第6話 朱色に赤恥
「それで、いつが空いてるの?」
「正直いつでも暇です、あっ暇だな先輩はどうです、あっどうなんだ?」
「口調、別に無理しなくていいよ?」
「いや、素はこんな感じなんだけど、これと話し相手が先輩ってのが妙に合わなくてチグハグなんですよね。」
いや、これホントに難しい。
先輩って言うのに、素の話し方つまりタメ口ってのが絶妙に相性が悪い。人によるかもしれないけど俺はなんかむず痒くて難しい。
「別に、なんだったら呼び捨てでも…あっせっかくだしこの際、
お、おうなんだなんだ!?
急に何かのスイッチが入ったかのように先輩が目をキラキラさせて詰め寄ってきた。
いつものクールな感じも綺麗で魅力的だがこうやって食い気味で声を弾ませる先輩も年相応で可愛いくて素敵だ。
それに、
いい響きだ。
うん、呼び捨てなら無自覚系主人公を装って木芽って呼んで他の男に予防線を貼ろうかと思ったがこれはこれで悪くない。
むしろ、特別なキズナ感があっていい。
「わかった、そうしよう。」
「うん!それじゃお互いに愛称つけ合おうよ!」
「分かった。」
なんとここで先輩はとんでもない提案をしてきた。
願ったり叶ったりでもちろん即決だ。
だが、クールでカッコイイ感じになるように気をつけるんだ!
ファーストコンタクト結構でやらかしているがこれでも男なのだ
惚れさせると決めたんならいつでもうるさく騒ぐような落ち着きのない犬みたいな無様な真似は絶対にしない。
口調をに変えるように言われたので、ここからは後輩
Cooooooooool!
な、感じの俺をイメージするんだ。
それはそうと、つまり俺が先輩の名付け親になれるというのか!?
嬉しい、嬉しすぎる!
これから先、有名になる(予定)彼女の名前を俺が決めることになるとは人生は本当に何が起こるかわからないものだ。
いや、でもここで変なのをつけて恥をかかせる訳にはいかないし何よりも先輩に気に入ってもらいたいから真剣に考えなくては!
滞りなく酸素を流せ、脳が正常に働くために!
12人の俺が円卓を囲い討論に花を咲かせる。
えっと、『秋津 木芽』だから…
『秋』をとりあえず英語にするとfallかautomne
うーん微妙。
次!
『津』…意味としては『港』って意味があるけどだからって『ミナト』は安直か?保留。
port,harbor,無いな
次!!
『木』…ここから連想するものは『森』『森林』『林』辺りかwood,forest,groves,ダメだ微妙。
次!!!
『芽』…bud,無しだな
あーでもないこーでもないと頭を悩ませていると、先輩から声がかかってきた。
「決まった?」
「いや、まだ」
「先に言っていい?」
どうやら向こうは決まったらしい。お手並み拝見といこう。
「よろしくお願いします」
「そんなに真剣に見つめられると、少し恥ずかしい」
と言って頬を赤らめて顔を逸らされる。
可愛すぎです。
はい!キュン死しました。
脳内会議をしていた12人の俺の全員がキュン死して灰に変わったので、新たな12人の俺が椅子に座った。
「それじゃあ言うよ。君の愛称は『ラギ』にします!」
『ラギ』
うん、カッコイイ!超カッコイイ!
きっと、どこかの阿良〇木くんも大絶賛していることだろう。
「どう?」
「うん、いいな気に入った。」
できるだけ表情を変えずにクールに答えるように努める。
頭の中では、円卓を囲む俺の人格達がスタンディングオーべションでこの様子を見て歓声を上げている。
まるで、サッカーのワールドカップで応援しているチームが点を決めた時の様な光景が広がる。
「これには理由があって『
おおう、今までここまで饒舌な彼女を見た事がない。
なんかウキウキピョンピョンしていて可愛い。
いつもの『別に』が口癖のクールビューティーな一面と、表情豊かにに声が弾んでいる一面を併せ持つこの二面生が先輩という人柄をより一層華やかに彩っている。
なんというか、チャットの素っ気ない感じとギャップが凄い。
もちろん良い意味でに決まっている。
やばいニヤニヤが、抑えられず頬がひきっってしまう。
サッと右手で口元を隠して
「『ラギ』いいですね」
それにしても、よく考えられて居るなと関心してしまう。
それと、今のを聞いて先輩に付けたい愛称が決まった。
「俺も決めました。」
「うん、教えて」
「『ナギサ』がいい。」
「いいね『ナギサ』、ちなみに理由はあるの?」
「秋津の『津』には港って意味があるのと、三重県の県庁所在地の『津市』を思い出してそこの港のある町を『なぎさ町』って言うとこから『ナギサ』。」
これは、さっき脳内会議で唯一保留にした案をもう少し掘り下げて形にしたものだ
明確な理由はこれだけど、何よりも決定打は
「でも、何よりも『ナギサ&ラギ』って語感がいいと思ったからこれがいい。」
こう思ったのだ。
このどことなく似ている感じがいいなと思った。
ただそれだけ。
それだけだ。
返ってきた答えは
「いいじゃん!」
はい!OK出ました!!!
「よっしゃ!」
あまりの喜びに声が漏れてしまった。
ちなみに、脳内会議場の円卓はまたもやスタンディングオーべションでみんな指笛を吹いたり互いにシャンパンをぶっかけあっている。そのせいで喜びが表に出てしまいガッツポーズまでしてしまった。
もう脳内は戦勝ムードで飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎである。
「コホン」
場を整えようと咳をひとつ。
しかし、
「別に今更カッコつけようとかしなくていいのに」
と、ニマニマしたような笑みで先輩が俺を見てくる。
「だってさ、ラギとのファーストコンタクトアレ(笑)だよ?もう忘れられないし今更だよ?」
グサッ
先輩からの言葉のナイフでさっきまで祝杯ムードだった脳内会議員達が一気にお通夜モードまで落ち込んだ。
何よりも、カッコつけようとしていたところを的確に刺されたのが致命傷すぎる。
恥ずかしさで顔が紅潮し耳まで真っ赤になる。
「さっきも言ったけど素でいいんだよ?楽に行こ?」
止めて!樹のライフはもうゼロよ!
恥ずかしすぎる。
羞恥で頭が沸騰しそうだ。
もぅやだぁ、おうち帰るぅ…
「これから一緒やっていくんだから最初から気を張ってるときっと疲れるよ。だから、ね?」
はい。
次回、樹死すデュエルスタンバイ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます