応援コメント

アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』(前編)」への応援コメント

  •  この小説は二年ほど前に短編が好きなことと、設定が面白そうという二つの理由から、最初の一巻だけ購入しました。メインの登場人物が謎ときに挑むも、結局は執事に全て解かれてしまう、というところに興味を惹かれました。今回、涼格さんの紹介を読ませて頂き、また、続きに手をつけてみようかと思った次第です。

     私の記憶違いでなければ良いのですが、一巻の冒頭に作者の言葉として、「推理小説のトリックについては、そのほとんどをアガサ・クリスティー氏が先んじて書いてしまっている」というような文言があって、にやりとしたのを覚えています。

     ただ、ミステリーの謎解き自体は少し淡白で味が薄い気がしました。私は探偵小説というと、血みどろの、少なくとも三人以上の被害者、密室、密告した人間は必ず殺される、などの凄惨なものを求めてしまいます(まあ、初心者考えなのでしょう)。カーが好きなんですが、あれは少しやりすぎな気もします。

     アシモフはほとんど全てのジャンルの書籍をものしたことで有名ですが、私は彼の真価はSFであり、『われはロボット』が代表作ですが、これは読んでいくと、SFでありながらミステリーなんですよね。市長をその動きから、ロボットではないかと疑っていく作品などは不気味さを通り越して笑いました。

     読者のひとりとして、この続きも楽しみに待っております。お身体に気をつけてがんばってください。

    作者からの返信

     このシリーズを純粋にミステリーとして楽しもうとすると、確かに薄味だと思います。レストランでの雑談の中で謎を解くという設定自体に限界がありますしね。
     似たような設定の短編シリーズだと、バロネス・オルツィの『隅の老人』の方が、本格ミステリー好きには合うかもしれません。

     ただ、ある程度数を読むと、各キャラクターの個性がわかってきて、彼らの雑談だけでも楽しめるようになってきますし、アシモフの幅広い知識を活用したうんちくや文学論の集まりとして読む価値もあると思います。第一巻だけだとたぶん、ヘンリーとその他大勢くらいにしか思えないはず。

     アシモフの真価がSFにあるのは、そうだと思います。第一巻だとSFものがないですが、第二巻の「地球が沈んで明けの明星が輝く」の、月面で見た地球の満ち欠けや昇り沈みの解説や、「終局的犯罪」の「当時において天才的といえるほど高度な数学を駆使した小惑星の力学とは何か」を考察するくだり、第三巻「かえりみすれば」の日蝕の撮影に関する議論など、SFものになるとディティールが細かくなり、読み応えのあるものになります。

     第一巻のはしがきに「推理小説のトリックをアガサ・クリスティが~」といった言及は、確かにあります。実際、アガサ・クリスティはかなり多彩な手法で推理小説を書いてますよね。