三菱鉛筆 アドバンス アップグレードモデル 0.3mm

 三菱鉛筆のシャーペン、アドバンスのアップグレードモデルは長らく0.5mmのみだったが、ようやく0.3mmが出た。


 アドバンスは、2倍速のクルトガエンジンと芯折れ防止パイプ、ペン先収納機能を搭載したシャーペン。

 特に優れているのが芯折れ防止パイプ。オレンズなども同じ仕組みだが、他社のものはパイプで紙を引っ掻くことがままある。アドバンスにはそれがない。普通に書ける。


 芯が折れないメリットが活きるのは、細い芯を使うときである。0.5mmなら、筆圧が高くない人は折らずに使うことは難しくない。アドバンスでなければならない理由は薄くなる。

 一方、0.3mmは普通のシャーペンで使うとポキポキ折れまくる。0.3mmを使うなら芯折れ防止機構のあるシャーペンが欲しい。つまり、アドバンスで使う意義は大きくなる。誰が考えたってわかる理屈である。あの、ユーザーが欲しいものを出し渋るぺんてるでさえ、芯折れ防止パイプを搭載したオレンズを出したとき、最初から0.2mm、0.3mmをラインナップしていた。商品の性能と価値を理解していれば当然の判断である。

 しかしどういうわけか、三菱はアドバンスに0.3mmをラインナップするのを渋る。ノーマル版も0.5mmが発売されて1年か2年経ってようやく0.3mmを出したし、今回のアップグレードモデルも、なかなか0.3mm版を出さなかった。何を考えているのかさっぱりわからない。アドバンスの特性を考えたら、むしろ0.5mmを後出しにしてもいいくらいである。



 アドバンスのアップグレードモデルは、単純に言えば、アドバンスにカバーをかけたもの。グリップのカバーと口金は外すことができて、外すと内部機構丸出しのスケルトンアドバンスになる。この状態でも一応使用可能。カバーはアルミ製。

 これはつまり、カバーや口金の差し替えが可能ということを意味する。たとえばアイボリーとブラックを買ってきて、アイボリー軸のカバーだけ黒にしたり、口金だけ黒にしたりできる。


 アップグレードモデルは低重心仕様になっているが、その重りは口金に入っている。重りが先端にあり、そこまで重いわけでもないので、比較的扱いやすい。

 シャーペンを低重心にするメリットはいくつかあるが、一番大きいのは筆記感がなめらかになること。アップグレードモデルはそこまで重くないが、それでもノーマルと比べると筆記感が柔らかくなって書き味が向上する。


 軸はつや消しになっており、見た目や感触はいいものの、グリップ感はいまいち。カバーのグリップ部には小さな穴がいくつも空いており、これでグリップを出している。これは確かに効果はあるが、若干頼りない。ノーマルアドバンスの方がグリップ感はある。


 軸のデザインは三菱らしくイマイチ。1000円するペンとは思えない。三菱は本当に高級モデルのデザインが下手である。

 ただ、アドバンスの0.3mmの通常版は、ラベンダーやピンクなど、ファンシーな色の軸が多い。黒やアイボリーといった落ち着いた色の軸が欲しい場合、アップグレードを選ぶ余地はあると思う。そもそもアドバンスの0.3mmに落ち着いた色の軸を常設して欲しいところだが。



 結局、アドバンスとアップグレードの機能的な差異は低重心かどうかだけ。低重心が必要なければアドバンスで何も問題ない。ただ、限定版のない時期にアドバンス を買う場合、軸の色が気に入らなくてアップグレードを選ぶ人は今後出てくるように思う。



 なお、クルトガやアドバンスに最初から入っている純正芯は、ものすごく相性が悪いと私は思う。三菱の芯はシャリシャリとした変な感触があるのだが、クルトガで使うとそのシャリシャリ感がより強調されて、かなり気持ちの悪い書き味になる。

 クルトガやアドバンスを使うなら、もったいないと思っても純正芯は即刻捨てて、パイロットかトンボ、あるいはぺんてるの芯に入れ替えるのをおすすめする。それで書き味は劇的に向上する。私のおすすめはパイロットのネオックス・グラファイト。


 三菱はいい加減、クルトガに合った芯を作った方がいいんじゃないかと思う。自社の芯が一番相性が悪いのは問題だろう。

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