電動コーヒーミルの掃除
私が使っている電動コーヒーミルは、家にあったもの。説明書も何もないが、使い方は一目瞭然なので問題なく使えてはいる。
しかし一度、中を掃除したいなと、ずっと思っていた。
コーヒーは空気に触れると酸化し、風味が落ちて渋くなる。だからこそ、淹れる直前にコーヒー豆を挽くのが一番おいしいと言われるわけである。
しかし、ミル内部に古い粉が残っていたら、その酸化した粉と混ざったものを飲むことになる。そうなると、なんのために挽いているのかわからない。豆を挽いて古い粉との混ざり物を飲むくらいなら、粉で買った方がマシかもしれない。
というわけで、ミルの掃除は非常に重要であり、私もできる限り、使い終わったら粉を落とそうとはしている。しかし、分解方法が解らないので、内部までは掃除できずにいた。
水洗いできるんじゃないかとも思ったが、それで壊れたらつまらない。
どうしたもんかねと思っていたのだが、ふと、コーヒーミルの裏側を見てみたら、型番が書いてあるのを見つけた。この型番をネットで検索したら、説明書がダウンロードできたりしないだろうか。
そう思って調べてみると、すぐにこのコーヒーミルの素性が判明した。
カリタのナイスカットミル。ものすごくメジャーな商品だったらしく、1984年から2016年まで製造されていた。電動コーヒーミルといえばコレで決まり、と言われるほど家庭用電動ミルの決定版だったらしい。
意外といいもの使っていたんだなと思う一方、一体何年前から掃除してなかったのかと考えると恐ろしい。
説明書は見つからなかったが、分解清掃の方法を画像付きで解説しているサイトが見つかった。
分解の仕方はなんということもなく、ネジを2本外すだけ。しかもそのネジは、手でも回せるようになっていた。初回は固かったのでマイナスドライバーを使ったが、2回目以降は手で回せる。
あとは中にある回転刃を引き抜くだけだが、これも固かったため、ネジ山ザウルスの力を借りた。
頻繁に掃除していれば簡単に引き抜けるパーツなので、やはりだいぶ長いこと掃除していないのだろうと思われる。実は買ってから一度も分解してないんじゃないのか?
何十年もののコーヒーかすがこびりついている地獄絵図を想像していたが、実際はほとんどこびりつきはなく、歯ブラシでささっと掻き出せば粉は落ちた。
中に溜まっていた粉は10gほどだったが、昔から溜まり続けていたものは、あまりないようだった。出てきた粉の多くは、直近に挽いたときのものだろう。
ともかくひととおり掃除は終わったので、試しに1杯淹れてみる。
今飲んでいるのはカルディのマイルド。コーヒーの日に布袋に入ってセット販売していたやつである。まあ、普通のドリップコーヒー。個性はないが、だからこそ飲みやすいとも言える。
きれいになったミルを早速汚してゴリゴリ豆を挽いて、淹れる。
一口飲んだ瞬間、私は思わず言った。
「甘っ!」
正直、私は、ミルを掃除しただけで、そこまで味が変わるとは思っていなかった。多少、味がクリアになるのかな、くらいに思っていた。
しかし、全然違った。コーヒーの甘味を感じたのである。カルディのマイルドで。
カルディのマイルドは苦味と酸味の両方がバランス良く感じられるコーヒーだが(ちょい酸味強めか)、甘いと感じたことは今まで一度もなかった。
しかし、確かに甘味があるのである。たかだかミルを掃除しただけで、それがはっきりわかるようになった。
私は別に食通じゃないし、味見に自信があるわけではない。むしろ、パスタをゆでるときに塩を入れず、クレープの生地に砂糖を入れないような奴である。どうせソースで味付けするんだから、小麦粉に味付けする必要ないだろ、という、超いい加減なことをしている。
それでも、ミルの掃除の効果ははっきりとわかった。全然別物である。こんなに変わるのに、なんで今まで掃除しなかったのだろう。いやまあ、掃除の仕方がわからなかったからだが。
はっきり言って、コーヒー豆の銘柄にこだわっている場合じゃない。どこのがうまいとかまずいとか講釈を垂れる前に、ミルを掃除すべきである。
私は決めた。今後、コーヒーミルは使い終わったら毎回、分解清掃する。たかだか掃除をするだけでコーヒーがランクアップするんだから、やらない理由がない。
そもそも電動コーヒーミルの構造は明らかに、毎回掃除するために作られている。わざわざ簡単に分解清掃できるように設計されている。
掃除が手間だと思うなら、粉を買えばいい。豆を挽くなら、そこまでこだわらなければ意味がないだろう。
しかし、カルディのマイルドがあんなに旨いとは意外だった。
実際のところ、豆から挽いてコーヒーを出しているコンビニや喫茶店は、ミルってどの程度の頻度で掃除しているのだろう。店主が現地で豆を買い付けちゃうほどイッちゃってる喫茶店なら毎日掃除してそうだが、普通はそこまでやらないのではないか。
実は店で飲むより、豆を買って、家で美しいミルで挽いて飲む方が旨かったりして。
ついでなので、コーヒーかすに関するもうひとつの話題についても軽く触れておく。
コーヒー豆の説明書きでは、1杯10gを目安に淹れるように書かれているものが多い。しかし、「1杯」が何mlなのかはメーカーによってまちまちだったり、具体的な数字が書かれていなかったりする。
私はだいたい、150ml+20~30mlを目安にしている。1杯150mlとして、フィルターや粉が水を吸うので、その分ゲタを履かせる。
しかし実は、この2倍で淹れても、まあまあ飲めるコーヒーになることを私は知っている。
せっかくまだ出るコーヒー粉を捨てるのは、なんとなくもったいない気がする。
かつては乾燥させて脱臭剤として使ったりしたこともあったが、脱臭なら専用の脱臭剤を使った法が手軽だし確実である。わざわざコーヒーかすを乾燥させたりするのは手間だし、そもそもそんなに脱臭剤は必要ではない。
そこで、出涸らしコーヒー粉で薄いコーヒーを作って、ほうじ茶みたいに水代わりに飲めるものが作れないかと考えた。
考えるよりやってみた方が早いので、早速やってみる。
10gで180mlのお湯を通し、コーヒーを淹れた後のコーヒー粉に、さらに1Lのお湯を通す。
できあがったものは、見た目は黒烏龍茶みたいな液体だった。
飲んでみると、コクや旨味はないものの、コーヒーの香りはするし、ほのかに苦味のある、わりと狙ったとおりの飲み物となっていた。本当にほうじ茶っぽいコーヒーになっていた。
こりゃいいや、今度から茶葉を買わなくていいんじゃね? と喜んだのも束の間。
冷めた後に再び飲んでみると、めちゃくちゃ苦くなっていた。ただ苦いだけでコクも旨味も何にもない。単なる苦くて黒い水である。
つまりこの飲み物が飲めるのは、淹れ立ての熱いうちだけ。だったら普通に普通の湯量でコーヒーを淹れた方がいい。
残る問題は、無駄にいっぱい作ってしまった泥水をどうするか。
まずいコーヒーは牛乳を入れるとまあまあ飲めるようになるの法則に従って、牛乳を入れてみた。
……驚いた。余計にまずくなった。
味も素っ気もないのに、変に牛乳臭いだけの気持ち悪い飲み物に大変身。牛乳を入れてもまずいコーヒーがこの世に存在するとは驚きである。……いや、こいつの正体は、言ってしまえばほとんど水なのだが。
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