交番、袖机、ボールペン、厚生病院、バス停…とある日本の街の、何でもない日。精緻な日常の描写と、軋む会話の、それでいて軽妙なテンポの奇妙な調和につい、丘の上に「城」を探してしまう作品。
可愛い童話のような不思議な不条理短編でした。この世界のどこにもないような世界のお巡りさんと探し物をする女性の会話が織りなす不可思議な物語。読者は何が起こったのかわからないまま最後まで読まされます。終わってもわからないものはわからない。わからないけれど、この物語の続きがありそうで気になる。短いのに全体を丁寧に描かれた感触が漂っていて、とても好感を持ちました。この作者の他の作品も読んでみたくなる導入の一作になりました。