないかね。


 メインメニュー→ゲーム。

 この項目で問題になりやすいのはオーバードライブ。応答性を高める機能だが、場合によってはすんごい残像が出たりする。

 パソコンモニターとして使う分には1~3くらいに設定していてもほぼ問題ないが、テレビモニターとして使う場合は、これを切らないとブレブレで観られたもんじゃなくなる。



 各種設定を終え、ようやく使えるようになったところで、ゲーム映像について。


 60FPSと120FPS、144FPSの差だが、これははっきりと違う。60FPSでも充分なめらかだが、比べてみると違いは歴然。特に、レーシングゲームやFPSの接近戦など、風景が素早く動くときにその差は顕著になる。


 一方で"FF7R"みたいなRPGだと、そこまでのフレームレートは必要ない。60で特に問題ない。ただし、一度144FPSを体験すると、60FPSでは物足りなさを感じることがある。その場合はFreeSyncやG-Syncをオンにした上で90FPSくらいの設定にしておけば、高画質となめらかさを両立できる。


 FreeSyncやG-Syncはオンにしておいた方が、全体的には満足度が高くなる。この機能なしだと、フレームが欠けた時にチラつきを感じることがある。つまり、相当高性能なパソコンを用意し、グラフィック設定をかなり落とさないと、満足の行くなめらかさを体験できなくなる。


 ゲーム用の機能の中で、特に便利だったのはナイトクリアビジョン。夜や暗闇の映像を見えやすく補正する機能。この機能の有無は、特に対戦ゲームでは絶大な差になり得る。暗視スコープ付きのライフルで夜間戦をしているようなもので、ないのは圧倒的に不利になる。



 フレームレートが上がるとパソコンへの負荷も上がる。

"Forza Horizon 5"は144FPSでも比較的高画質で問題なく動作するが、"Cyberpunk 2077"はさすがに重く、グラフィック設定はそれなりに落とす必要がある。

 意外なのは"APEX"の負荷が大きいこと。144FPSで張り付かせるにはかなりグラフィック設定を落とさなければならない。



 フレームレートを上げるとCPUやGPUへの負担が増し、高負荷がかかるとCPUやGPUの温度は上がる。CPUやGPUは80度を超えるとよろしくないと言われている。一瞬くらいなら問題ないが、常時80度台というのは避けたい。

 テスト中に温度をモニターしていたところ、CPUには比較的余裕があるが、GPUは79度まで上がった。一応合格ラインだが、ぎりぎり。測ったように79度で止まるというのは、何らかのセーフティーが働いているかもしれない。モニターの数値からすると、特別80度に近付くと性能を落としているようには見えないが。仮にそうだとすると、排熱を改善しないとRTX 3060の真価は発揮し切れないのかもしれない。

 試しにケースのサイドパネルを開けたところ、72度まで下がったので、ケース内部の排熱に問題を抱えていることは間違いない。

 そこで、ケースファンを増設することにした。


 今使っているケースには、背面に120mmファンがひとつだけ付いている。60FPSでのゲームプレイならこれだけで充分だったが、高負荷をかけるならファンの増設は必要な様子。

 ケースには複数のファン取り付け位置が用意されており、マザーボードにはファン用の4ピンコネクタが複数ある。特別なことは必要なく、3ピンか4ピン用の120mmファンを買って取り付けるだけでいい。


 普通、ケースファンは1500円から2000円くらいするが、Amazonで4ピン120mmファンが3個で1500円という、えらい安いのが売っていたのでそれにした。3ピンのなら1200円くらいだったが、せっかくなので4ピンに。4ピンだからといって、さして性能が変わるわけでもないと思うが。


 3ピンも4ピンも、接続するコネクタは同じ。何が違うかというと、3ピンはファンの回転数を電圧で制御するが、4ピンはパルスで制御する。パルスのほうがきめ細かく回転数を制御できるらしいが、1個500円の安物ファンに多くを求める気はない。


 ケースファンを3つ増設したところ、CPU、GPUの温度は5度から10度下がった。最大でも75度までしか上昇しない。これなら問題ない。



 というわけで、問題なく使えているが、こんなに落ち着くまでに時間がかかるのは予定外だった。つくづくパソコンで新しい何かしようとすると、一筋縄ではいかないもんである。



[2022.08.14 追記]

 ケースに最初から付属していた背面の120mmファンの風量がイマイチなので、今回買ったファンと交換することにした。

 そして、新しく140mmファンを1つ買い足して、それを上部に設置。


 つまり、前面120mmファン2つ(吸気)、背面120mm1つ(排気)、上部140mm(排気)という構成に。

 この交換でさらに、高負荷時の温度が2度ほど下がった。

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